『デューン 砂の惑星』シリーズとは
香料を制するものが、この惑星を制する。この惑星を制するものが、全宇宙を制する。
1965年、フランク・バーハートの手によって執筆された、伝説のSF小説『デューン 砂の惑星』。
全てが砂漠で覆われた惑星アラキス………通称「DUNE」を巡る、壮大な宇宙戦争を描いた今作。
その圧倒的な人気から、1971年以降多くの映画監督が映画化の権利を取得………しかしながら、そのあまりにも重厚すぎる世界観から、ほとんどの企画が頓挫。
『エル・トポ』などで知られるアレハンドロ・ホドロフスキーが過去に映画化を試みたが、あえなく計画は霧散。
製作過程は中々の規模だったようで、2013年には幻の製作過程を記録したドキュメンタリー映画『ホドロフスキーのDUNE』が公開されている。
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そして1984年、『エレファントマン』『イレイザーヘッド』などで知られるデヴィッド・リンチが『デューン/砂の惑星』を公開、世界初の映画化を果たす。
高額の制作費を投入され製作された今作。だが公開後は興行的にも批評的にも失敗し、散々な結果に終わってしまった。
その後2000年にはTVドラマ版が公開され、シーズン2まで制作されるなどしたが、再映画化の目処は立たぬまま。
時は過ぎ、2021年………『ブレードランナー2049』『メッセージ』のドゥニ・ヴィルヌーヴが『DUNE/デューン 砂の惑星』を公開した。
全世界でも興行的大ヒットを記録し、2024年には続編『デューン 砂の惑星 PART2』が公開。今後のシリーズ展開も期待されている。
………といった風に、実に約50年間にも及ぶ紆余曲折を経て映画化されてきたこのシリーズ。ここには記載していないが、他にも数多くの映画化の企画が立案され、頓挫している。
さて大分遅くなったが、本記事ではドゥニ・ヴィルヌーヴ監督による『DUNE/デューン 砂の惑星』から連なるシリーズを解説していく。
商業的及び批評的にも、多大なる成功を収めている本シリーズ。過酷にして荘厳にして美麗な『DUNE』の世界へ、飛び込もう。
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極限にして荘厳なる、究極の映像体験。『DUNE/デューン 砂の惑星』
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『DUNE/デューン 砂の惑星』
(”Dune”)
あらすじ
時は紀元102世紀末。惑星カラダンの領主、レト・アトレイデス侯爵は皇帝の命令から惑星アラキスの統治を任される。
アラキスは全土が果てしない砂漠で覆われた、非常に過酷な環境の惑星。だがその一方で、宇宙一の価値を持つ「メランジ」という香料(スパイス)を採取できる唯一の惑星だった。
レト侯爵は妻のジェシカ、息子のポール、そして多くの臣下たちを連れアラキスへ向かう。統治者に赴任し、香料の採取を引き継ぐこととなった。
だがそれは、皇帝が仕組んだ卑劣なる罠だった。皇帝はアトレイデス家の宿敵であるハルコンネン家と結託し、夜にアトレイデス家へ奇襲を仕掛けた。
臣下たちの抵抗虚しく、アトレイデス家は一夜にして業火に包まれた。レト侯爵は殺害され、ハルコンネン家がアラキスの統治権を握ることになった。
だがアトレイデス家には生き残りがいた………ポールとジェシカである。
命からがら難を逃れたものの、かけがえのない家族と臣下たちを失ってしまったポール。絶望の最中、ポールは夢で「ある少女」と出会う。
その姿から、少女がアラキスに潜む原住民・フレメンの一族だということを確信するポール。
フレメンの力を借り、ハルコンネン家へ一矢報いようとするポール。神秘と危険が立ち込める、惑星アラキス………通称”DUNE”での、壮大な冒険が始まる。
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作品解説
SF映画史にその名を刻む新たなる伝説、その始まりたる、第1作目。
先述したように、ドゥニ・ヴィルヌーヴが監督を担当。『ブレードランナー2049』に並ぶ、彼を代表するSF作品の一つとなった。
そして今作、キャストが非常に豪華。『君の名前で僕を呼んで』のティモシー・シャラメや、MCU版『スパイダーマン』のゼンデイヤ、
『ミッション:インポッシブル』のレベッカ・ファガーソンに『アクアマン』のジェイソン・モモアと、著名な俳優陣ばかり。
他にもハビエル・バルデム、ステラン・スカルスガルド、オスカー・アイザック、デイヴ・バウティスタなどが出演。その多くが続編にも続投している。
2021年10月に全世界で公開されるや否や、爆発的なヒットを記録した今作。やがてその人気は、今作へオスカー像を授けるに至った。
第94回アカデミー賞では、作曲賞・録音賞・編集賞・撮影賞・美術賞・視覚効果賞の6部門を受賞。興行的にも批評的にも大成功することとなった。
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今作はアトレイデス家が滅ぼされてから、ポールたちがフレメンに出会うところまで描かれる。
しかしながら、原作小説においては序盤中の序盤の展開。言うなれば「ここから面白くなっていくぞ!!」って所で映画が終わってしまうのである。
世界観の描写も、ストーリーの盛り上げ方も、何もかもが完璧なのに、なぜこんな美味しいところで………と落胆した人も少なくはないだろう。
しかしながら、今作におけるこの露骨なまである「溜め」があったからこそ、『PART2』にて成功を奏することができた、という見解もある。
そもそもこんなにも緻密な世界観を、たった一本の映画で描き切ることは不可能に近い。監督自身もそう明言している。
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「であれば、今作を観ずに『PART2』から行っちゃってもいいのでは?」と思うかもしれないが、少し待って欲しい。
実は今作、専門用語が非常に多い。一つの単語に、今作独特のネーミングが施された用語がいくつも登場する。故に、無知なまま続編の鑑賞に臨めば混乱してしまう可能性があるのだ。
無論、ストーリーの繋がり的に予習をしておいた方が良いという意味もある。いずれにせよ、今作を鑑賞してからの方が望ましいのは確かだ。
こうした強固な世界観を持つ映画は、その世界観にどっぷりと浸かりながら鑑賞に臨むことができるという唯一無二の利点がある。
この際、視界を砂漠一色に染め上げ、『DUNE』の世界そのものにダイブしてみるのは如何だろうか。
救世主か、破壊者か。『デューン 砂の惑星 PART2』
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『デューン 砂の惑星 PART2』
(”Dune: Part Two”)
あらすじ
一面が砂漠によって覆われた惑星、アラキス。アトレイデス家は、惑星にて採取できる希少な物質・香料の管理を任され、アラキスの統治を行なっていた。
しかしながら、皇帝とハルコンネン家が結託し、アトレイデス家を襲撃。都は陥落し、公爵であるレトも死亡。アトレイデス家は一夜にして砂漠の塵と化した。
命からがら逃げ出したアトレイデス家の生き残りであるポールとジェシカは、アラキスの原住民であるフレメンと出会い、共に行動することに。
遠い先の未来を見通すことができるなど、その正体は不明ではあるが普通の人とは異なる特殊な能力を持つポール。
そんなポールを見て、フレメンの族長スティルガーは、一族に代々伝わる「予言」を確信しつつあった………
いつの日か、アラキスに救世主が降り立ち、我らがフレメンを救い、やがてアラキスから砂漠は消え、鮮やかな緑が宿るだろう………そんな予言を。
フレメンの習わし、言語、そしてアラキスでの生き残り方を日々学び続けるポールは、徐々に予言にある「救世主」そのものに近づきつつあった。
瞬く間に、並のフレメンをも凌駕する戦士へと成長したポール。正式なフレメンの一族として認められたポールは「ムアディブ」というフレメンとしての名を授かる。
銀河に名を轟かすポール・”ムアディブ”・アトレイデス。当然、その名はハルコンネン家、そして皇帝の耳にまで届いていた。
ハルコンネン家当主・ウラディミールは、ポールを捕える為に甥でありハルコンネン家最強の戦士であるフェイド=ラウサをアラキスへ派遣。
アラキス、ひいては帝国の存亡をかけた、史上最大の宇宙戦争………壮絶な戦いの、行く末とは。
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作品解説
満を持して遂に登場、壮大なる戦争の幕開け、『デューン 砂の惑星 PART2』。
監督のドゥニ・ヴィルヌーヴ、キャストのティモシー・シャラメ、ゼンデイヤ、レベッカ・ファガーソン、ハビエル・バルデムらは続投。
前作の時点で非常に豪勢だったキャスト陣だったが、今作から加わった新キャスト陣も実に豪華。
『エルヴィス』のオースティン・バトラーに、『ドント・ウォーリー・ダーリン』のフローレンス・ピュー、『007』シリーズのレア・セドゥなど、実力派の俳優陣が集結した。
前作が映画的に非常〜〜〜に美味しい所で終わってしまった故に、続編に期待する声が多く寄せられていたのは言うまでもない。
全世界の『DUNE』ファンが待ち望んだ、待望の続編………敢えて言おう、これこそが正真正銘「究極の映像体験」であると。
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今作はとにかく、とにっっっっっかく映像の迫力が凄まじい。とてつもない情報量を持つ映像の暴力が、怒涛の勢いで我々観客めがけて襲いかかってくるのだ。
その勢いはさながら劇中における巨大モンスター・サンドワームが如し。くれぐれもその勢いに飲み込まれすぎぬよう………
『オッペンハイマー』同様、全編IMAXカメラで撮影された今作。前作がアカデミー賞にて撮影賞を受賞したのも伊達じゃなく、その迫力は正に唯一無二だ。
故に、まだ観ていない方々には何としてでも劇場で、そして欲を言うならIMAX版で鑑賞することを強〜〜〜くオススメしたい。
またそれに加え、今作は映像だけでなく音も凄まじい。その音圧は、耳を超えて心臓まで直接届くほど。
ド迫力な映像だけでなく音響も堪能できるのも、私がIMAXでの鑑賞を強くオススメしたい理由の一つ。
まるで巨大なサンドワームが目の前を通り過ぎて行ったかのような、というよりサンドワームに飲み込まれてしまったかのような衝撃の連続である今作。
一度飲み込まれてしまったらもう出てこれない、映像体験ならぬ「DUNE体験」。既に世界中の観客たちが今作に魅了され、無事戻れなくなってしまっている模様。
スピルバーグやノーラン、キャメロンらハリウッドの巨匠たちも、今作を絶賛。『ゴジラ-1.0』の山崎貴氏、ゲームクリエイターの小島秀夫氏も同じく大絶賛している。
そしてストーリーも、またもやとても美味しい所で終わるという贅沢っぷり。『DUNE』の物語を最後まで描き切る、という監督の確固たる意思の表明でもあるのだろう。一生ついていきます。
今作の大ヒットを以てして、ヴィルヌーヴ監督は歴代の巨匠に名を連ね、『DUNE』シリーズは歴代のSF大作の一つに数えられることとなった。
その完成度は、最早『スターウォーズ』と肩を並べるに至ったと言っても過言ではないかもしれない。
映画史に残る「伝説」となったこの歴史的瞬間………是非ともスクリーンで目に焼き付けていただきたい。
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今後のシリーズ展開
元々は二部作構成を予定されていた今シリーズ。となれば、『〜PART2』以降、続編『〜PART3』は制作されるのか気になる所。
原作小説では『〜砂の惑星』シリーズの後は『デューン 砂漠の救世主』という続編に移行している。
そんなファンの要望に応じるかのように、ワーナー及びレジェンダリーが、ヴィルヌーヴ監督の元『Dune: Part Three』(仮題)の製作を決定したことを告知。
監督本人も、続編制作には意欲的な模様。ただ撮影に臨む前に、一本他の作品を挟んでから本格的に取り掛かりたいとのこと。
故に劇場でお目にかかれるのはまだまだ先になる模様。気長に待つとしよう。
また、今作のヒットが起因してか、Steam用のゲームとして『Dune: Awakening』が発表されている。レジェンダリーも制作に関わったMMOの超大作だ。
破竹の勢いで人気を伸ばしている『DUNE』、その勢いは、未だ衰えそうにない。
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まとめ(あとがき)
紳士淑女の皆様ごきげんよう。水綿です。
………なんて随分と気取った挨拶しやがって、気でも狂ったか?と思うかもしれないが………まぁ決まり文句の一つや二つあったっていいじゃない。締めの言葉もそうだし。
ここで非常に唐突ですが、実はYouTubeでも始めてみようかしらと最近思い始めてまして。ただ単に映画の感想を一人の男がボソボソ喋るだけと予定していますが。
気が変わらないうちに着手していきたいですねぇ。仮に始めたとして三日坊主にならないことを祈るばかり。
いやぁ、にしても3月は『DUNE』に『オッペンハイマー』と大忙しだったねぇ。こうもハリウッドの超大作を連発されたら疲れちゃいますよ良い意味で。
4月には、上の2作品とは180度味付けが違う『ゴジラ×コング 新たなる帝国』が公開されたり………何気に大忙しな2024年春でございます。
………と、言うわけで今回はこの辺で。
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それではまた、次の映画にて。