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MCUにおける「ドラマシリーズ」とは?
『Xメン』や『スパイダーマン』に始まり、MCUをはじめとする様々な「映画作品」で全世界を熱狂の嵐に巻き込んだマーベルだが、その他にもドラマシリーズが配信されていたのはご存じだろうか。
先駆けとなったのはMCUからの派生作品である『エージェント・オブ・シールド』。直接MCUの本筋の物語に絡んでくることはないが、独立したドラマシリーズとして人気を確立している。
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そこからNetflixでは『デアデビル』が配信され、以後「ディフェンダーズ・サーガ」としてシリーズが制作されている。こちらもMCUと同一の世界観を有しているが、本筋に深く関わってくることはない。
マーベルの実写作品といえばやはり映画作品が先に思い浮かべられるが、このようにドラマシリーズも一定数の人気を保っている。
本記事で語るのは、MCUのフェーズ4以降に制作されるようになったドラマシリーズ。全てDisney+で配信されている。
これまでのドラマシリーズと異なりMCUのストーリーに大きく関わる作品が多く、中にはドラマシリーズを視聴していないと映画作品の理解度に影響するというケースも。
これまでは映画作品だけを観ていれば物語の本筋を理解できていたものが、急な方針転換によりDisney+への加入が必須になってしまったことから、一定数の批判が寄せられている模様。
だが一部の作品は映画作品に並ぶほどの高評価を獲得しているものもあり、ただでさえ広いMCUの世界観がさらに広がったという見方もできる。
総じて、『~エンドゲーム』で壮大なる幕引きを遂げたMCUの、「新たなる伝説」の幕開けとなったと言えるだろう。
全て偽りだったとしても。『ワンダヴィジョン』
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『ワンダヴィジョン』
("WandaVision")
あらすじ
舞台は60年代のアメリカ・ウエストビュー。魔女のワンダ・マキシモフと、人造人間のヴィジョンは、夫婦として幸せな暮らしを送っていた。
時にハプニングに見舞われながらも、幸福に満ちた日々を過ごす2人。そしてその様子が「シットコム」としてTVで放映されていた。
時は60年代から徐々に移り変わっていき、映像にも色がつき始め2人は双子の子供までもうけるようになる。それはまさに、ワンダが「思い描いていた幸せ」そのものだった………
どこか辻褄が合わない物語、そして永遠と「シットコム」として流れ続けるワンダとヴィジョンの生活。この奇妙な映像の正体とは、ワンダが己の魔法を用いて造り出した「幻想」だったのだ。
サノスとの戦いで、最愛の恋人であるヴィジョンを失ったワンダは深い悲しみに包まれ、偶然訪れたウェストビューの町を自身の魔法で飲み込んでしまった。
そうして出来上がったのは、全てがワンダの思い通りになる世界。無関係の住民まで巻き込み、ワンダの魔法の領域に踏み込んだものはすべからず物語の登場人物の1人になってしまう。
これを受けて政府は「マキシモフ事変」として調査に乗り出し、S.H.I.E.L.Dの後続の組織ともいえるS.W.O.R.Dによる捜査がウェストビュー周辺にて行われていた。
弟を失い、そして今度は最愛の人までも失った彼女は、禁じられた領域に足を踏み入れてまで「仮初の幸せ」を手に入れようとする。世界一孤独な魔女の、その結末とは………
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作品概要
『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』から初登場した、ワンダ・マキシモフ(エリザベス・オルセン)とヴィジョン(ポール・ベタニー)が主役のドラマシリーズ。
初ドラマシリーズであるが、その雰囲気はどこかホラーチック。時代にそぐわない、白黒の映像からなるシットコムで物語が始まるなど明らかに異質な雰囲気を醸し出している。
ところでドラマシリーズとは、2時間もの尺で描き切らなければならない映画と異なり、複数の話で物語をじっくりと描くことができるという利点がある。
故に今作では、ワンダとヴィジョンによって繰り広げられるこのシットコムが何なのか、何故このような状況が起こったのかという経緯や種明かしが、話数が進んでいく毎に明らかになっていく。
MCU正史においては初となるドラマシリーズにおいて、正統派なヒーローアクションではなくミステリー・サスペンス寄りの構成とは、かなり思い切ったことをしている。
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そもそも、ヴィジョンは『〜インフィニティ・ウォー』にてサノスに頭のマインド・ストーンを抜き取られ既に死亡している。そこから生き返ったような描写もなく、ワンダと普通に生活しているのはどこかおかしい。
その違和感の正体とは、あらすじにも言及したようにワンダの魔法によるものである。故に作中では、徐々に綻びが見え始めるワンダの世界と、事態の解決に立ち向かう外部の勢力が同時並行で描かれている。
これまでのMCUの物語において、ワンダはあまりにも多くのものを失い続けてきた。ウルトロンとの戦いでは弟のピエトロを失い、サノスとの戦いでは愛するヴィジョンをも失ってしまった。
失った数々のものたちを含めれば、彼女はMCU史上最も悲惨な過去を持つキャラクターと言えるかもしれない。
そういった彼女の境遇を鑑みると、今回彼女が引き起こした事件を一概に「悪」と呼ぶのは難しい。何故ならば、彼女はただ家族が欲しかっただけなのだから。
仮にそれが幻による偽りのものだったとしても、彼女は幸せを一瞬でも得ることができた。それはまさに、彼女にとって確かなる「救い」に成り得たと言えるだろう。
受け継がれし「星」と「象徴」。『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』
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『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』
("The Falcon and the Winter Soldier")
あらすじ
サノスとの最終決戦の後、スティーブ・ロジャース/キャプテン・アメリカはタイムトラベルを行い、キャプテン・アメリカを引退。
彼は己の武器である盾を、戦友であるサム・ウィルソンに引き渡し、こう告げる………「次のキャプテン・アメリカは君だ」と。
だがキャプテン・アメリカになることとは即ち「アメリカ」もとい「ヒーローそのもの」の「象徴」となること。その重圧は途轍もなく大きい。
プレッシャーに耐えかねたウィルソンは、アメリカ政府へ盾を寄贈。これまで通り、空を自在に駆けるヒーロー「ファルコン」として活動に明け暮れていた。
その最中、ウィルソンは世界各地でテロ活動を行っている組織である「フラッグ・スマッシャーズ」の存在を耳にする。既に甚大な被害が出ており、その対処に向かうこととなった。
そんなウィルソンの元へ共に戦う仲間として訪れたのは、スティーブの戦友にして親友でもあるバッキー・バーンズ。かつてヒドラによって洗脳され「ウィンター・ソルジャー」としてスティーブたちと敵対した男だ。
性格がまるで真反対な2人は、凹凸コンビとしてフラッグ・スマッシャーズの行方を追い始めるが、そこへ更に「新たなるキャプテン・アメリカが誕生した」という情報が舞い込んできて………
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作品概要
どちらもキャプテン・アメリカの右腕的存在である、空を自在に駆けるヒーロー「ファルコン」と、ヴィヴラニウムの義手を持つ男「ウィンター・ソルジャー」の2人が主役のドラマシリーズ。
サム・ウィルソン/ファルコンをアンソニー・マッキーが、バッキー・バーンズ/ウィンター・ソルジャーをセバスチャン・スタンが演じた。
他にも、新たに政府によって任命された「二代目キャプテン・アメリカ」ことジョン・ウォーカーを、『オーヴァーロード』のワイアット・ラッセルが演じる。
『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』において、アベンジャーズを分裂させた真の黒幕とも呼べるヘルムート・ジモ(ダニエル・ブリュール)が再登場するという衝撃的な展開も。
前作『ワンダヴィジョン』ではミステリーチックな演出が際立つ、良くも悪くもヒーロー映画らしくない雰囲気を漂わせていたが、今作では堅実なヒーローアクションへと回帰。
加えて『アベンジャーズ/エンドゲーム』における最終決戦の後の話ということで、サノスが行った「指パッチン」が世界にどのような影響を及ぼしたのかも描かれている。
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人々が指パッチンによって消滅した期間は5年間。アベンジャーズの活躍により元に戻りはしたが、その間に数多くの人々が己の生活を失ってしまったことは想像に難くない。
今作における敵組織である「フラッグ・スマッシャーズ」は、テロ活動を以てして世界にこう呼びかける………「指パッチンから戻った世界は、果たして正しいのか」と。
他にもスティーブがかつて参加した「スーパーソルジャー計画」の、長らく隠されていた闇の部分が露わになるなど、政治サスペンス的な側面が強い物語構成となっている。
アベンジャーズのリーダーにして「正義」そのものの象徴であるキャプテン・アメリカ。だがスティーブ・ロジャースはキャプテンの座から降りることを選び、彼の「象徴」はウィルソンの元へ託された。
だがスティーブはおろかトニー・スタークすらもいない今の世界で、新たなるキャプテン・アメリカとなることの意味合いは非常に大きい。
誰がその「象徴」を、「星」を継ぐのか。今後のMCUの物語に非常に大きく関わる、ドラマシリーズながらシリーズにおける最重要の作品と言っても過言ではないだろう。
多元宇宙を駆ける、悪戯の神。『ロキ』
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『ロキ』
("Loki")
あらすじ
量子トンネルを使って過去に戻り、インフィニティ・ストーンを取り戻すべく敢行されたアベンジャーズの「タイム泥棒作戦」。
トニー・スターク、スティーブ・ロジャース、スコット・ラング、ブルース・バナーの4人は、「スペース・ストーン」が秘められた四次元キューブを奪取すべく、ロキとチタウリ軍団がNYに襲撃してきた日まで遡る。
だがすんでのところで、元の世界にいる方のハルクが暴走。油断したスタークたちはキューブを手放してしまい、よりによって捕縛されていたロキの手に渡ってしまう。
そうしてキューブの力を使い脱出に成功したロキ。再び地球を我が物にせんと高笑いするが、何もないはずの空間から突如としてポータルが開き、謎の隊員たちがロキを連れ去ってしまう。
彼が連れられたのは「時間変異取締局」、通称「TVA」という名の組織。無限に近い数のマルチバースを監視し取り締まる役割を担っており、ロキは本来の時間軸と異なる道を歩んだことから「変異体」として拘束されたのだった。
TVAでは今、「神聖時間軸」から時間軸の「枝分かれ」が発生し、様々なマルチバースが誕生するという前代未聞の事態に陥っていた(ここでいう神聖時間軸とは、これまでのMCUの物語が紡がれてきた時間軸を指す)。
この状況を解決すべく、ロキはTVAの職員であるメビウスと共に、広大なるマルチバースの世界を巡る調査に乗り出す。だがTVAでは、あるもう1人のロキの変異体がTVAの職員を襲い回っているという噂が広まっていた………
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作品概要
『マイティ・ソー』や『アベンジャーズ』でヴィランとして登場した、悪戯の神にしてソーの弟であるロキが主人公のドラマシリーズ。
トム・ヒドルストンが主演を務め、ソフィア・ディ・マルティーノやオーウェン・ウィルソンらと共演した。
今作においてロキは、世界に脅威をもたらすヴィランとしてではなく、多様なマルチバースの世界を冒険する主人公として描かれる。そのため『マイティ・ソー/バトルロイヤル』でソーと共闘したロキとは別人となる。
NYへチタウリ軍団を連れて襲撃してきた頃の、悪しき野心に満ちたロキであるため、狡猾かつ独善的な性格が目立つなどヴィランとしての側面が強い。
だが彼が赴いた時間軸で起こった様々な出来事や、TVAに恨みを抱く変異体のロキである「シルヴィ」との出会いなどを経て、「神聖時間軸」の彼とは異なる道を辿っていき、それに連れて性格も変化していく。
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そして何よりも特筆すべきは、数百、数千、数万もの時間軸たちを管理する組織であるTVA。彼らが管理するのは町、国、世界にとどまらず「時間軸そのもの」を監視し続けている。
これまで描かれてきたMCUの物語の世界でさえ、TVAにとっては彼らが管理する「時間軸」の一つに過ぎない。
「マルチバース・サーガ」において初めてマルチバースの設定を大々的に盛り込んだ作品であり、そのスケール感は気が遠くなるほどに壮大。
当然これまでのMCUと比較すると設定がやや複雑だが、だからこそ表現できるキャラクターたちやストーリーなど、他の作品と同様MCUを更なる段階へと進化させたといえるだろう。
クラシックな雰囲気を纏ったTVAや、狡猾に動こうとしてもマルチバースの広大さに空回ってばかりのロキなど、作品単体としての面白さもある。
数あるMCUのドラマシリーズの中でも特段高い評価を得ており、唯一シーズン2が制作されたシリーズでもある。詳しくは今後公開予定の記事を参照されたし。
聖なる夜に、悪を射抜け!!『ホークアイ』
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『ホークアイ』
("Hawkeye")
あらすじ
アベンジャーズの1人にして元S.H.I.E.L.D.のメンバー、超天才的な弓の使い手であるクリント・バートン/ホークアイ。
愛する家族が出来、また度重なる戦闘で難聴となってしまったため、現在は現役を退いて家族と幸せな日々を送っていた。
ある日、クリスマスを控えたNYの夜に、漆黒のスーツを纏った謎の人物が現れたという情報を得たクリント。その姿はサノスの「指パッチン」以降、かつて彼が身に纏っていた「あるスーツ」だった。
家族全員を指パッチンによって失ってしまった彼は心を固く閉ざし、闇社会の人物を抹殺する殺し屋「ローニン」として活動していた過去がある。それは彼にとって、消し去るべき忌まわしい記憶だった。
久々に弓矢を携え、ローニンのスーツを持つ謎の人物との接触を図るクリント。その正体とは、ヒーロー「ホークアイ」に憧れを抱く少女、ケイト・ビショップだった。
2012年のNY市街地戦で父を失うも、すんでのところでクリントに命を救われた過去を持つ彼女は、アーチェリーで優秀な成績を残しているなど弓矢の達人。将来の夢は、アベンジャーズの仲間になり共に戦うことだった。
とあるブラック・マーケットの現場に偶然出会し、窮地を脱するためにローニンのスーツを一時的に借りただけというケイト。
だがマーケットの主催である「トラックスーツ・マフィア」は既にケイトを付け狙っており、巻き添えになる形でクリントも戦いに巻き込まれてしまう。
光り輝くNYの聖夜にて繰り広げられる「2人のホークアイ」の戦いは、やがて様々な人物たちを巻き込んでいって………!?
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作品概要
クリント・バートンとケイト・ビショップ、2人の「ホークアイ」からなるドラマシリーズ。『マイティ・ソー』から登場しているキャラクターではあるが、彼が主役となる作品は今作が初めてである。
ジェレミー・レナーが主演を務め、ケイト・ビショップを『バンブルビー』のヘイリー・スタインフェルドが演じる。『ブラック・ウィドウ』にてエレーナ・ベロワを演じたフローレンス・ピューも共演した。
MCUが新たなるフェーズに以降し、それに応じてヒーローたちも変化を余儀なくされた。そんな変化の一つの形こそが「世代交代」である。
スティーブ・ロジャースがサム・ウィルソンへ盾を渡したように、クリント・バートンもまたホークアイとしての「弓矢」を受け渡す時が来たのである。
そうしてホークアイの名を継いだのが、クリントと肩を並べるほどの天才的な技術を持つケイト・ビショップ。二代目ホークアイとして、今後の活躍には強く期待していきたい。
しかしながら、ケイトは年齢的にもヒーローとしてもまだまだ未熟。クリントと共に様々な窮地を乗り越えていくことで成長していく姿もポイントだ。
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そして今作、中々にボリュームの詰まった内容のドラマシリーズとなっている。舞台がクリスマスのNYということで陽気な作風が予想されるが、その実今後のMCUのストーリーに大きく関わる要素が散りばめられている。
その一つとして、ストーリー中盤ではナターシャ・ロマノフ/ブラック・ウィドウの義妹であるエレーナが登場。彼女はサノス指パッチンによって、5年間もの間消滅していた。
映画『ブラック・ウィドウ』のポストクレジットシーンにて、ヴァレンティーナ夫人という謎の人物から、ナターシャを殺害したのはクリントであるという偽の情報をエレーナに伝え、彼の暗殺を依頼する様子が描かれている。
よって今作では、ナターシャの敵討ちとして何度もクリントとケイトに襲い掛かってくる、実質的なヴィランとしての立ち位置となっている。
またもう1人のヴィランとして、「トラックスーツ・マフィア」のボスとしてマヤ・ロペス(アラクア・コックス)が登場。聴覚障害を患っているが、戦闘能力はずば抜けて高い。
また、彼女の裏に潜む人物がまさかの「あの男」であるという衝撃的な事実も作中で明かされる。凄まじいネタバレとなるのでここでは割愛するが………
と、このようにボリューミー極まりない今作。世代交代、過去との決別、新たなる脅威………決して見逃せない、フェーズ4で最も重要な作品の一つと言えるだろう。