
「フェーズ3」とは
フェーズ1、フェーズ2と続いてきたMCUの伝説を締めくくる、「インフィニティ・サーガ」の終幕を飾りしフェーズ3。
フェーズ2と同様新たなるヒーローが多数登場するほか、BIG 3(アイアンマン、キャップ、ソー)をはじめとする常連のヒーローたちも勿論登場。
皆大好き「親愛なる隣人」の帰還や、アメコミ映画史上初のアカデミー作品賞ノミネート、そして映画史に名を残す大団円など、見所が盛り沢山。
MCUの長い歴史、そして作中に登場するヒーローたちにとって、間違いなく大きな転機となったであろう今フェーズ。壮大なる伝説の最高潮を、共に振り返っていくとしよう。
《フェーズ1の記事はこちら》
《フェーズ2の記事はこちら》
Rupture. 『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』
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『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』
("Captain America: Civil War")
あらすじ
今まで幾度となく世界を救ってきた、最強のヒーローチーム「アベンジャーズ」。だかそんな彼らに、大きな亀裂が走ることとなる………
ウルトロンとの戦いによって壊滅状態に陥ったソコヴィア。アベンジャーズは確かに世界を救ったが、ソコヴィアでは戦いの二次災害による多くの死傷者が出ていた。
「アベンジャーズとは、ただのヒーローを自称した自警団に過ぎない」と、世界中から批判を浴びるアベンジャーズ。この事態を収束するため、サディアス・ロスは「ある提案」を彼らに持ちかける。
アベンジャーズを国連の支配下に置き、国際法の元活動することを規定とする「ソコヴィア協定」を持ちかけられたアベンジャーズは、これに賛成するか否かで大いに悩まされることとなる。
苦悩の末にソコヴィア協定に署名することにしたアベンジャーズ。だが署名式が執り行われる筈だったウィーンの会場にて、大規模なテロ事件が発生してしまう。
テロの犯人は、かつてスティーブと死闘を繰り広げたバッキー・バーンズ/ウィンター・ソルジャー。彼は再び洗脳を受けており、スティーブはそんな彼を救おうと奔走していた。
ワカンダの国王であるテイ・チャカの死、国際指名手配犯となってしまったバッキー、そしてスティーブの協定からの離反………様々なことが重なり、アベンジャーズは遂に内部で分裂してしまう。
互いの正義がぶつかり合う、宿命の戦いが今始まる。
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作品概要
『〜ザ・ファースト・アベンジャー』『〜ウィンター・ソルジャー』に続く、『キャプテン・アメリカ』シリーズ3作目。
スティーブ・ロジャース/キャプテン・アメリカとバッキー・バーンズ/ウィンター・ソルジャーのストーリーが続く他、"Civil War"(内戦)のタイトル通りアベンジャーズの内部分裂が描かれる。
アンソニー・ルッソとジョー・ルッソのルッソ兄弟が監督を続投。『〜ウィンター・ソルジャー』に続き、またもMCUの歴史に名を轟かせることとなった。
アベンジャーズのメンバーが登場するということで、クリス・エヴァンスやセバスチャン・スタン以外にもロバート・ダウニー・Jr.やジェレミー・レナーなど大勢が出演した。
尚、アベンジャーズのスタメンであるソー(クリス・ヘムズワース)やブルース・バナー/ハルク(マーク・ラファロ)は今作では登場していない。
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世界に仇なすヴィランと戦うアベンジャーズ、しかしその傍で数々の一般人が戦いに巻き込まれていく。そんな彼らを顧みようともしない彼らは、果たして本当に「ヒーロー」なのか………
アメコミ映画、ひいてはアメコミという存在そのものにおいて当たり前の存在である「ヒーロー」の是非を問う、文字通りの「衝撃作」だ。
だがそれよりも印象的、かつ今作に更なる悲壮感を漂わせているのはやはり「アベンジャーズの分裂」。国連の提示した「ソコヴィア協定」により、アベンジャーズは内部で対立が生まれてしまう。
共に肩を並べて戦ってきたはずの仲間同士が、互いの信じる「正義」の相違により戦わなければならないという展開は、胸熱な部分もありつつやはりもの悲しさを覚えてしまう。
トニー・スターク/アイアンマン、スティーブ・ロジャース/キャプテン・アメリカ………分裂後、大きく対立することとなったのはよりによってリーダー格のこの2人。果たしてどちらを応援すれば良いのか………
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さてそんな穏やかじゃない今作、原作でも大人気な新たなるヒーローが満を持して登場している………しかも2人。
まず1人目はテイ・チャラ/ブラックパンサーだ。超文明大国ワカンダの国王であり、ヴィヴラニウム(キャップの盾と同じ金属)製の漆黒のスーツを身に纏い戦うヒーローである。
演じたのはチャドウィック・ボーズマン、ジャッキー・ロビンソンの自伝映画である『42 〜世界を変えた男〜』にて主演を務め、大きく評価を得た俳優だ。
父であるテイ・チャカを、ウィーンにて執り行われたソコヴィア協定の署名式にて勃発したテロにより喪い、その復讐のために今回の戦いへ参戦。トニーの陣営へと加勢した。
王としての毅然とした姿や、特殊な武器を用いず己の体術のみを駆使して戦う姿は非常に印象的であり、初登場の時点で大きく存在感を醸し出していた。
その好評さもあってか、2018年には単独映画が制作されている。
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そしてもう1人………我らが愛する「親愛なる隣人」こと、ピーター・パーカー/スパイダーマンが遂にMCUに参戦。演じたのはトム・ホランド。
スパイダーマンといえば、トビー・マグワイア主演の『スパイダーマン』やアンドリュー・ガーフィールド主演の『アメイジング・スパイダーマン』など、過去の映画作品の中でも特段高い人気を博していることで有名だ。
SONYとの権利問題でMARVELとモメる(詳細はここでは割愛)など紆余曲折を経て、ここにようやくMCUへの参戦が決定。
公開前も、予告編のラストにて登場し世界中が熱狂。2017年には単独映画が公開されるなど、スパイディへの熱は未だ冷めることを知らない。
「正義」と「正義」が衝突し、遂に分たれてしまったアベンジャーズ。ここから、彼らの運命は大きく動き出していくことになる………
Illusion.『ドクター・ストレンジ』
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『ドクター・ストレンジ』
("Doctor Strange")
あらすじ
ドクター・スティーヴン・ストレンジは高慢なる天才外科医だ。その技術とセンスはピカイチであり、他の追随を許さないほどの輝かしいキャリアを積み重ねていた。
しかしながら、そんな栄光の日々は一瞬にして崩れ去ってしまう………交通事故に遭ってしまったストレンジは両手を大きく怪我し、治療後も手に麻痺が残ってしまうようになる。
このまま手が完全に治らなければ、彼は天才外科医としてのキャリアを失ってしまう………恋人のクリスティーンから見限られ立ち去られようとも、彼は必死に手の治療法を模索し始めた。
だが世界中を探し回っても尚、治療法は見つからないまま………途方に暮れるストレンジは、修行によって下半身不随を治したという男の情報を頼りに、ネパールのカトマンズにある「カーマ・タージ」という場所を訪れる。
カーマ・タージは仏教系の修行場………に見せかけた、魔術師を育成する施設だった。「魔術など存在しない」と一蹴するストレンジに、「至高の魔術師」の称号を持つエンシェント・ワンは、彼を「魔術の世界」へ誘う。
無限の可能性、そして大いなる力を秘めた摩訶不思議なる「魔術」。後に偉大なる魔術師としてその才能を開花させることとなるストレンジは、深淵より来る闇の力に対抗すべく修行を積んでいくことになる。
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作品概要
MCUにおいて初となる「魔術師」のヒーロー、ドクター・ストレンジが主役の映画。
『フッテージ』などホラー映画の監督を務めたスコット・デリクソンがメガホンを取り、『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』のベネディクト・カンバーバッチが主演を務めた。
他にもレイチェル・マクアダムスやマッツ・ミケルセン、ティルダ・スウィントンなど著名な俳優が出演している。
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フェーズ1では『マイティ・ソー』が、フェーズ2では『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』が、それぞれMCUの世界観の広がりを見せてくれた。
輝かしい神々の世界、壮大にして広大なる宇宙の世界に続き、今作『ドクター・ストレンジ』にて眼前に広がるは摩訶不思議なる魔術の世界だ。
『インセプション』よろしくビルが収縮するような描写、その他奇想天外なる「魔術」の描写が非常に象徴的。
さらに今作の魔術の力は「多元宇宙」から得ているものであり、フェーズ3以降のMCUにおける重要な設定も随所に見受けられる。
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兎にも角にも映像の迫力で(良い意味で)ゴリ押してくる今作。映画館で鑑賞すれば、それはそれは目が凄いことになっていたことだろう。
そしてドクター・ストレンジの存在は、言わずもが
なMCUにとって非常に重要。彼なしでは成し得なかったことも、今後の作品において多々存在する。
神秘的にして、時として人を深淵へと引き摺り込む「魔術」の世界………くれぐれも病みつき注意だ。
Unity.『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス』
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『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス』
("Guardians of the Galaxy Vol.2")
あらすじ
ロナンの野望を阻止し、結果として銀河中に名を馳せることとなったガーディアンズ・オブ・ギャラクシー。
破天荒なアウトロー・チームに課せられた次のミッションは、ソヴリン星の重要な施設であるアニュラクス・バッテリーを怪獣から守ること。
ガーディアンズの見事な(?)連携により怪獣を打ち倒し、ソヴリン星の女王アイリーンから報酬を貰う一同。
だがそこで、メンバーの1人であるロケットが、ソヴリン星からアニュラクス・バッテリーを盗み出してしまう。このことはソヴリン星に筒抜けであり、ソヴリン星の艦隊がガーディアンズ一行を襲撃。
惑星ザンダーのノバ軍に勝るとも劣らない、圧倒的な軍事力を持つソヴリン軍に苦戦する一同。絶体絶命の危機に、突如として謎の宇宙船がガーディアンズの助太刀に入る。
不時着した惑星にて宇宙船から出てきたのは、自らを「エゴ」と名乗る男。なんと彼は「スター・ロード」ことピーター・クイルの父親なのだという。
再会を祝して、自分の星に一同を招待するエゴ。ピーターたちは半信半疑になりながらも、エゴの住む星に向かうが………
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作品概要
あのガーディアンズが帰ってきた。監督は前作に引き続きジェームズ・ガン、クリス・プラットやゾーイ・サルダナ、ブラッドリー・クーパーらが続投。
今回新たなキャストとして、カート・ラッセルやエリザベス・デビッキ、シルヴェスター・スタローンが出演した。
その怒涛の宇宙ドッグファイトはまさしくMCU版『スター・ウォーズ』、そこにおちゃらけた雰囲気が加わり独特のSFアクションとなった『GOTG』。
続編である今作もその雰囲気は健在であり、ゴキゲンなオープニングをはじめとする多くの部分が進化を遂げている。
他のMCU作品との繋がりは薄いものの、だからこそ生まれる作品単体としての面白さは他とは一線を画する。
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『GOTG』におけるテーマはタイトルによって様々だが、今作におけるテーマとは「家族」であろう。
ピーターにとって「本当の」父親であるエゴは、自分を攫った張本人であるヨンドゥに育てられた彼にとって衝撃的なものだ。
しかし親の愛を子に捧げることができず、更に自分の妻までも手にかけたエゴは、果たしてピーターの「真の父親」たりうるのか。
本当の「家族」、本当の「父親」とは、実はピーターのすぐ側にいたのである。その「温かさ」は、他の何物にも代え難い。
果たして今までのヒーロー映画において、ここまで心温まる作品はあっただろうか。そう思わざるを得ないほどにハートフルな、「仲間」にして「家族」であるガーディアンズの絆を感じ取れた作品だった。
Flesh.『スパイダーマン:ホームカミング』
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『スパイダーマン:ホームカミング』
("Spider-Man: Homecoming")
あらすじ
ピーター・パーカーはクイーンズに住む普通の高校生。しかしその正体は、クモの力を手に入れたヒーロー「スパイダーマン」。
トニーにスカウトされ、キャプテン・アメリカたちと戦いを繰り広げた後、彼はトニーが開発したスーツを着て毎日ヒーロー活動に勤しんでいた。
しかしトニーにとって、彼はまだまだ子供。アベンジャーズの一員としてではなく「親愛なる隣人」として、慎ましく近所の人々を助けてやれと言う。
自分の力をもっと発揮し、いつかトニーに認めてもらいたいと願うピーター。そんな中、彼はパトロール中に「ある事件」を嗅ぎ付ける。
人知れず、こそこそと「謎の兵器」を取引している集団を見つけたピーター。取引現場を阻止しようとするものの、今度は大きな機械の翼をもつ男「ヴァルチャー」からの妨害を食らってしまう。
このことを受けてピーターは事件の深刻性をトニーに訴えるが、トニーは聞く耳持たず。仕方なく彼は、許可を得ずに単独で事件の解決に臨むが………
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作品概要
『~シビル・ウォー』にて初登場を果たした、トム・ホランド演じるピーター・パーカー/スパイダーマンが、単独映画として満を持して登場。
監督は今後公開されるMCU版『スパイダーマン』三部作でも監督を務めるジョン・ワッツ。トム・ホランドの他にもゼンデイヤ、マイケル・キートンなどが出演した。
『~シビル・ウォー』の紹介でも少しだけ言及したが、スパイダーマンは他のヒーローと違い簡単には映画に出演できない複雑な事情を持つヒーロー。
過去にSONYのもとで制作された作品があったということもあり、MCUへの参戦は長らくお預けとなっていたが………ここにようやく、MCUでの『スパイダーマン』単独映画が実現したのだ。
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従来のスパイダーマン映画では「ピーターがクモに噛まれる→スパイダーマンとしてヴィランと戦う」というお決まりの流れが存在する。
しかしながら今作では「ピーターがクモに噛まれる」という流れを省略。こうすることでスピーディーにスパイダーマンとしての活躍をお目にかかれることができる。
またピーターは、これまでの作品では丁度高校生から大学生になる時期を中心に物語が展開されているが、今作(及び次回作)では未だにフレッシュな高校生。
まだまだピーターも「大人」とは程遠い存在であり、その若さゆえに作中では目を瞑りたくなるようなことを色々とやらかしてしまう。
しかしながらこうした「未熟なスパイダーマン」は従来のタイトルではあまりフォーカスされてこなかった部分であり、故に新鮮さが強く際立っているのだ。
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『スパイダーマン』にとって最も重要なテーマ、それはかつてベンおじさんがピーターに送った言葉………という名の「呪い」に等しい「大いなる力には大いなる責任が伴う」。
どれだけピーターが未熟であろうとも、スパイダーマンとしての力や使命はいつだってついて回る。それが例え、直視し難いほどの苦しみを伴おうとも。
あまりにもフレッシュすぎるピーターであるがゆえに、こうした決断を「子供」に下させるのは非常に酷な話であると気づかされる。
サム・ライミ版とも、マーク・ウェブ版とも異なる、今までにないような『スパイダーマン』映画にして、新たなる「親愛なる隣人」の物語の幕開けである。
Rebuild.『マイティ・ソー バトルロイヤル』
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『マイティ・ソー バトルロイヤル』
("Thor: Ragnarok")
あらすじ
自由奔放な、アスガルドの「雷神」ソー・オーディンソン。ウルトロンとの戦いの後、一人アベンジャーズを離れ、宇宙の彼方に散らばる「インフィニティ・ストーン」を探し求めていた。
旅のついでに、アスガルドを滅ぼすとされる炎の化身・スルトを打ち倒した彼はアスガルドに帰還。しかしそこには、アスガルドの主神オーディン………
に化けた、死んだと思われていたソーの弟・ロキがいた。ソーがロキを問い詰めたところ、オーディンは今地球に身を置いているという。
現「至高の魔術師」であるドクター・ストレンジの手を借り、遂にオーディンの所在を突き止める二人。だがそこには余命僅かの、かつての主神の力を失いつつあるオーディンがいた。
オーディンは二人に告げる………「死の女神」ヘラが復活すると。オーディンはそう言って消滅し、突如として異次元空間から「死の女神」にしてソーの姉であるヘラが降臨する。
彼女の力は圧倒的であり、ソーの武器であるムジョルニアを用いても無傷。それどころか、ムジョルニアを片手で受け止めそのまま握り潰してしまった。
成す術なしの二人はビフレストで間一髪逃れるが、ヘラの追撃によりソーは別の空間へと飛ばされてしまう。ヘラはアスガルドへと足を運び、アスガルドのみならず九つの世界全てを支配せんと動き出す。
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作品概要
キャップ、アイアンマンと並ぶ「BIG3」の一角、マイティ・ソーからも3作目が登場。
監督は後に『ジョジョ・ラビット』などを手掛けるタイカ・ワイティティ。クリス・ヘムズワースなど大勢が続投し、今作のヴィランであるヘラ役としてケイト・ブランシェットが出演した。
前作『~ダーク・ワールド』が若干不評だったせいか、今作から作風がガラリと一変。ソーの破天荒な性格に合わさるように、コメディ調が増したかのような作風へと進化した。
この試みは見事に成功し、『マイティ・ソー』前二作と比べ格段に評価が上がっている。
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さて、今作の原題は『Thor: Ragnarok』。何故か邦題では『~バトルロイヤル』となっているが、「ラグナロク」とは北欧神話において非常に重要なワードである。
ラグナロクとは即ち「世界の終末」。神々が壮絶なる戦いを繰り広げ、最終的には炎の化身スルトが世界を完全に破壊し、朽ちた世界は再び生まれ変わる………というもの。
(もうここで半ばネタバレとなってしまうが)今作ではアスガルドが滅びの危機に瀕してしまう。あの美しき神々の国・アスガルドが灰燼と化してしまうのだ。
しかしだからこそ、今作は『マイティ・ソー』シリーズにおいて重要な意味を持つ。主神オーディンの亡き今、その血と遺志を受け継いだソーは、アスガルドの新たなる王としてどんな選択をするのか。
今まではやりたい放題やっていたソーが、ここにきてアスガルドを導く者としての決断を迫られるのである………
と、内容的にはシリアス極まりないが、先述したように今作の作風は非常にファンキー。神も国もいないのなら好き勝手やってやろうじゃないか!!という気概に満ち溢れた作品だ。
鑑賞後、しばらくはレッド・ツェッペリンの『移民の歌』が頭から離れなくなることだろう。
Will.『ブラックパンサー』
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『ブラックパンサー』
("Black Panther")
あらすじ
超文明大国ワカンダは、「ヴィブラニウム」と呼ばれる、大昔に落ちてきた隕石に含まれていた特殊な鉱石をもとに、密かに発展を遂げてきた。
ワカンダ王国の王子にして、漆黒のスーツを身に纏うヒーロー「ブラックパンサー」であるテイ・チャラは、亡き父テイ・チャカの王位を継ぎ、ワカンダの国王となった。
王を迎え、歓喜に沸くワカンダ。だがそこへ、新たなる脅威がワカンダを訪れる。
「死の商人」の仇名を持つ「キルモンガー」ことエリックは、テイ・チャカがかつてその手で屠った弟・ウンジョブの息子だった。テイ・チャラと同じく王位継承権を持つエリックは、テイ・チャラに挑戦を申し込む。
元アメリカの工作員である傭兵のエリックはテイ・チャラを圧倒し、勝利。かくしてワカンダに再び新たなる王が生まれた。
しかし、エリックの真の目的とはワカンダの発展した技術により製造された武器を世界中に流出させ、アフリカ系民族を差別や迫害から解放させることだった。
世界のありとあらゆる「闇の部分」から、文字通り身を隠すことで沈黙を保ってきたワカンダ。未だかつてない「転機」に、テイ・チャラが出した答えとは………。
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作品概要
スパイダーマンと同じく『~シビル・ウォー』にて初登場したテイ・チャラ/ブラックパンサーの単独映画が登場。
チャドウィック・ボーズマンが主演として登場し、ヴィランであるエリック・キルモンガー役としてマイケル・B・ジョーダンが出演した。
監督は『ロッキー』シリーズの続編『クリード チャンプを継ぐ男』で監督を務めたライアン・クーグラー。
今作はブラックパンサーの単独映画………であるのと同時に、アメコミ映画史ひいては映画史そのものにおいて大きく名を残したタイトルである。
公開当時は『アベンジャーズ』の全世界興行収入を一瞬で塗り替え、当時の全世界興行収入記録において9位を獲得した。
それだけではない。なんとアカデミー賞をノミネート・受賞するまでに至り、これはアメコミ映画において史上初の出来事となる。
作品賞でノミネートされ、作曲賞・美術賞・衣装デザイン賞の三部門を受賞した。まさに「快挙」と呼ぶに相応しい偉業である。
またキャストや製作陣に至るまでほとんどが黒人で構成されており、最早MCUという枠組みを超えた、異例中の異例の作品であると言える。
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話を戻して、今作におけるヒーロー「ブラックパンサー」は、『~シビル・ウォー』の時から更に強化された状態で登場する。
ヴィブラニウムで作られた軽量かつ非常に頑丈な漆黒のスーツと、鋼鉄をも切り裂く鋭利な爪に加え、「ダメージを吸収し衝撃波として放つ」という新たな機能が追加された。
颯爽と戦場を駆け抜け、お得意の接近戦で敵をなぎ倒し、カウンターの衝撃波で一掃する………その姿は漆黒のスーツと相まって非常にかっこいい。
そして今作のヴィラン、キルモンガーもまた、テイ・チャラと同じくスーツを着用して戦いに臨む。
このキルモンガーというヴィランが、実は歴代のMCUのヴィランたちの中でかなりの人気を博しているのである。
あらすじにある通り、キルモンガーがワカンダの国王となった理由はただ一つ「全てのアフリカ系民族を差別と迫害から救うこと」。
そのまま世界征服を企もうとしたことは確かに悪役らしいが、「差別と迫害を無くしたい」という理由自体ははどうも「悪」とは言い難い。
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ワカンダは、他国を大きく圧倒するほどの技術力を自国内での発展に留め、その姿を世界に表すことはなかった。
その軍事力をもってすれば、世界中の国全てを支配することなど容易い。ましてや貧困や紛争に喘ぐ国を救うことなど造作もないことだ。
それほどの力を持ちつつも、何故ワカンダはそうした国に手を差し伸べず、常に沈黙を保ち続けてきたのか。この他にも様々な理由を抱え、キルモンガーはワカンダへ怒りをむき出しにしているのである。
長らくワカンダを支えてきたテイ・チャカ亡き今、ワカンダの運命を握るは現国王のテイ・チャラ。
「変化」の瀬戸際に立たされたワカンダに、テイ・チャラはどういった決断を下すのか………そうした葛藤もまた、今作の醍醐味の一つであると言えるだろう。
























