シリーズ解説

Operation: "IMPOSSIBLE"『ミッション:インポッシブル』シリーズを一挙解説!!

2025年7月7日

『ミッション:インポッシブル』シリーズとは?

アクション映画における最もメジャーなジャンルの一つである「スパイアクション映画」

遂行が極めて困難、あるいはほぼ不可能な任務に挑み、様々な手を駆使して遂行していく。時には不測の事態が発生して緊迫な状況に陥ったり、時には強敵と戦いを繰り広げる………

「ジェームズ・ボンド」が主役の『007』シリーズなどに代表されるジャンルだが、そんなボンドと肩を並べるほどの知名度と人気を誇るシリーズが存在する。それこそが『ミッション:インポッシブル』シリーズだ。

長らく主演を務めているのは、ハリウッドの大スターことトム・クルーズ。IMFのエージェント「イーサン・ハント」として、世界中の「達成不可能」なミッションに挑み続ける。

そして本シリーズは、数多くの著名な巨匠たちが監督を務めている。『アンタッチャブル』ブライアン・デ・パルマ『フェイス/オフ』ジョン・ウー『スタートレック』J・J・エイブラムスなど様々。

1996年に第1作目が公開され、2025年現在までに8作品が制作された。どの作品も概ね高評価を得ており、シリーズ全体で35億ドルもの興行収入を叩き出している。

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また今作の魅力として、トム・クルーズによる生身のスタントアクションが挙げられる。各作品で象徴的に描かれている危険なアクションシーンを、普通はスタントマンに任せるところをトムは彼自身で行ってしまう。

ワイヤー1本で地面スレスレまで接近する、生身でロッククライミング、挙句の果てには飛行機に生身でしがみ付く………彼が行ってきた、文字通り「不可能」なアクションは挙げだしたらキリがない。

だがそれが、本シリーズをただのアクション映画シリーズに留まらない最大の理由ともいえる。命を懸けた撮影だからこそ生まれる臨場感は、決してCGやVFXの合成などでは作り出せない。

国や世界そのものの存亡をかけた、壮大なるミッションに挑む彼らの姿を刮目せよ。

完全予測不可能。『ミッション:インポッシブル』

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『ミッション:インポッシブル』

("Mission: Impossible")

作品概要

CIAの極秘部隊「IMF(Impossible Mission Force)」のエージェントであるジム・フェルプスは、飛行機内でIMFからの極秘指令を受け取る。

CIAに所属する、非公式のエージェントたちの名前が記された名簿「NOCリスト」。このリストを、プラハのアメリカ大使館職員よりも先に奪取するという任務だった。

早速メンバーを招集し、任務を開始するフェルプス。順調に任務は進んでいき、このまま難なく成功する………かのように思われたが、突如として謎の襲撃者が現れ、フェルプスのチームメンバーが次々と殺害されていってしまう。

リーダーのフェルプスも殺害され、ただ1人生き残った若きエージェントであるイーサン・ハントは、今回の任務の監督役であるキトリッジに援助を要請する。

だがキトリッジは、今回の任務の目的とはNOCリストを盗み出すことではなく、IMFに紛れ込んだ裏切り者を炙り出すためだったということをイーサンに告げる。

かくして1人生き残ったが故に裏切り者であると疑いをかけられたイーサンはキトリッジのもとから逃走し、事の真相を暴くべく単独で行動をし始めるが………

あらすじ

シリーズ一作目。今作の時点で既に大ヒットを記録しており、1996年公開映画の興行成績において3位に躍り出た。

監督は『スカーフェイス』『アンタッチャブル』ブライアン・デ・パルマ。トム・クルーズが主演を務める他、プロデューサーも担当。デ・パルマを監督に引き入れたのも彼である。

後にシリーズの常連となるヴィング・レイムスや、『レオン』で主演を務めたジャン・レノも出演している。

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世界的スパイアクション映画シリーズとして花開いていく『M:I』シリーズ。一方今作は、アクション映画というよりはミステリー映画、或いはサスペンス映画の側面が強い、と言えるかもしれない。

任務の裏に隠されていた任務、真の黒幕の存在、他様々な要素が絡み合い、観客は良い意味で混乱する。完璧に「予測不可能」な展開が続く、そんな映画体験を味わうことができるのだ。

だが、後に続く続編のような目新しいアクション要素もまた魅力的。イーサンが地面スレスレまでワイヤーで吊るされるシーンや、列車の上での戦闘シーンは他のタイトルにも負けないほどの緊張感と迫力がある。

総じて、今作はおよそ30年前の作品とは到底思えないほどの完成度を誇っている。シリーズ、もといスパイ映画の最高傑作として、今作を挙げる人も決して少なくないだろう。

「不可能」を駆け抜けろ。『ミッション:インポッシブル2』

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『ミッション:インポッシブル2』

("Mission: Impossible 2")

あらすじ

IMFから許可を得て、しばらく休暇をとっていたイーサンは、またもやIMFからミッションの指令を受ける………

バイオサイト製薬にて作られた「キメラウイルス」は、ひとたび感染すれば死は免れないほどの致死量を持つウイルス。

イーサンに課された任務とは、そんなキメラウイルスを奪い去ったIMFエージェントであるアンブローズから、治療薬「ベレロフォン」と共にウイルスを奪い返せというものだった。

だがアンブローズは、イーサンの替え玉として活躍するなどエージェントとして類稀なる実力を持つ。アンブローズを出し抜くため、IMFは彼の元恋人であるナイアをチームに引き込むことを提案する。

IMF以外の人間をミッションに参加させることを躊躇うイーサンだったが、やむを得ずナイアをアンブローズの元へ送り込み、潜入させることに成功する。

彼の動向を探るうち、アンブローズの目的とはキメラウイルスを街中にばら撒くことでパンデミックを発生させ、バイオサイト製薬と結託し儲けを得ようとしていることが判明した。

これを知ったイーサンはバイオサイト製薬の本社に潜入しキメラウイルスを破壊しようと目論むが、アンブローズに先を読まれたことで失敗。そこでナイアは、窮地に陥ったイーサンを救うためウイルスを自身に投与してしまう。

アンブローズの野望を阻止するため、そしてナイアを救うため、イーサンは再び「達成不可能」の任務へと身を投じることになる。

作品概要

シリーズ二作目。監督はブライアン・デ・パルマから、『フェイス/オフ』などのアクション映画で有名なジョン・ウーに交代した。

主演のトム・クルーズの他、天才ハッカーのルーサー役であるヴィング・レイムスが続投。『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』でトムと共演したダンディ・ニュートンがヒロインとして出演した。

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「ヒッチコックの後継者」ことデ・パルマ監督による、斬新な表現技法が多く用いられたスパイアクション映画として名を轟かせた前作。

しかし今作は打って変わって、バイクチェイス銃撃戦近接格闘など、アクションシーンが多く盛り込まれている。前作同様、監督の味が強く押し出された作品に仕上がった。

その一方で、スパイアクション映画の続編として、スパイ要素をほぼほぼかなぐり捨ててアクション映画に振り切るのはどうなのか………という意見も少なくない。

だがご存じの通り『M:I』シリーズの醍醐味とは、トム自身がスタントを行って撮影されたド迫力のアクションシーンにある。特に近年の作品では、その要素が顕著に強い。

そう考えると、今作もまた『M:I』シリーズにおけるを築いたタイトルの一つと言えるのではなかろうか。デ・パルマなくしてスパイ要素なし、ジョン・ウーなくしてアクション要素なし、である。

愛と使命の間にて。『ミッション:インポッシブル3』

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『ミッション:インポッシブル3』

("Mission: Impossible III")

あらすじ

IMFのエージェントとして数々の困難なミッションをやり遂げてきたイーサンは、現役を退き教官として新人のエージェントを教育する傍ら、妻のジュリアと幸せな日々を送っていた。

そんな中、イーサンの教え子であるリンジーが、武器商人のデイヴィアンを監視する任務中に拉致されたという情報を得る。

再び現場に戻ることを躊躇うイーサンだったが、何とかジュリアを説得し任務に出動。壮絶な戦闘の末にリンジーを救出することに成功するが、彼女の頭の中に小型爆弾が埋め込まれており、解除に間に合わずリンジーは死亡してしまう。

愛する教え子を救えなかったことにイーサンは悲嘆に暮れるが、リンジーが囚われていた廃工場から持ち帰った端末から、デイヴィアンの目的とは「ラビットフット」なる謎の物体であることが判明する。

さらにリンジーがイーサンに託したファイルから、デイヴィアンはIMF局長ブラッセルと結託していたことも判明する。

デイヴィアンの野望を阻止し真相を暴くため、イーサンはチームを結成しバチカンにてデイヴィアンを拉致することに成功するが、彼の護送中に彼の部下が護送車を襲撃し逃亡を許してしまう。

加えてデイヴィアンは、イーサンに妻がいることを見抜きジュリアを拉致。48時間以内にラビットフットを手に入れ渡さなければ、ジュリアを殺すと脅迫する。

平和の最中、突如として訪れたイーサン最大の危機。未だかつてない「遂行不可能」なミッションが幕を開ける。

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作品概要

シリーズ3作目。『アルマゲドン』脚本や、後に『スタートレック』の監督を務めるJ・J・エイブラムスが監督に抜擢された。

トム・クルーズ、ヴィング・レイムスの2人は変わらず続投し、新たにローレンス・フィッシュバーンや、後に常連キャストとなるサイモン・ペッグも出演している。

ストーリー構成が原作である『スパイ大作戦』のようなチームワークを重視したものに変わり、またアクション方面においても高い評価を得たが、1作目及び2作目の興行収入には届かなかった。

1作目では正統派にしてスタイリッシュなスパイ映画、2作目では疾走感溢れるパワフルなアクション映画として、それぞれ強い人気を博していた本シリーズ。

3作目である今作は、愛する妻が危険に晒され、焦りに駆られている上でシリーズ最難関ともいえるミッションに挑む、そんな人間味に溢れたイーサンが活躍する姿が描かれる。

また1作目の醍醐味でもあった、誰が味方で誰が黒幕なのかわからなくなるという展開も今作で復活。これにより作品全体に強い緊迫感が生まれ、文字通り手に汗握る展開が繰り広げられる。

果てなき不可能は、更なる高みへ。『ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル』

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『ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル』

("Mission: Impossible - Ghost Protocol")

あらすじ

IMFのエージェントであるハナウェイは、「コバルト」と名乗る人物から秘密ファイルを奪うために任務へついていたが、殺し屋サビーヌの手によって殺害されてしまう。

敵の手にファイルが奪われてしまったことで、IMFはエージェントであるジェーンベンジーに、モスクワの刑務所にて服役していたイーサンを脱獄させる。

イーサンは、最愛の妻であるジュリアが殺され、その復讐で犯人らを殺害したことにより、刑務所に入れられていた。

「コバルト」と名乗る人物が何者なのかを探るため、イーサンらはロシアのクレムリンへと潜入。順調に任務を進めていたイーサンたちだったが、突如クレムリンが大爆発を起こし、イーサンはそれに巻き込まれてしまう。

やがて病院で目を覚ましたイーサンは、病院から脱走しIMFからの救助を求める。しかしながらロシア政府はクレムリン爆破事件をアメリカの手によるものだと断定したことで、アメリカ政府はIMFを解体する指令「ゴースト・プロトコル」を発令していた。

かくしてアメリカ政府およびIMFの援助を一切借りずに任務を遂行することになってしまったイーサンは、ジェーンとベンジー、そしてIMFの分析官兼諜報員であるブラントとチームを組み任務に臨む。

ベンジーらが得た情報によると、「コバルト」の正体とは過激な思想を持つ核戦争論者ヘンドリクスであり、またハナウェイがサビーヌに奪われたファイルとは核ミサイルの発射コードだったことが判明。

ヘンドリクスとサビーヌの2人が、ドバイの超高層ビルであるブルジュ・ハリファにて取引をするという情報をつかんだ一行は、ヘンドリクスとサビーヌの両方になりすまし偽の取引を行わせようと作戦を開始するが………

https://eiga.com/movie/55154/gallery/

作品概要

シリーズ4作目。『アイアン・ジャイアント』『Mr.インクレディブル』などのアニメ映画で有名なブラッド・バードが監督に就任。実写映画の監督を務めるのは、彼のキャリアではとなる。

今作から、ヴィング・レイムス扮するルーサーに代わり、サイモン・ペッグ演じるベンジー・ダンがハッカー担当として作戦に参加。またMCUのホークアイ役として知られるジェレミー・レナーも、IMF諜報員のブラント役として出演した。

新たなるメンバーがチームに参加、そしてイーサンもまた感情の起伏が少なく初代『M:I』を彷彿とさせるなど、シリーズの再出発的な意味合いが強く感じられる今作。

https://eiga.com/movie/55154/gallery/3/

そして今作から、『M:I』シリーズの十八番とも言えるトム・クルーズ自身が行うスタントアクションが本格的に過激になり出す。

今作最大の見どころである、ブルジュ・ハリファにてイーサンがビルの外壁を伝って直接登るシーン。一見CGを用いて撮影されたかと思いきや、まさかの本当にトムが外壁を登っているのだ。

初代の宙吊りや『2』の高速バイクアクション、『3』のビルから飛び降りるアクションも全てトムが行っており、どれも全て命に関わるほど危険なのだが、今作のものはやはり規模も危険度も桁違いすぎる。

だがしかし、CGを用いずに実際に危険なスタントを敢行して撮影を行う………そこから生まれる迫力リアリティさは、今も昔も変わらない。

もはや伝説的とも言える、トムによる「アクションの極致」は、やがて『M:I』シリーズ最大の醍醐味として変遷を遂げていったのである。

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