シリーズ解説

MCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)フェーズ4を一挙解説!!≪ドラマ編≫

2025年9月23日

月に代わって制裁を。『ムーンナイト』

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『ムーンナイト』

("Moon Knight")

あらすじ

博物館の職員として働くスティーヴン・グラントは、臆病だが心優しい性格の持ち主である男。重度の睡眠障害を患っていながらも一生懸命に日々を過ごしていた。

ある日目を覚ますと、スティーヴンは見知らぬ町にいた。そこでは教祖らしき男が町民の未来を占っており、ある1人の町民が彼の杖に触れると魂を抜き取られ死亡してしまう。

そんな恐ろしい出来事に怯え切ったスティーヴンは逃げ出すが、町の人々は彼を殺そうとどこまでも追ってくる。パニックに陥ったスティーヴンは遂に気絶してしまうが、次の瞬間には襲ってきた人々が全員血塗れで倒れていた。

訳が分からないままスティーヴンはベッドから目を覚まし、奇妙な感覚に襲われながらいつも通り博物館に向かう。

上司にいびられながら夜遅くまで作業していたスティーヴンは、館内に響く奇妙な音を耳にする。その音の正体とは、まるでおとぎ話から出てきたかのような異形の怪物だった。

怪物は執拗に彼を追い回し、スティーヴンはたまらずトイレに逃げ込む。絶体絶命の状況に陥ったスティーヴンだったが、不意に頭から何者かの声が鳴り響く。

ふと鏡を見ると、そこには自分と同じ姿をした男がそこにいた。鏡の中の男「マーク・スペクター」は囁く………「身体の主導権を渡せ」と。

スティーヴンは身体が乗っ取られることに恐怖するが、身を守るために渋々承諾。するとスティーヴンの身体は、純白のマントに身を包んだ戦士「ムーンナイト」へと変貌していき………

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作品概要

純白のマントに身を包み、一切の容赦なく敵を葬り去るダークヒーロー「ムーンナイト」が、満を持してMCUに参戦した。

主人公のスティーヴン・グラント/マーク・スペクターを演じたのはオスカー・アイザック。気弱なスティーヴンと無骨なマークの両方を演じ分けている。

覆面にマント、そして敵には無慈悲なところからDCコミックスのバットマンを彷彿とさせるが、ムーンナイトはそれに加えて月の神「コンス」の力を宿すという特性を持つ。

基本的にはコンスに力を分け与えられる形で超人的な能力を行使しており、よく言えば忠実なる僕、悪く言えば奴隷といった立ち位置にある。

だが一切容赦せずに敵を徹底的に打ちのめす姿は、まさに神の使いが「神罰」を下しているかのよう。純白の装束に返り血が飛び散るその様は、恐ろしくもどこか神々しい

それに倣ってアクションシーンも中々に暴力的であり、逆に言えばMCUのような大衆向けシリーズにおいて、このような表現ができるようになったことはある意味革新的なことと言えるかもしれない。

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そして今作最大の魅力とは、話が進むごとに謎が明らかになっていくという物語の構成にある。今作、序盤の時点では中々腑に落ちないシーンが多々存在し、訳が分からぬまま物語が進んでいくことになる。

だが話が進んでいく毎に新たなる事実が判明していき、序盤の不可解なシーンも説明がつくようになっていく。ストーリーを細分化して表現できる、ドラマシリーズならではの手法と言えるだろう。

アーサー・ハロウとは何者なのか、コンスの目的とは何なのか、そもそもスティーヴンの身体に、何故マーク・スペクターという別の人格が宿っているのか………

砂塵に秘匿された古代エジプトの秘密のように、今作もまた砂に埋もれた謎が多数存在し、そんな謎たちに包まれた砂たちが吹き飛び解き明かされていく過程は、良い意味でヒーロー映画らしくない新鮮な感覚だ。

その完成度の高さから、MCUのドラマシリーズにおける最高傑作という呼び声も多い。シーズン2の制作は今のところ予定されていないが、ドラマシリーズとは別の形で再登場するとのことだ。

宇宙のパワーで、皆を救え!!『ミズ・マーベル』

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『ミズ・マーベル』

("Ms.Marvel")

あらすじ

ニュージャージー出身、パキスタン系アメリカ人の高校生であるカマラ・カーンは、「キャプテン・マーベル」ことキャロル・ダンヴァースの大ファン。

彼女の日常は常に空想に満ち溢れており、いつかヒーローとなりキャロルと共に戦うことを夢見ているが、母のムニーバをはじめとするカマラの家族は彼女の将来を案じていた。

ある日彼女は、家の物置からある不思議なバングルを発見する。特殊な細工が施されたそのバングルは奇妙な光を発しており、試しにカマラが腕に付けてみると、その瞬間、光に包まれた非現実的な世界が眼前に広がり始めた。

常軌を逸した体験にカマラは混乱するが、親友のブルーノと共にパーティーへ行くという約束をしていた為、キャプテン・マーベルのコスプレをして会場に赴く。

会場は学生たちで大いに賑わっていたが、天井の装飾が崩れ落ちるというアクシデントが発生。崩れる装飾の真下にいた人を助けようとカマラが手を伸ばすと、彼女の手から突如として巨大な光の手が出現。

カマラが付けたあのバングルには、光を固形化し放出するという力が備わっていたのだ。文字通りスーパーパワーを手にしたカマラは、ブルーノと共にその力を研究し始める。

だがそれと同時に、カマラのスーパーパワーがSNSで拡散されたことにより、ダメージ・コントロール局が調査に乗り出し始める。目的のためならば手段を選ばない彼らは、やがてカマラの周囲の人たちを巻き込み始めるように。

果たしてカマラは、大切な家族や友人たちを守ることができるのか?そして彼女のバングルに秘められたある「秘密」とは?新米ヒーロー「ミズ・マーベル」の物語が、幕を開ける。

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作品概要

MCUに新たな高校生ヒーローが登場。キャプテン・マーベルと同様「光」を操るヒーロー、その名も「ミズ・マーベル」だ。

主人公のカマラ・カーンをイマン・ヴェラーニが熱演。MCU初のパキスタン系ヒーローであり、他の登場人物もパキスタン系の俳優たちが演じている。

『スパイダーマン:ホームカミング』『ホークアイ』など、比較的年齢の若いヒーローたちの物語というのは、他の作品では見られない「フレッシュさ」に満ち溢れている。

今作『ミズ・マーベル』も例外ではなく、未だ大人になりきれていない少女がヒーローになることへの高揚や、それがもたらす苦悩・葛藤が描かれている。

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加えて今作は非常にポップな作風を有しており、特にカマラが友人とDMでやり取りをするシーンでは背景がメッセージと連動して動き出すなど楽し気な雰囲気に包まれている。

またMCU初のパキスタン系ヒーローということで、舞台もムスリムをベースとするものとなっており、先述したポップな作風と合わさって独特な世界観を持つ。

ミズ・マーベルはフェーズ5の映画作品『マーベルズ』にて再登場、更に「ヤング・アベンジャーズ」のメンバーの1人になるとも噂されている。彼女の更なる活躍に期待していこう。

超人、兼、弁護士!?『シーハルク:ザ・アートニー』

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『シーハルク:ザ・アートニー』

("She-Hulk: Attorney at Law")

あらすじ

ジェニファー・ウォルターズ(30歳、独身)は、「ハルク」ことブルース・バナーの従姉妹。凄腕弁護士として多忙な日々を送っていた。

ある日、ブルースと車でドライブをしている最中に事故に遭ってしまい、傷口にブルースの血液が入り込んでしまう。

そうしてジェニファーは、もう1人のハルクこと「シーハルク」となってしまい、ハルクの危険な能力を制御するためブルースと実験訓練を行うことに。

だがジェニファーは「シーハルク」となっても自我を保っており、尚且つブルース以上のポテンシャルを秘めた逸材だった。そのパワーは、長年の研究でハルクの力を完全に我が物にしたブルースのそれを超えるほど。

そうしてジェニファーは無事に元の弁護士生活に戻ることに成功したが、法廷に超人インフルエンサーこと「タイタニア」が脱獄・乱入。

彼女の暴走を止めるべく、ジェニファーは公衆の面前で「シーハルク」に変身。タイタニアの撃退に成功し、一躍注目を浴びる。

ジェニファーの持つ「弁護士」と「スーパーヒーロー」の二つの側面に目を付けた彼女の上司は、ジェニファーを「スーパーヒーロー専門弁護士」として新たに雇い直すことを提案。

かくして新たなる道を歩み始めたジェニファー。彼女の元へ早速届いた「依頼」、それはかつてブルースと死闘を繰り広げた「アボミネーション」ことエミル・ブロンスキーの仮釈放を巡るものだった………

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作品概要

第2のハルクこと「シーハルク」がMCUに参戦。『オーファン・ブラック 暴走遺伝子』エミー賞を受賞したタチアナ・マスラニーが主役を演じた。

ブルース・バナー/ハルクでお馴染みのマーク・ラファロ『インクレディブル・ハルク』以来の出演となるティム・ロス、現「至高の魔術師」ことウォンを演じるベネディクト・ウォン、他様々なキャストが共演した。

「法廷コメディ」×「ヒーロー」というあまりにも異色すぎるジャンルを持つ今作。ハルクと同等、或いはそれ以上のパワーを持つシーハルクのアクションを見たいところではあるが、あくまで主なジャンルはコメディとなる。

ヒーローに敗れたことで刑務所に収監されていたヴィランたちの弁護、コスチュームが破壊されたことによる訴訟、ヒーロー名の商標権を巡る裁判など、様々な展開が矢継ぎ早に繰り広げられる。

そのどれもがクスリと笑えるようなものたちばかりであり、またMCUの世界観が新たなる切り口で解剖されていくのはファンとしても嬉しいところ。

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そして今作の主人公であるジェニファー・ウォルターズには、他のMCUの主人公たちとは一線を画す特徴を持つ………それは「第四の壁」を超えることができるというものだ。

「物語」という壁を越えて視聴者や製作陣に語り掛けることができる、というこの特徴は「某俺ちゃん」専売特許とも呼べる設定だったが、彼女がマーベル史上二番目の「第四の壁」の使い手となった。

こうした「MCU作品で第四の壁を超える」という試みは、ヒーロー法廷コメディというジャンルと合わさって非常に新鮮味に満ち溢れている………が、惜しくもそれは今作の低評価に直結する形となってしまった。

同じく第四の壁を超えることのできるキャラクターである「デッドプール」は、第四の壁越えをあくまでもコメディのアクセントの一つとして利用していた。

だが今作では(特に終盤にて)この手法が大々的に利用されてしまい、挙句の果てには物語の顛末に直接影響するようになってしまった。簡単に言えば「やりすぎた」のである。

第四の壁の設定をアクセント程度に収め、ヒーロー×法廷コメディという斬新なジャンルにもっとフォーカスを当てていれば、普通に高評価を得ていた作品となっていただろう。

大バッシングを受けた今、果たしてジェニファーは再びMCUの作品にその姿を現すことができるのだろうか………今後の続報を待つとしよう。

あとがき(まとめ)

最近思ったんですよ。このブログ、「水綿の映画鑑賞録」なんて名前にしてるけど、言うほど「鑑賞録」してるかという。

初期の頃は最新の映画をレビューするなんていうスタイルを取ってましたけど、もう今じゃシリーズモノの解説記事ばっかり書いてるじゃないですか。全くもって「鑑賞録」してないわけですよこのブログでは。

まぁネタバラシをするとフィルマークスの方でしっかり「鑑賞録」してるんですけど。兎にも角にもブログの名前とその内容が乖離しているのは由々しき事態だなと思いまして。

そんなわけでいつかブログの名前とか変えようかなと思います。奇しくも(?)まだ無名のブログなのでね。

というかこの記事の仕上げ作業してる時にふと思ったんですが、いっそのことブログ大改造計画を施行しても良いんじゃないかと。文字の書き方変えたり名前変えたりサイトのUI変えたり。

いつかブログが休業期間に入るかもしれません。まぁこの投稿頻度じゃ常に休業しているようなものですが………

ちなみに何故急にそんなことを思ったのかというと、この記事に至っては「映画」ですらなく「ドラマ」の解説じゃないですか。もう内容がズレているどころの話じゃなくなってきてると思うんですよ。

まぁでもね。MCUを取り上げるならドラマシリーズにも触れておかなくちゃねってね。実際めちゃくちゃ重要だし。映画作品と比べると腰が重くなっちゃうのは死ぬほど分かりますが、とりあえず観てみて欲しい所存でございます。

と、いうわけで今回はこの辺で。1か月に1記事投稿という気まぐれにもほどがあるスタイルもいよいよ地についてきましたね。もっと別のところでついてほしいところですが………

それではまた、次の映画にて。