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はじめに
どうも水綿です。
早いもんで2025年も後半戦に突入いたしました。というわけで例年通り「上半期」に公開された劇場公開の映画たちをランキングで紹介していこうと思います。どうぞお楽しみください。
例によって「この作品無いのはおかしい!!」という意見があると思いますが、何卒ご容赦下さい………
10位 - 孤独な猫、世界を揺蕩う。
https://eiga.com/movie/102556/gallery/30/
『Flow』
ラトビア・フランス・ベルギーの合作で制作されたアニメーション映画。
第77回カンヌ国際映画祭における「ある視点」部門で上映され、各方面から絶賛の嵐が巻き起こり、第97回アカデミー賞では長編アニメーション映画賞を受賞した。
低予算のインディペンデント映画でアカデミー賞受賞まで漕ぎついたのは史上初の出来事。
ラトビア出身のギンツ・ジルバロディスが監督・脚本・製作・撮影・音楽・編集を担当。そして今作、アニメ映画であるのにも関わらずキャストが誰も参加していない。
https://eiga.com/movie/102556/gallery/17/
その理由とはシンプルで、今作で「人間」のキャラクターは一切登場せず、猫や犬、猿といった動物たちが主な登場人物だからである。
舞台は人類が滅亡した後(と思しき)の世界。主人公の「猫」は、徐々に水位が上がっていく奇妙な世界で大冒険を繰り広げる。
知っての通り、猫は大の水嫌い。加えて自分のテリトリーに入ろうとするものにとても敏感で、すぐ他者を拒絶してしまう。
しかし水没していく世界を旅していく中で、猫は様々な仲間たちと巡り合う。最初は疑わしく思っていた犬や猿、鳥などの仲間たちにも、徐々に心を開いていく。
セリフが一切なくともそれぞれのキャラクター性が分かりやすく描写されている点や、リアルに忠実な動物の動き、そして美麗なアニメーションによって描かれる映像美など、とても低予算で制作されたとは思えない完成度を誇っている。
動物LOVEすぎる筆者にとっては最高すぎる映画でした。エンドロールが流れる頃には、もう全員が愛おしくてたまらなかったです。
9位 - 最大の幸せとは、最大の不幸である。
https://eiga.com/movie/103179/gallery/44/
『岸部露伴は動かない 懺悔室』
("At a confessional")
荒木飛呂彦原作の大人気アクション漫画『ジョジョの奇妙な冒険』、そのスピンオフ作品である『岸部露伴は動かない』。
元は短編集として出版されていたが、2020年12月にNHKのもとでTVドラマ化。様々な方面から高い評価と人気を得た。
今作は、2023年公開『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』に次ぐ第二の実写映画。前作のルーヴル美術館から打って変わり、ヴェネツィアで全編撮影された。
監督は渡辺一貴、脚本はアニメ版『ジョジョ』にも参加している小林靖子。主人公の岸辺露伴を高橋一生が務めた。
https://eiga.com/movie/103179/gallery/10/
露伴は大人気漫画『ピンク・ダークの少年』を執筆している漫画家。そんな露伴は、人の記憶を本にして読むことができる「ヘブンズ・ドアー」という能力を持つ。
彼の狂気的なまでの好奇心が災いし、ドラマシリーズでは何度も奇妙な現象に巻き込まれているのだが、今回も例に違わず奇怪な事件に足を突っ込んでしまう。
だがそこで窮地に陥ろうとも、起点を活かして事態を丸め込んでしまうのが岸辺露伴最大の魅力でもある。事件を完全に解決する………とまではいかないが、最後に露伴が上手く手中に収めていく過程は観ていて爽快極まりない。
そして舞台がヴェネツィアということで、高橋一生扮する岸辺露伴と美しいヴェネツィアの背景がマッチすることで生まれる相乗効果は凄まじい。
露伴が『〜ルーヴルへ行く』にてネイティブばりのフランス語を披露していたのと同様に、今作でも流暢にイタリア語を喋る。ファンからは、原作漫画の第5部『黄金の風』を想起させられるという声も。
https://eiga.com/movie/103179/gallery/36/
加えて特筆すべきは、タイトルにもあるようにある男が懺悔室にて告白した「ある懺悔」の奇妙さである。これはドラマシリーズでも『ルーヴルへ行く』でも描写されていた所謂Jホラー的な不気味さであり、これもまた今作独特の雰囲気を際立てている。
「最大の幸福は、最大の不幸を連れてくる」………この言葉の真実を知ったとき、言葉にし難いほどのゾクゾク感に襲われることだろう。
総じて、ドラマシリーズ開始時点で醸し出されていた、数ある少年漫画原作の実写映画の中でも一線を画する雰囲気が、今作でも忠実に再現されていたと言えるだろう。
8位 - 喪失と空虚を乗り越えて。
https://eiga.com/movie/97591/gallery/14/
『サンダーボルツ*』
("Thunderbolts* ")
MCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)からの最新作。「フェーズ5」の最後の映画作品となる。
タイトルにもある「サンダーボルツ」とは、今までヒーローたちと敵対してきたヴィランやダークヒーローたちによって構成された、表沙汰にできないような任務を遂行するチームのことを指す。
とどのつまり、MCU版『スーサイド・スクワッド』ということになる。さすがにあちらほど過激ではないが………
https://eiga.com/movie/97591/gallery/7/
今作では様々なキャラクターたちが登場し、『ブラック・ウィドウ』に出演したエレーナ・ベロワ(フローレンス・ピュー)にアレクセイ/レッド・ガーディアン(デヴィッド・ハーバー)、そしてタスクマスター/アントニオ・ドレイコフ(オルガ・キュリレンコ)に、
『アントマン&ワスプ』からエイヴァ/ゴースト(ハナ・ジョン=カーメン)、ドラマシリーズ『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』からジョン・ウォーカー/USエージェント(ワイアット・ラッセル)、
そして今作のメンバーの中では最古参となるバッキー・バーンズ/ウィンター・ソルジャー(セバスチャン・スタン)など、豪華俳優陣が集結している。
他にも、『トップガン マーヴェリック』にも出演していたルイス・プルマンが、今作の鍵を握る青年「ボブ」役として出演している。
https://eiga.com/movie/97591/gallery/10/
悪の道へ踏み込んだものたちが、果たしてヒーローになれるのか。これまで犯してきた罪の意識、世間からの声………それは、ただの一般人がヒーローになるのと比べて何倍も難しいことだと言える。
だがその過程を描くのが、こうした「アンチヒーロー」映画における一番の魅力とも言い換えることができる。過去の過ちや喪失、それらから成る「空虚」を乗り越えて、ヒーローとして目覚めていく過程は胸熱と呼ぶ他ない。
登場人物のそれぞれが辛い過去を抱えているからこそ、全員が結束して立ち向かっていく姿に心打たれる作品。人によっては『アベンジャーズ/エンドゲーム』以来の傑作と呼ぶ声も。
そんなチーム「サンダーボルツ」は、当然ながら『アベンジャーズ』最新作である『〜ドゥームズデイ』にも登場することが決定している。今後の彼らの活躍に期待していこう。
7位 - 「最速」その極致へ。
https://eiga.com/movie/103590/gallery/13/
『F1/エフワン』
("F1")
モータースポーツの最高峰「フォーミュラ1(通称”F1”)」にて、世界最速のレーサーを目指すスポーツ映画。
ブラッド・ピットが主演、及び製作を務めた。ダムソン・イドリス、ケリー・コンドン、ハビエル・バルデムらも出演。
監督はジョセフ・コシンスキー。今作は『トップガン マーヴェリック』の製作陣が多数集結しており、「地上版トップガン」と銘打たれている。
実際のF1レーサーや解説者など大勢が出演しており、また2023年〜2024年に実際に行われたレースの映像も組み込んでいるなど、再現度という観点においても非常にクオリティが高い。
https://eiga.com/movie/103590/gallery/2/
『トップガン マーヴェリック』では、伝説の戦闘機パイロットであるマーヴェリック(トム・クルーズ)が、再び戦闘機に乗り込んで空を駆けた。
今作では、事故により現役を退いたレーサーであるソニー・ヘイズ(ブラッド・ピット)が、弱小チームを救うべくF1レーサーとして復帰、再びハンドルを握った。
戦闘機からレーシングカーのエンジンへ、空の代わりに地を駆け、轟音と共に音速を超えて駆け抜ける。最近のレース映画というと『グランツーリスモ』が記憶に新しいが、F1レースの臨場感という観点では今作の方が上回っているという意見も多い。
そして今作の主人公であるソニー・ヘイズは、確かな腕を持ってはいるものの「現役レーサー」と呼ぶにはやや老いすぎている。
そんなソニーの前に現れたのは、若手の新星であるジョシュア・ピアス。ソニーが再びF1レースに戻ったのもピアスをサポートするため、「最速」の名をほしいままにした彼も、ついにバトンを渡す時が来たのだ………
https://eiga.com/movie/103590/gallery/11/
だがソニーは譲らない。ただただ貪欲に「速さ」を求めるソニーという名の男、その目的とはただ一つ「ハンドルを握り走ること」。
マーヴェリックと同じように、ソニーもまた走ることを、飛ぶことをやめない。一見すると傲慢な男のように見えるが、名誉と賞賛を捨ててまでスピードを追い求める姿は言葉を失うほどにカッコいい。
『グラン・プリ』にはじまり、映画界にさながら本場のレースのような衝撃を与え続けてきたレース映画。今作はその歴史に、金字塔とも呼ぶべき新たな伝説を刻んだと言えるだろう。
6位 - 「I need you to trust me, one last time.」
https://eiga.com/movie/102868/gallery/46/
『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』
("Mission: Impossible - The Final Reckoning")
トム・クルーズ主演の大人気アクションシリーズ『ミッション:インポッシブル』最新作。クリストファー・マッカリーが監督と脚本を務める。
2023年公開『~デッド・レコニング』からの直接的な続編にあたり、またシリーズの集大成的な作品という意味合いも持つボリューミーな作品。
シリーズ1作目が公開されたのは1996年、つまり今から約30年も前。そんな長い歴史の集大成と考えると感慨深さを感じてしまう。
https://eiga.com/movie/102868/gallery/3/
これまでのシリーズの敵はどれもが大いなる野望を秘めた「人間たち」であり、あの手この手を使ってトム・クルーズ扮するイーサン・ハントを陥れようと画策してきた。
一方今作の敵は、人間ではなくAI。人知を超えた頭脳を持つ超高性能AI「エンティティ」が、核保有国の武器管理システムに侵入しはじめるところから物語が始まる。
もし全ての核保有国がエンティティの手に落ちてしまったら、何百もの核ミサイルが発射され世界は核の炎に焼き尽くされてしまう。
そこでイーサンに課されたミッションとは、エンティティを制御するための端末を72時間以内に入手し、エンティティの暴走を止めること。
だがその端末を手に入れるために、数々の壁がイーサンの前に立ちはだかる。文字通り「不可能」に等しいミッションだ。
それでもイーサンなら何とかできるだろうと思ってしまうのは、やはり30年もの間で培われたある種の安心感によるものなのだろうか。
https://eiga.com/movie/102868/gallery/16/
そしてシリーズお馴染みの要素でもある、トム自身によって行われるスタントアクションも見所。ポスターにもなっている、飛行機にしがみつくシーンはCGなしで実際に行っている。
彼の徹底的なまでのアクションへのこだわりは、常に我々観客の想像を超えてくる。最早「狂気的」なまでの執着と呼んでも過言ではないだろう。
実際に飛行機にしがみついてアクションを行った際、トムは何度も気を失いそうになったという。
果たして彼の「狂気」はどこまで続いていくのだろうか………まだまだトムはシリーズを続けていく気だそうなので、気長に待つとしよう。
《併せてこちらもどうぞ》
5位 - 選挙にして、戦争。
https://eiga.com/movie/101546/gallery/14/
『教皇選挙』
("Conclave")
ローマ教皇が逝去した後に行われる、新たな教皇を決めるための選挙「コンクラーベ」。その裏に秘められた陰謀と画策に迫るミステリー映画。ロバート・ハリス著の同名小説を原作としている。
『ハリーポッター』シリーズのヴォルデモート卿役で知られるレイフ・ファインズが、主役であるローレンスを演じ、『西部戦線異常なし』で数々の賞を受賞したエドワード・ベルガーが監督を務めた。
今作も例に漏れず、第97回アカデミー賞では作品賞含む8部門にノミネートされ、脚色賞を受賞。その他の賞でも数々の部門で受賞するなど『西部戦線異常なし』に引き続き快挙を成し遂げた。
https://eiga.com/movie/101546/gallery/6/
「ローマ教皇になるということ」、それはつまり世界で最も強い権力を持つ人間の1人になるということを意味する。
規定に則れば、教会の中で誰よりも信心深きものが教皇となる………が、その座を求めて謀略を巡らすものたちもいるのもまた事実である。
だが神を愛するものたちを蹴落とし「教皇」の座を求める、それは果たして「選挙」と呼べるのか………これは間違いなく、選挙の形をした「戦争」と言っても過言ではないだろう。
そんな人の精神心理の奥底に迫るようなストーリーに加え、今作では荘厳さに満ちたコンクラーベの雰囲気もじっくりと味わうことができる。
https://eiga.com/movie/101546/gallery/4/
主演のレイフ・ファインズをはじめ、登場人物はほとんど威厳に満ちた枢機卿たち。そんな彼らが神妙そうな表情を浮かべながら、厳粛な空気の元コンクラーベを行なっていく様は、観ているこちら側も不意に身体を強張らせてしまう。
それに応じてか、それぞれのシーンのカメラワークも極限まで洗練されている。カット、雰囲気、ストーリー、それら全てが合わさることで究極の映像体験をもたらしているのである。
2025年4月に第266代ローマ教皇であるフランシスコ教皇がご逝去され、同年5月に実際にコンクラーベが行われたことから、公開されしばらく経った今でも非常に注目が集まっている作品である。
実際に選挙に参加した枢機卿の何人かは、参考のために今作を鑑賞したとのこと。新たにローマ教皇に選出されたレオ14世も立ち振る舞い方を学ぶために鑑賞したなど、実際のコンクラーベにも非常に強い影響を与えているようだ。
4位 - 善悪が2人を分かつまで。
https://eiga.com/movie/102037/gallery/33/
『ウィキッド ふたりの魔女』
("Wicked")
1995年にグレゴリー・マグワイアによって小説として出版され、2003年からブロードウェイミュージカルとして公演された『ウィキッド』、そのハリウッド映画版。
『グランド・イリュージョン 見破られたトリック』や『イン・ザ・ハイツ』のジョン・M・チュウが監督を担当。アリアナ・グランデ、シンシア・エイヴォが、それぞれふたりの主人公であるグリンダとエルファバを演じた。
他にもミシェル・ヨーやジェフ・ゴールドブラムなど、豪華キャスト陣が集結した。
https://eiga.com/movie/102037/gallery/17/
元ネタがブロードウェイにて多大なる人気を博しているミュージカル、加えて主演の1人は世界的歌姫ことアリアナ・グランデ。そうして出来上がったのが、全世界を熱狂に包み込んだ極上のミュージカル映画である。
ミュージカル映画の素晴らしいところはやはり、登場人物の感情の動きを歌とダンスで表現できるというところ。喜びや悲しみ、他全ての感情を音楽で伝える手法は我々観客の感情に直に訴えかけてくる。
舞台である「オズの国」の可愛らしいセットも魅力的。登場人物の衣装も緻密に作られており、第97回アカデミー賞では衣装デザイン賞と美術賞を受賞した。
https://eiga.com/movie/102037/gallery/3/
原作である小説からミュージカルと大きくフランチャイズを広げていった『ウィキッド』だが、今作含むどの媒体でも、現代におけるLGBTQに通ずるような要素が含まれている。
2人の主人公であるグリンダとエルファバは、非常に対照的な人物。誰からも愛される容姿と性格を持つグリンダだが、彼女は魔力を持ち合わせていない。
一方エルファバは、大学の学部長に認められるほどの魔法の才能の持ち主。しかし他とは異なる緑色の肌を持ち、そのせいで周囲から酷い差別を受けながら生きてきた。
本来は交わることなど全くもってないはずの2人。だがそんな真反対の2人が徐々に心を通わせていく様は、先述したミュージカル映画的要素と合わさって凄まじいカタルシスを生み出している。
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特殊な容姿のせいで親からも捨てられ、周囲からずっと疎まれ続けてきたエルファバ。「こんなのはもう慣れっこだ」と毅然と振舞うが、心の奥底ではどうしようもなく孤独を感じている。
そんな彼女に、常に自分至上主義を貫いてきたグリンダが歩み寄り、エルファバを抱きしめる………これからはもうひとりぼっちではないと。2人の奇妙にして何よりも美しい友情が、周囲の反応をも変えていく様に心を打たれる………
だが、グリンダは後に「善い魔女」として人々から愛される存在に、そしてエルファバは「悪い魔女」として、全世界から憎しみを向けられる存在になってしまう。
たった一つの友情を捨てて愛される存在になるか、大勢から憎まれてたった一つの友情を守る存在となるか。2人はどうしようもなく、美しくも残酷な運命に向き合わなければならないのである。
道を違えてしまった2人の運命の行き着く先は、果たして………続編『ウィキッド 永遠の約束』は、来年3月に公開予定。
3位 - 完全懲悪。
https://eiga.com/movie/101062/gallery/26/
『ビーキーパー』
("The Beekeeper")
平穏に暮らしていた養蜂家が、恩人の死をきっかけに復讐に乗り出すアクション映画。数々のアクション映画でその無双っぷりを発揮したジェイソン・ステイサムが主演。
監督は『フューリー』『スーサイド・スクワッド』のデヴィッド・エアー。ステイサムと再びタッグを組んだアクション作品『A Working Man(原題)』が来年公開予定。
「主演:ジェイソン・ステイサム」。この言葉が何を意味するか、アクション映画をこよなく愛する者たち(筆者含む)からすればお分かりいただけるだろう。
彼が主役の映画ともなれば、劇中にて起こる出来事とはただ一つ「ステイサム無双」である。ステイサム扮する主人公が、襲い来る敵たちを軒並み返り討ちにしてしまうのだ。
大人数が相手だろうが全員なぎ倒す。凄腕の殺し屋だろうが互角に渡り合う。最早相手が人間でなくとも勝利を収める。
彼が敵の前で膝をついた作品はほんの一握りしかなく、彼がひとたび主演として登場すれば「間違いなく」敵は倒される。
そうしてついた仇名は「世界最強のハゲ」。彼が負けることは万に一つもないことから、観客に唯一無二の安心感を与えている。
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話を戻して今作『ビーキーパー』、ステイサムが演じる「アダム・クレイ」というキャラクターは、のどかな片田舎で養蜂家を営んでいる一見普通の男だ。
だがその正体とは、秘密組織「ビーキーパー」に所属していた元工作員。その腕前は歴代最強とされ、どんなミッションも難なく乗り越えてきた。
そんなアダムを匿ってくれた恩人が、インターネット詐欺に引っ掛かり失意から自殺してしまったことで、長年封印していたビーキーパーとしてのスキルを発揮し黒幕を追い詰めていく。
ここまで聞けばただの復讐モノのアクション映画のあらすじにしか聞こえないが、今作が他のアクション映画と一線を画する理由とはズバリ「アダム(ステイサム)が強すぎる」という点にある。
最初はただ詐欺グループを懲らしめるだけのストーリーだったが、そのグループの社長が大統領の息子だったことから事態は国家そのものを揺るがす事態へと発展していく。
https://eiga.com/movie/101062/gallery/2/
それにつれてアダムが相対する敵も、会社の警備員から警察、軍の部隊とスケールアップしていき、最終的には大統領直属の部隊や過去にビーキーパーを殺したことのある傭兵にまで発展。
そのどれもが一筋縄ではいかないはずの相手であるはずが、アダムはそれら全てを持ち前の戦闘スキルでなぎ倒していく………それも無傷で。
どれだけ大人数で襲い掛かっても、どれだけセキュリティを強化しても、どれだけ強い相手が目の前に現れても、アダムはそれをいとも容易く潜り抜け勝利を収める………
もしかするとその実力は、ジェイソン・ステイサム史上最強どころかアクション映画史上最強レベルの主人公と言っても過言ではないかもしれない。
最強の殺し屋ことジョン・ウィックでも、ギリギリ勝てるかどうか正直危ういレベルである。
そんな『ビーキーパー』、監督がデヴィッド・エアーからティモ・ジャヤントに交代し続編が制作されるとのこと。彼の「超」無双を再びスクリーンにてお目にかかれる日が、今から楽しみで仕方ない。
2位 - 求めたのは名誉か、美しさか、友情か。
https://eiga.com/movie/101370/gallery/34/
『国宝』
吉田修一による同名小説を、『悪人』『怒り』に続き李相日が映画化。吉沢亮、横浜流星、高畑充希、寺島しのぶ、渡辺謙らが出演した。
極道の息子が歌舞伎の名門一家に養子として拾われ、そのまま歌舞伎の世界に飛び込んでいくという物語。
既に過去の作品で多大なる評価を得ている李相日だが、今作も例にもれず高評価を得ている。カンヌ国際映画祭でも上映され、国内外から絶賛を受けた。
我々日本人がよく知るように、歌舞伎とは洗練された芸術。ただの演技に限らず、所作や声色、他様々な要素が緻密に組み上げられて出来上がるものだ。
それを映画で再現するとなると、無論演者たちはそれ相応の稽古をつけなければならない。そうでなければ、本場の歌舞伎との臨場感の乖離が起きてしまうからだ。
https://eiga.com/movie/101370/gallery/5/
そうして出来上がったのは、まさしく「至極」と呼ぶべき歌舞伎の映画だった。特に吉沢亮と横浜流星による「女形」の演技は、良い意味で2人が実際に演じているとは到底思えないほどの完成度を誇る。
2人は撮影のために約1年半もの間、歌舞伎の舞踏や所作を含めた稽古を行ったという。
養子として迎え入れられた喜久雄(吉沢亮)と、歌舞伎界に名を轟かせる大役者・半二郎(渡辺謙)の息子である俊介(横浜流星)。
喜久雄と俊介は2人で数々の演目をこなしていくが、やがて喜久雄は半二郎の後を継ぐほどの大役者へと上り詰めていく。まさに才能が、血筋を凌駕していったのだ。
だがしかし。芸の道の頂を目指すということは、それはつまり人の道から外れていくこと。悪魔と取引してまでも、喜久雄は歌舞伎の頂点へと歩を進めていく。
その過程で、喜久雄は様々なものを手放していく。表現者としての優れた要素であったはずの端正な顔や演技力は、いつしか彼を悪魔たらしめるものへと変えていってしまったのだ。
私自身、良い表現者とは常人とは異なる「何か」を持っていなければならないと思っている。「人情」を捨て去ることもまた例外ではない。
https://eiga.com/movie/101370/gallery/
だが皮肉なことに、そうして様々なものを捨てていって遂に辿り着いた「頂」にあるものとは、この世の何物にも代え難いほどに美しいのである。
それは名声でも栄光でもなく、長い長い道のりでずっと求めていた「何か」。「国宝」という人ならざる者のみが目にするものと言えるだろう。
美しさ。歌舞伎という名の芸術、そのありとあらゆる過程を経て目にした美しさは、最早言葉なんてものでは言い表せない。
果たしてここまで思わず息を呑んだ映画があっただろうか。そう自問してしまうほどに、荘厳にして圧巻な映画体験であった。
1位 - 誰が為の拳。
https://eiga.com/movie/102484/gallery/34/
『トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦』
("九龍城寨之圍城 / Twilight of the Warriors: Walled In")
香港で最も治安の悪い地区と呼ばれる九龍城砦で行われた、裏社会の派閥争いを描いたアクション映画。原作は、香港で出版された今作と同名の小説/漫画である『九龍城寨』。
2024年に香港で公開され、興行収入が1億香港ドルを突破、さらに歴代の香港映画における観客動員数1位を記録、加えて香港電影金像奨(香港アカデミー賞)では作品賞含む9部門を受賞。
ノミネートは逃してしまったが、第97回アカデミー賞の国際長編映画賞における香港代表作品としても選出された。
https://eiga.com/movie/102484/gallery/7/
さて今作を1位に選出した理由だが、単純明快「素晴らしいアクション映画」であることに尽きる。『ビーキーパー』も凄まじい完成度だったが、今作はそれを大いに凌駕する。
舞台となる九龍城砦は骨組みが剝き出しのビルのような建物であり、広さはあまりないものの高低差が大きい。故に今作で繰り広げられるアクションも、走り回る・飛び回る・駆け回るで大忙し。
さすがは日本に匹敵するほどのアクション映画大国・香港である。
また地に着いた硬派なアクションだけでなく、ある種の少年漫画のような現実離れしたアクションも見所。リアリティこそ欠けるが、作品全体の疾走感という観点では他の追随を許さない。
パンチで相手を数10m吹っ飛ばしたり、「気功」を用いて身体を硬質化させたりと、まるで異能力者同士のようなバトルが繰り広げられる。
https://eiga.com/movie/102484/gallery/8/
さらに今作における少年漫画的要素とは、アクションだけに限らず物語そのものにも見受けられる。
主人公のチャンは、幼い頃から身寄りがなく香港へ密入国してきた男。だが余所者を寄せ付けない裏社会は、彼に居場所を与えることはなかった。
しかし九龍城砦の人々は違った。最初はチャンの存在を疑っていたが、ボスであるロンギュンの意向で徐々に受け入れられ始める。チャンは、生まれて初めて自分が自分でいられる居場所を得ることができたのである。
ところが九龍城砦は、1987年に香港政府によって取り壊されることが決定されている。加えてロンギュンは不治の病を患っており、さらにそこを付け狙って近隣の反社会組織が九龍城砦に攻め込もうとしていた。
https://eiga.com/movie/102484/gallery/4/
そうしないうちに、九龍城砦は跡形もなく無くなってしまう。だが九龍城砦という場所がなくなっても、チャンを含めた九龍城砦の人々は戦うことを決意した………全てはかけがえのない「居場所」のために。
例え消え去る運命にあるとしても、自らの命と同等、或いはそれ以上に大事なもののために拳を振るう男たちの姿………その儚くも力強い美しさに私たちは心を打たれ続けてきた。
疾走感と躍動感の溢れるアクション、そして胸熱極まりない男たちのドラマ。果たしてここまで少年漫画的な映画があっただろうか?これを観て心から何かが湧き上がらない人はきっとおるまい。
おわりに
さていかがだったでしょうか。毎回毎回、上半期のランキングを出すのが下半期始まってしばらく経った後のような気もしますけれども、まぁご愛嬌ということで………
既に激戦区となりつつある2025年、下半期も既に中々ヤバいことになってますね。特に今月なんて『スーパーマン』に『鬼滅の刃』に『ファンタスティック4』ですよ。もうとんでもない。
来月8月には『ジュラシック・ワールド』に『バレリーナ』、それ映画化するの!?部門ダントツ1位の『8番出口』など話題作のバーゲンセール状態。
劇場版『チェンソーマン』にウェス・アンダーソン最新作、実写版『秒速5センチメートル』に『プレデター』最新作に『アバター3』………いやいや情報過多になりますって。笑
毎年言ってるような気もしますが、今年は映画界隈的に色々と凄まじいことになりそう。鼻息荒くして座して待つとしましょう………
と、いうわけで今回はこの辺で。次の記事もなるはやで執筆に取り掛かります………

それではまた、次の映画にて。