
SSU(ソニーズ・スパイダーマン・ユニバース)とは
2002年、サム・ライミ監督、トビー・マグワイア主演で誕生した『スパイダーマン』。一昨年に公開された『Xメン』と同様大ヒットを記録し、アメコミ映画の人気を確立させるに至った。
この時、日米双方において配給を務めたのがソニー(ソニー・ピクチャーズ・リリーシング)。その後長年に渡り、ソニーが『スパイダーマン』の映画化の権利を有していた。
詳細はここでは割愛するが、どうもMARVELとの争いがあった模様。故に互いの関係はギクシャクしていた。
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しかし2016年、MCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)の作品である『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』にて、トム・ホランド演じるスパイダーマンが電撃参戦。
その後も『スパイダーマン:ホームカミング』といった単独作や『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』にも登場するなど、ソニー絡み以外の作品でも大活躍することとなった。
しかしながらその一方で、ソニーは別プロジェクトとしてスパイダーマン関連のシリーズに着手すると発表。そうして始動したのがSSU(ソニーズ・スパイダーマン・ユニバース)だ。
主役となるのは、やはりシリーズのタイトルにもあるスパイダーマン………ではなく、原作において彼と対決することとなるヴィランたち。
ヴィランといっても、完全悪としてでなく正義の側面も併せ持つ、所謂「ダークヒーロー」として描いている。
今までに6作品が公開され、世界的な人気を博すこととなる………が、一部の作品は評価が芳しくない故にネットミーム化しているものも。
「MARVELはMCUだけじゃないんだぜ!!」と言わんばかりの勢いを見せているSSU、その軌跡を見ていくとしよう。
史上”最悪”、誕生。『ヴェノム』
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『ヴェノム』
("Venom")
あらすじ
アメリカ・サンフランシスコで活躍する記者、エディ・ブロックは、超大企業・ライフ財団が秘密裏に人体実験を行っているという噂を耳にする。
その噂によれば、ライフ財団は街のホームレスを誘拐しては、組織内で実験を行い数多くの死者を出しているという。
必ず真相を突き止めると意気込むエディは、財団のCEOであるドレイクに直接取材。人体実験について問い詰める。
しかしこの行いがドレイクの怒りを買ってしまい、結果エディは記者をクビに。結婚を視野に入れていた恋人にも振られ、全てを失ってしまう。
そこから半年後。財団にて研究を執り行っているドーラ博士がエディに接触し、施設内に侵入し真実を公にして欲しいと懇願される。
真夜中、単独で施設に忍び込むエディ。そこでは噂通り秘密裏に人体実験が行われており、多くのホームレスが隔離されていた。
そんな中、実験室の一角にて知り合いのホームレスに出会うエディ。だが声をかけるや否やホームレスはエディに襲い掛かり、やがて謎の液状の生命体がエディの中に入り込む。
その後エディは施設を脱走することに成功するが、それ以降「謎の声」が頭の中で響くようになり、やがて過度な食欲に駆られるなど「何か」に取り憑かれたかのようになってしまう。
エディの身体に入り込んだ謎の生命体、通称「シンビオート」は、エディの身体を乗っ取り「ヴェノム」として欲望の赴くままに全てを喰らい尽くさんとしていた。
不本意ではあるものの、身に余るほどの強大すぎる力を手にしてしまったエディ。彼の行く末は、史上最悪の残虐なる「悪」か、或いは………
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作品概要
シリーズ1作目は、スパイダーマンの因縁の宿敵にしてライバルである「ヴェノム」の単独作。原作でも非常に人気のあるキャラクターだ。
監督は『ゾンビランド』のルーベン・フライシャー、主演は『マッドマックス 怒りのデス・ロード』のトム・ハーディ。
トム・ハーディはエディ・ブロック役を演じると共に、ヴェノムの声優及びモーションキャプチャーも行っている。
実はサム・ライミ監督、トビー・マグワイア主演の『スパイダーマン3』にもヴィランとして登場したエディ・ブロック/ヴェノム。
当然出演している俳優も異なるが、加えてヴェノム自体のキャラクター性も原作とは大きく異なっている(喋らないためただの凶暴な怪物と成り果てている、スパイダーマンと同様細身なフォルム、など)。
しかし今作のヴェノムは原作の姿を色濃く残しており、胸のスパイダーマンのマークはないものの筋骨隆々なヴェノムの姿を拝むことができる。
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シンビオートに取り憑かれたら最後、宿主は死ぬまで僕と化す。身体の主導権を乗っ取られ、シンビオートの欲望の赴くままに、暴虐の限りを尽くされる………
予告編からも分かる通り、シンビオートを身体に宿した者の末路は悲惨だ。記者として活躍し、結婚を控えた恋人もいた、まさに順風満帆な生活を送っていたエディ・ブロックもその被害者の1人だ。
シンビオート「ヴェノム」に身体を乗っ取られ、自分の意思とは関係なしに人々を傷つけ始め、その強大な力に戸惑いながらも徐々に魅了されていく、そんなエディを描いた非常にダークなヒーロー映画………
かと思いきや、その中身は意外にも王道のヒーロー映画だ。MARVEL史上最も残虐なヒーロー映画………と見せかけ、エディとヴェノム、2人の凹凸コンビがスタイリッシュに戦うアクション映画に仕上がっていた。
ヴェノムも、残虐非道なシンビオート………という訳でもなく、ちゃんと宿主のエディの命令に従う忠犬っぷりを見せている。結果として「カッコイイ」よりも「カワイイ」が勝ってしまっている状態だ。
ゴツいフォルムのヴェノムから繰り出されるアクションは迫力満点。2人が完全に同化した際に行われる小気味いい掛け合いもポイントだ。
世界的にも大ヒットを記録し、最高のスタートダッシュを見事に決めたSSU。必然的に『ヴェノム』も、MCUにおける『アイアンマン』のようにユニバース全体の顔となるタイトルとなったのであった。
崩れて繋がる、”最悪”の友情『ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ』
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『ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ』
("Venom: Let There Be Carnage")
あらすじ
ドレイクとの戦いに勝利したエディ・ブロックは、地球外生命体・シンビオートのヴェノムと共に共同生活を営んでいた。
しかしながら、ヴェノムは人を食べたいという衝動を抑えきれずにいた。そんなヴェノムを制御すべく、エディは四苦八苦しながらも共に生活していた。
そんなある日、連続殺人鬼として収監されているクレタス・キャサディへの取材のチャンスを手に入れる。
クレタスとの対談の後、エディはヴェノムの協力のもと彼が新たに隠していた死体の居所を掴む。結果としてクレタスは死刑が確定し、エディは手柄を上げることに成功する。
しかしその後の取材で、クレタスはエディを挑発。ヴェノムは激怒しクレタスに掴みかかるが、その際にクレタスはヴェノムのシンビオートに噛み付いてしまう。
折角の取材が台無しになったと叱りつけるエディに、ヴェノムも激昂。結果2人は喧嘩別れしてしまい、離れ離れになってしまう。
一方クレタス、電気椅子による死刑の直前に、ヴェノムに噛みついたことで体内に取り込まれていたシンビオートが覚醒。
鮮血の如き真紅の身体とヴェノムを遥かに凌駕する凶暴性を持つ、史上最悪のシンビオート「カーネイジ」が誕生してしまうのだった。
https://eiga.com/movie/92984/gallery/5/
作品概要
シリーズ2作目。モーションキャプチャー・アクターとして有名なアンディ・サーキスが監督を務め、エディ・ブロック/ヴェノム役のトム・ハーディは続投。
今作のヴィランを務めるクレタス・キャサディ/カーネイジにはウディ・ハレルソンが、その恋人であるフランシス・バリソン/シュリークにはナオミ・ハリスが抜擢された。
前作におけるヴェノム、ヴィランのライオットに続き、新たなるシンビオート「カーネイジ」が登場。
赤と黒の攻撃的なフォルムが特徴的なカーネイジは、様々な武器を顕現することができるなど非常に強力なヴィラン。原作でも、スパイダーマンとヴェノムが共闘しても尚、倒しきれなかったほどの強さを持つ。
加えて、宿主であるクレタスが殺人鬼だったことが災いしてか、ヴェノムを大きく凌駕するほどの残虐性をも併せ持っており、善人・悪人関係なく名前通り「虐殺」する。
ヴェノムはエディの身体を包み込むようにして変身するのに対し、カーネイジはクレタスの身体から蠢き出すようにして変身する。この異形感、人によっては堪らないのではなかろうか。
https://eiga.com/movie/92984/gallery/3/
と、2作目にしてシリーズ最大級のヴィランが登場してしまったSSU、ひいては『ヴェノム』シリーズ。そんな強大すぎる敵を目前に、エディとヴェノムはいつになくシリアスなモードに………
なるかと思いきや、その真逆で凹凸コンビとしてイチャイチャしまくってる始末。その姿は「コンビ」を超えて「カップル」と呼称しても差し支えないほど。
前作にてワンちゃんが如し圧倒的「可愛さ」が見事露呈してしまったヴェノム、今作ではその「可愛さ」を余すことなく発揮している。
エディのために料理するヴェノム(尚腕前は無視するものとする)、パーティーでハッチャケちゃうヴェノム、喧嘩が原因でエディに拗ねた態度を見せるヴェノム………お前、本当に「残虐な」地球外生命体なのか。
前作では感じ取れていたダークな作風が、今作では良くも悪くも薄れ気味に。従って、今作に対する評価も前作と比較すると賛否分かれるものとなっている。
だがエディとヴェノムのイチャイチャがとにかく大好きな人、2人の友情をとにかく見たい人にとっては至高の一本と言っても過言ではないだろう。2人の怒涛の死闘は、まだまだ続く………
解放されし、渇望。『モービウス』
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『モービウス』
("Morbius")
あらすじ
過去にノーベル賞を受賞した経歴を持つ、天才医師のマイケル・モービウス。彼は天才的な頭脳を持つ代わりに、血液に関する不治の病を患っていた。
彼の発明した医療は数々の人々を救ってきたが、自分自身は未だに救えずにいないマイケル。苦悩の末、彼は意を決しある「荒療治」を決行することを決意する。
コスタリカに存在する「死の山」、そこに生息する吸血コウモリを捕獲し、その血清を自身に投与しようとするものだ。
結果として実験は成功し、モービウスは長年の夢である病の完治を成し遂げる。だがそれと同時に、身体にある「異変」を感じ始めるようになる。
それは、身体が「血」を求めていることだった。衰弱した身体は筋骨隆々となり、加えて超音波の感知能力や高速移動などコウモリに類似したような能力を得ることになる。
しかし「血」を、とりわけ「人の血」を摂取しなければ、マイケルは理性を失い人を襲う吸血鬼と化してしまう。
なんとか血の「渇望」を抑えようとするも、その衝動は日に日に膨れ上がってきて………彼に課された、壮絶なる運命の末路や如何に。
https://eiga.com/movie/92502/gallery/11/
作品概要
シリーズ3作目。原作にてスパイダーマンと敵対するヴィランにしてダークヒーローであるモービウスが主役の作品となる。
SFホラー映画『ライフ』を手がけたダニエル・エスピノーサが監督を、アカデミー賞受賞歴を持つジャレッド・レトが主演を務めた。
SSUで初となる、ヴェノム以外のキャラクターを主役に添えた作品。しかし名だたるスパイダーマンのヴィランたちの中でも、モービウスは比較的マイナーな方。
グリーン・ゴブリンやエレクトロなどといった著名なヴィランは既に実写映画にて登場しているものの、モービウスは名前すら挙がっていない。
当初はウェズリー・スナイプス主演『ブレイド』シリーズにて登場する予定だったらしいが、結果として実現することはなかった。
https://eiga.com/movie/92502/gallery/3/
故に今作の制作が決まった際、当然ながら不安の声も挙がった。結果としてその予感はほぼほぼ的中し、評価は決してすこぶる良いとは言えないものとなっている。
とはいえど、決して悪い所ばかりというわけでもない。コウモリの特殊能力を駆使した戦闘は疾走感があり、非常にスタイリッシュだ。
派手な爆発を起こすなどといったダイナミックなアクションではないものの、スピーディなアクションに見惚れること間違い無いだろう。
身体に纏わり付くモヤモヤが、高速移動した際に尾を引く感じが個人的に堪らない。NYの夜を疾走する姿は実に厨二心をくすぐられるものだ。