
『エイリアン』シリーズとは
宇宙では、あなたの悲鳴は誰にも聞こえない。- In space, no one can hear you scream.
見るもの全てを殺戮し尽くす、恐怖の生命体「エイリアン」をテーマとしたSF映画シリーズ。
1979年に第1作が『グラディエーター』『オデッセイ』のリドリー・スコット監督の元制作され、その後次々と続編が公開。SFホラーの金字塔的作品として後世に名を残すこととなった。
2024年現在までに、計7作品が公開されている。監督も作品によってバラバラであり、中にはハリウッドを代表する巨匠の名前も。
また2004年には、同じく20世紀FOX配給作品である『プレデター』シリーズとのクロスオーバー作品として『エイリアン VS. プレデター』が公開。2007年には続編も公開されている。

さて、歴代シリーズを語っていく前に、まずは簡単にエイリアンの生態について解説するとしよう。
そもそもエイリアンは、成体の姿になる前に複数の段階(幼体)が存在する。エイリアン・エッグ、フェイスハガー、チェストバスター、そして成体のゼノモーフである。
劇中に登場するほぼ全てのエイリアンには生みの親であるクイーン・エイリアンが存在し、そのクイーンがまず卵(エイリアン・エッグ)を産み落とす。
やがて卵が孵化し、サソリのような姿をしたフェイスハガーが誕生する。フェイスハガーは生物を見つけるや否やその生物の顔にしがみつき、生物の体内に自身のDNAを強制的に植え付ける。
フェイスハガーは時間が経てば勝手に顔から離れ絶命するものの、その直後に宿主である生物の胸部を突き破り、チェストバスターが出現する。尚、この時点で宿主となった生物は既に絶命している。
こうして生まれたチェストバスターが急速に成長し、ようやく成体であるゼノモーフへと進化するのだ。
フェイスハガーに捕まったら最後、チェストバスターの宿主として死を遂げることは避けられなく、加えて成体のゼノモーフは異常なまでに攻撃性が高く、見つかった瞬間に襲われ死が確定する。

また成体であるゼノモーフには、他の生物とは一線を画す様々な生態を持ち合わせている。口内に備えられたもう一つの口「インナーマウス」、そして超強酸性の血液だ。
細身なフォルムにそぐわない怪力や刃物のように鋭利な尻尾など、様々な外敵への対抗手段を持ち合わせているゼノモーフだが、この二つに関しては劇中でも度々使われている。
インナーマウスは金属製であり、凄まじい勢いで口から発射されるため、人間の身体であれば一瞬で貫通してしまう。頭部にそれを食らおうものなら無論、即死だ。
加えて血液は金属をも一瞬で溶かしてしまうほど強酸性であり、迂闊に近接攻撃を仕掛けようものなら逆にこちらが痛手を喰らってしまう。
幼体であるフェイスハガーもこちらの強酸性の血液を持ち合わせており、無闇矢鱈に引き剥がそうとするとかえって痛い目に遭ってしまう。
………とこのように、まさに「絶望」という二文字がそのまま生き物になったかのような、世にも恐ろしい生態を持つエイリアン。
どの作品においても、数々の登場人物がこのエイリアンに殺されており、その様はどれも悲惨極まりないものだ。
絶えず響き渡る慟哭と絶叫、だがその声を聞くものは最早、誰もいない。
誰も、帰れない。『エイリアン』
https://eiga.com/movie/5686/gallery/3/
『エイリアン』
("Alien")
あらすじ
2112年、多数の貨物を搭載し地球への帰途を辿っていたノストロモ号は、ある惑星から放たれた知的生命体による信号を受信。
若干の胸騒ぎを覚えつつも、会社の方針によりその惑星の調査に乗り出すクルーたち。そこで目にしたのは、惑星に不時着したかと思われる超巨大な宇宙船だった。
船内を探索するうち、クルーたちは謎の生物の卵のようなものが乱立したエリアに辿り着く。
不穏な空気が立ち込める中、引き続き探索を続行していくクルーたちだったが、突如として卵が孵化し中からサソリのような生物が出現、クルーの顔に飛びつき離れなくなってしまう。
その後何とかノストロモ号に連れ戻すことができたものの、謎の生物の正体は依然として不明のまま。
しばらく時間が経ってから意識を取り戻したクルーだったが、容態が急激に悪化。悶え苦しむクルーの胸から飛び出したのは鮮血と、真っ白い謎の生物だった。
謎の生物は船内のどこかへと逃走し、短時間の間で急速に成長、船内のクルーたちの命を次々と奪っていくように。
宇宙船という閉鎖空間に放たれた生命体、その名も「エイリアン」。未だかつてない恐怖が、幕を開ける。
https://eiga.com/movie/5686/gallery/
作品概要
シリーズ1作目、絶望の物語の幕開けである。
後にハリウッドのレジェンドとして語られることとなるリドリー・スコットが監督を、シガニー・ウィーバーが主演を担当、どちらも今作でデビューを飾った。
公開された当時は1979年、まだまだCG等の映像技術もそこまで発達しておらず、今作『エイリアン』もどちらかというと「古典的作品」に位置する。
しかしだからと言って「何だ全然怖くないじゃん!!」と高を括っていると痛い目に遭う。SFホラー映画として、演出もストーリーもしっかりと恐怖感たっぷりに仕上がっているのだ。
エイリアンが静かに忍び寄り、何か違和感を感じ振り返ったその瞬間には、もう………という演出は毎回ビビらされっぱなし。
https://eiga.com/movie/5686/gallery/2/
………しかしながら、SFホラーの代表的作品として名を馳せる『エイリアン』シリーズだが、正真正銘のSFホラーとして出来上がっているのは今作のみ………と言えるかもしれない。
後述する続編ではアクション映画に様変わりしていたり、ホラー通り越してモンスターパニック映画になっていたり、ホラーに原点回帰したかと思いきや何か違かったりと、良くも悪くも様々なパターンが存在する。
エイリアンという魅力的なキャラクターを取り扱う以上、様々なジャンルがあっても何らおかしい話ではないが、今一度ガチガチなSFホラー映画としての『エイリアン』を観てみたい、という気持ちもある。
そんな願いが叶ってか、最新作『エイリアン:ロムルス』は中々に怖〜〜〜い仕上がりとなっているそうな。これは期待するしかない。
恐怖に、立ち向かえ。『エイリアン2』
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『エイリアン2』
("Aliens")
あらすじ
エイリアンの出現により地獄絵図と化したノストロモ号からただ1人、間一髪で生還したエレン・リプリー。
コールドスリープを行い宇宙を漂っていた彼女だったが、地球衛星上の宇宙ステーションで保護されることに。
こうして奇跡の生還を果たしたリプリーだったが、仲間を皆殺しにしたエイリアンは彼女に強烈なトラウマを植え付けていた。
毎晩毎晩エイリアンの幼体チェストバスターが胸から飛び出る夢を見る上、ノストロモ号での惨劇が証拠不足により認可されず、結果精神異常と診断されてしまうリプリー。
深い絶望に囚われる中、かつてリプリーたちが信号を受け取り降り立った惑星LV-426にて、多数の居住者が行方不明になる事件が発生する。
リプリーが眠っている間に植民地として開発されていたLV-426。真相を解明するべく、海兵隊を中心とした部隊が編成されることに。
紛れもなくあのエイリアンの仕業だと踏んだリプリーは、自身のトラウマを克服するべく部隊に加わることに。
静寂に満ちたLV-426に降り立ち、調査を開始する一同。そこで彼らが目にしたのは、夥しい数で迫り来るエイリアンたちだった………
https://eiga.com/movie/42741/gallery/
作品概要
シリーズ2作目。タイトル(英題)にもある通り、前作では単体での出現だったエイリアンが今度は増殖。またとして、人類に耐え難きトラウマを植え付けに来た。
前作にて監督を務めたリドリー・スコットに代わり、今作ではあのジェームズ・キャメロンがメガホンを取ることに。結果として『ターミネーター』に続いて大ヒットを記録することとなった。
エレン・リプリー役のシガニー・ウィーバーは、前作に引き続き続投している。
古典的SFホラー、ひいてはSFホラーの金字塔として語り継がれることとなった『エイリアン』、その続編ともすれば作風はまたしてもおどろおどろしいホラーか………
と思いきや、大量のエイリアンたちにリプリーらが武器を手に立ち向かう、まさかのアクション映画へと生まれ変わっていた。
一作目ではホラー映画だったものを、続編でアクション映画にしてしまうとは如何程か………と思うや否や、シリーズ最高の興行収入を記録。アカデミーも2部門受賞するなど大成功を収めた。
生物としてはあまりにも奇怪かつ恐ろしすぎる生態を持つエイリアン………このキャラクターをどういったジャンルで取り扱っていくかによって、その作品の面白味が全く変わってくるのではなかろうか。
一人一人を嬲り殺していくホラー映画としても、有象無象の大群として人間と相対するアクション映画としても、どちらも優れている『エイリアン』シリーズ。
仮にリドリー・スコットが1作目にて前者を証明したのであれば、ジェームズ・キャメロンは2作目にて後者を証明してみせたと言えるだろう。
これといい『ターミネーター』といい『ランボー』といい、キャメロンは続編を成功に導くのが相当上手いと見える。
這い寄る、絶望。『エイリアン3』
https://eiga.com/movie/5690/photo/
『エイリアン3』
("Alien 3")
あらすじ
LV-426にてエイリアンの大群との死闘を終え、地球への帰途を辿っていたリプリーたち。
だがその途中、またしても悲劇が起こる。リプリーが己の手で葬ったクイーン・エイリアンの卵が、リプリーたちの乗る宇宙船にひっそりと産み落とされていたのだ。
コールドスリープ中のリプリーたちはその異変に気づく訳もなく、卵が生まれフェイスハガーが誕生。ポッドは破壊され、宇宙船は惑星フィオリーナ161へと不時着した。
宇宙船が大破したことにより、クルーたちの大半が死亡。またしてもリプリーだけが生き残る結果となった。
深い悲しみに暮れるリプリーだったが、惑星の人々はそんなリプリーを訝しげな視線で見つめる。彼女の不時着した惑星とは、銀河中の犯罪者たちが集まる流刑の惑星だったのだ。
そんな環境の中、案の定エイリアンが出現。犬に寄生したことで、4本の足と鋭い嗅覚を携え、次々と犯罪者たちを殺し始めるエイリアン。
またしても始まった、閉鎖空間でのエイリアンの「殺戮」。三度の対峙を迎えることとなった、リプリーの下した決断とは………
https://eiga.com/movie/5690/
作品概要
シリーズ3作目。孤独に戦い続けたリプリーも、遂に仲間たちと地球へ帰還できる………かと思われたが、まだまだこの絶望の物語は終わらない模様。
監督は後に『セブン』や『ファイト・クラブ』などの名作を手がけるデヴィッド・フィンチャー。主演をシガニー・ウィーバーが続投した。
言わずもがなと名の知れた監督だが、撮影が難航したり大幅に再編集されたり興行的に失敗したりと、本人は監督作と認めたくない模様。
リプリー含む登場人物全員が坊主頭、という『エイリアン』シリーズ以外の観点から見ても中々に異質なビジュアルを持つ今作。
作風も、前作のようなド派手なアクションムービーから、閉鎖的空間でエイリアンに襲われるSFホラーへと原点回帰。
それも1作目のように背後から忍び寄られて殺されるのではなく、四足歩行で高速移動するエイリアンに追い回されるのだから余計に怖い。
しかし先述したように、シリーズで見ると中々に興行的失敗を遂げている今作。制作費もシリーズ最高額が投じられたが、こんな結果となってしまったのは何故なのか。
その答えとはやはり『エイリアン2』での出来事が全て帳消しになってしまったからだろう。リプリーたちが命をかけて繰り広げた死闘も、今作で全てが水の泡となってしまった。
リプリーのエイリアンという名の「恐怖」への克服、といったテーマも前作で達成されたはずなのに、今作でまたエイリアンに慄くこととなってしまってはただの二番煎じとなってしまう。
あの日、ノストロモ号があの惑星に降り立ってしまった以上、リプリーの運命は最早どう足掻いても避けられないものとなってしまったのだろうか。
ある意味、その果てなき絶望感もまた『エイリアン』シリーズの魅力、ひいては一つのテーマと言えるのかもしれないが。
生まれ、堕ちる。『エイリアン4』
https://eiga.com/movie/42742/photo/
『エイリアン4』
("Alien: Resurrection")
あらすじ
惑星フューリーでの惨劇から200年後、エイリアンと共に溶鉱炉に飛び込み最期を遂げたリプリーは、彼女の血液から再生されたクローン「リプリー8号」として復活を遂げる。
エイリアンを本格的に軍事利用しようと企んだ軍は、実験船「オーリガ」にてエイリアンの繁殖を試みることに。
全てのエイリアンの母体であるクイーン・エイリアンを生み出すため、リプリーは実験体として再生されたのだった。
しかしながら、驕り高ぶる人類を見下すかのように、またしても惨劇は引き起こされてしまう。繁殖させたエイリアンが仲間を殺し、その酸性の血液で施設に穴を開けることで逃亡してしまったのだ。
研究者や軍人たちを次々と殺し、一瞬で血の海と化してしまったオーリガ。そしてそれに加え、船内に捕縛されていた、子宮を体内に宿したクイーン・エイリアンが、今までにない新たなるエイリアンを産み落とす。
それは人類とエイリアンのハーフ、通称「ニューボーン」。新たなる進化の鼓動に、オーリガは更なる混沌へと巻き込まれてゆく。
自分は果たして人なのか、或いはエイリアンと同じ化け物なのか。この世に生まれ落ちたばかりのリプリー8号は、己の存在意義を求め混沌の渦中へと飛び込む。
作品概要
シリーズ4作目。リプリー、そしてエイリアンの復活、ありとあらゆる意味を込めて英題である"Resurrection"の名がついた。
監督を務めたのは、後に『アメリ』で名を残すジャン・ピエール=ジュネ。およそ20年にわたって主演を務めてきたシガニー・ウィーバーも、今作で『エイリアン』シリーズ出演が最後となる。
『アベンジャーズ』で監督を務めることとなるジョス・ウェドンも、脚本で参加していたりする。
ホラー、アクション、再びホラー、と何かと忙しないジャンルの変遷を遂げてきた『エイリアン』シリーズ、今度はモンスターパニック映画として登場。
壁をよじ登り、ダクトを通り、あの手この手で人間らをジェノサイドしまくるエイリアンたち。ホラーとはまた違うが、劇中通してハラハラ感を味わうことが可能。
今までは薄暗い空間に影を潜めるエイリアンの姿が多かったが、今回はしっかりと全体像を拝むことができる。その美しいフォルムを目に焼き付けておくべし。
加えて今作はゴア描写が多いのも特徴的。エイリアンが登場人物を殺める際、今までは直接的な描写が無かったものの、今作はその真逆でかなり目立っている。
と、総じて「包み隠さず」な印象が強い今作。(あくまでも番外編だが)次回作である『エイリアン VS. プレデター』含め、この頃のエイリアンはモンスターとしてのイメージが強かったのかもしれない。
さて、この『エイリアン4』を以てして『エイリアン』シリーズはひとまず幕を下ろすことに。長らくエレン・リプリー役を演じてきたシガニー・ウィーバーも、これにて晴れて卒業だ。
しかしこれだけシリーズを追ってきて、どう考えてもやはり不可解な点が一つある。そもそも、あの「エイリアン」という生き物は何なのだろうか?
圧倒的な攻撃性、身の毛がよだつ生態、それでも尚感じられる「完全なる生命体」としての一種の美しさ。彼らの「起源」とは、果たしてどこから始まったのだろうか。
謎が謎を呼ぶ「エイリアン」の正体、その果てなき問いにアンサーを出したのは、この物語の「始まり」を築き上げた「あの人」だった………。







