
『モンスター・バース』とは
特撮をはじめとする、数々の手法を以てして、今日まで多数の作品が作られてきた「怪獣映画」というジャンル。
米国では1933年に『キングコング』が公開され、たちまちヒット。一方日本でも、1955年に『ゴジラ』が公開され、大ヒットを記録した。
特に『ゴジラ』に関しては『VSシリーズ』などでライト層にも大きな人気を獲得し、その知名度はたちまち海を超え世界中にその名が知れ渡ることに。
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そして1998年、世界初のハリウッド版『ゴジラ』、その名も『GODZILLA』が誕生。監督は『インディペンデンス・デイ』のローランド・エメリッヒ。
しかしながら、ゴジラのデザインが国内版と大きく異なるなどの理由から大きくバッシングを受けることに。
それから15年後の2014年………二度目の正直となるハリウッド版ゴジラである『GODZILLA ゴジラ』が公開。
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それと同時に、東宝やワーナー・ブラザース、レジェンダリーから、同一の世界観を有するユニバース形式のシリーズ『モンスター・バース』を展開していくと発表。
2024年現在までに合計5本の映画が制作され、それと並行してアニメやドラマも同時に展開されている。
どの作品も全世界で公開され概ね高評価を得ており、興行成績も上々。今後の作品展開にも大いに期待できるシリーズとなっている。
超弩級のモンスターたちがド派手に戦いまくる、まさに新世代の「怪獣映画」。彼らにとって、我々人類など矮小な塵芥も同然。
圧倒的な力を以てして、地球の覇者として君臨せし「巨神」、その雄大にして偉大なる姿を共に見届けよう。
その日、人類は「彼」に屈した。『GODZILLA ゴジラ』
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『GODZILLA ゴジラ』
(”Godzilla”)
あらすじ
1999年、フィリピンの炭鉱崩落事故を調査していた芹沢博士は、巨大生物の化石とそれに寄生しているかのような巨大な繭を発見する。
だが既に繭は破られ、近くには繭から誕生したと思しき「何か」が、洞窟の外に這い出たかのような痕跡が残されていた。
それから15年後………謎の巨大地震により妻を失ったジョー・ブロディは、妻の死の真相を探るべく息子のフォードと共に日本の原発跡地を探索していた。
だが2人は、跡地を巡回していた武装集団に拉致されてしまう。連れて行かれた先は、「モナーク」と自称する集団の研究施設だった。
モナークとは、世界各地に密かに点在する巨大生物たち、通称「タイタン」を観察、及び研究する組織。芹沢博士もまた、モナークの一員である。
施設にはフィリピンのと同様の巨大な繭が聳え立っており、今まさに羽化の瞬間を迎えようとしていた。
羽化を迎えるや否や、施設を破壊し大空へと飛び立っていった謎の巨大生物。モナークはこのタイタンを「ムートー」と名付けた。
研究によれば、ムートーは放射線物質を主な主食とする生物。これまで起きた大地震も、ムートーが地下深くで放射線物質を狙ったことによるものだった。
程なくして人間の生活圏たる地上に降り立ち、放射線物質を求め破壊の限りを尽くすムートー。
だがそこへ、ムートーとは異なるもう一匹の巨大生物が迫ってきていることが発覚した。
太古の時代を生き抜いた最強のタイタンにして、地球の真の支配者。その名も………ゴジラ。
数十年ぶりに地上へ顕現したゴジラは、欲望のままに地球を喰らい尽くさんとするムートーへ戦いを挑むが………
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見所解説
シリーズ1作目として初陣を切ったのは、勿論我らがゴジラ。『ゴジラ』作品の通算としては、東宝版のと合わせると29作品目に該当する。
従来の特撮を用いた撮影ではなく、VFXとCGを活用して撮影された。そのため、劇中に登場するゴジラもフルCG。まさしくハリウッドならではのスタイルと言えよう。
監督には『モンスターズ/地球外生命体』にて多方面から絶賛されたギャレス・エドワーズが就任。後に『ローグ・ワン〜』や『ザ・クリエイター〜』を手がけることとなるSFの巨匠だ。
キャストには『アベンジャーズ:エイジ・オブ・ウルトロン』のアーロン・テイラー=ジョンソンやエリザベス・オルセン、そして芹沢博士役として渡辺謙が出演した。
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フルCGを以てして描かれた『ゴジラ』、ということで当然ながら映像は迫力満点。街を容赦なく破壊するゴジラの姿は圧巻だ。
加えて敵怪獣であるムートーとの戦いも繰り広げられるため、言わずもがな人間側の被害は絶大。往年のゴジラファンであれば「いいぞもっとやれ」と興奮必至となるところだ。
『2001年宇宙の旅』にも使用された不気味な音楽が流れるなど、ゴジラを単なる怪獣としてではなく一種の「神」のような存在として描写している部分も。
しかしながら今作、1作目にして多くから批判の声が挙がった作品でもある。その最たる理由はズバリ………「画面が暗すぎる」ことだ。
今作1番の見せ所である、ゴジラvsムートーのシーン。両者の戦いが苛烈すぎるあまり、戦いの場であるサンフランシスコでは嵐のような異常気象が発生することに。
確かに、怪獣vs怪獣という人智を超えた戦いにはもってこいのシチュエーションだ………だがしかし、如何せん見えにくい。
画面が暗すぎるあまり、今ムートーとゴジラがどんな動きをしているのか非常にわかりづらく、かなり混乱してしまうのだ。
………とはいえ、その「暗さ」が全てマイナスの方向へ傾いているというわけではない。暗闇から徐々に見えてくる怪獣の巨躯………怪獣映画好きには堪らない構図だ。
そして何よりも、ゴジラの必殺技である「放射熱線」が非常に映えるのである。
尻尾が徐々に青く発光し「ヴォン………ヴォン………」とチャージ音が聞こえ、やがてゴジラの口から青い熱線が放たれて………という一連の流れは、正に最高の一言に尽きる。
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ゴジラが、人類の前に顕現した………それは即ちタイタン、神々の目覚め、そして人類が真の地球の覇者とは誰かを知った、その瞬間でもある。
仇敵を倒した後でも、人類には目をも向けず、ただ咆哮を轟かせ、海へ帰るゴジラ。それはまるで、新たなる時代の到来を告げているかのようだ。
冒険、所により、怪物。『キングコング:髑髏島の巨神』
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『キングコング:髑髏島の巨神』
(”Kong: Skull Island")
あらすじ
1973年。アメリカがベトナム戦争からの撤退を宣言したその日、モナークのメンバーであるランダが、ある前人未到の謎の島への調査へ乗り出す。
ランダは、ベトナムから帰還予定だったパッカード大佐らを護衛として引き入れ、さらに島のガイド役として元英国軍人であるコンラッドも雇い入れる。
カメラマンのウィーバーもメンバーに加わり、一同は謎の島………通称「髑髏島」へ足を踏み入れることに。
嵐を抜け、髑髏島に入るや否や地質調査の名目で爆弾を投下し始めるヘリ部隊。島を火の海にする一同の元へ、歓迎の印として飛んできたのは………一本の巨木。
呆気なく撃墜されるヘリを尻目に、一同が目にしたのは………夕陽に照らされる、一匹の巨大な大猿だった。
髑髏島の支配者たる存在「コング」は、島を荒らされた怒りからヘリ部隊を襲撃。ヘリは全滅し、僅かなメンバーのみが生き残った。
想像以上の脅威が潜んでいることを知ったコンラッドは、今すぐにでも島から脱出することを提案。
だが、数多くのベトナム戦争の戦友を失ったパッカード大佐は、その怒りからコングに復讐しようと試みる。
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見所解説
ゴジラが日本を代表する「怪獣」であれば、コイツはアメリカを代表する「モンスター」だ。
今作は、髑髏島に侵入した愚かなる人類共にコングが制裁を下す、超・王道のモンスターパニック映画だ。
『キングス・オブ・サマー』にて鮮烈なデビューを果たしたジョーダン・ヴォート=ロバーツが監督を務め、
キャスト陣にはトム・ヒドルストン、サミュエル・L・ジャクソン、ブリー・ラーソンらMCUなどにおいて著名な俳優たちが集結した。
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『LotR』のピーター・ジャクソンによる、2005年公開『キング・コング』以来の『キングコング』が、モンスター・バースの2作目として満を持して登場。
『キングコング』といえば、言うなればコングに攫われた女性とコングが徐々に心を通わせていく、一種のラブロマンス的な展開が特徴的である。
だがそれと同時に特徴的なのが、世にも恐ろしいモンスターたち。髑髏島の脅威とは、決してコングだけではないのだ。
ピーター・ジャクソン版『キング・コング』でも、数多くのモンスターが調査隊たちを蹂躙。
そんな中、今作『〜髑髏島の巨神』はコングとのロマンス的要素を廃し、モンスターパニック映画としての側面を大きく強化している。
池に潜む巨大なタコ。竹林に潜む巨大な蜘蛛。巨木に擬態する巨大な水牛に、そんなモンスターたちと共生する原住民………そしてコングの宿敵、スカル・クローラー。
抵抗虚しくその命を散らしていく隊員たちの姿は、実に恐ろしく同時に清々しい。怪物たちの前では人類なぞ塵も同然………これぞまさに「モンスターパニック」のあるべき姿である。
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だがその一方で、終盤ではコングとスカル・クローラーの一騎討ちが展開され、一気に「モンスターバース」としての特色が強めに。
両者のサイズは『GODZILLA ゴジラ』のゴジラとムートーよりかはやや小さめなものの、やはりモンスター同士の戦いは迫力大満点。非常に胸熱な展開となっている。
凶悪かつ狡猾なスカル・クローラーに、巨木や鎖、そして己の拳で立ち向かうコングの姿は凄まじくカッコイイ。いわば怪獣界のイケおじだ。
実に90年以上にも及ぶ『キングコング』の歴史を塗り替える、歴代タイトルの中でも異質かつ斬新な一本と言えるかもしれない。
The Rises of "KING".『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』
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『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』
(”Godzilla: King of the Monsters”)
あらすじ
ゴジラがムートーを撃破し、超巨大生物「タイタン」の存在が世に知れ渡ってから、5年が経過。
当時は政府の秘密裏に活動していたモナークの存在が公になり、それに伴うかのように今まで地球に眠っていたタイタンたちが一気に活性化。
一方その頃、モナークに所属する科学者エマ・ラッセルは、娘のマディソンと共に中国のモナーク第61前哨基地に向かっていた。
基地に眠るは「怪獣の女王」と称されるタイタン「モスラ」の巨大な繭。エマらが到着する頃には、繭が破られ鵜化寸前の状態だった。
眩い光と共に誕生した幼虫のモスラは、武装したモナークの職員を見てパニックに。だがエマの開発したタイタンの制御装置「オルカ」により、暴走を抑えることに成功する。
だが安息も束の間、アラン・ジョナ率いる環境テロリスト集団が基地を襲撃。エマとマディソンは誘拐され、オルカは強奪されてしまう。
一同が向かう先は南極大陸………氷漬けにされた、宇宙より飛来せしタイタン「モンスター・ゼロ」の眠る地。
テロリストの目的とはモンスター・ゼロを復活させることであり、エマは渋りながらもオルカを起動。
こうして長年の封印から解き放たれたモンスター・ゼロ………通称「ギドラ」は基地を破壊し始める。
だがそれと同時に、ギドラの復活を察知したゴジラも出現。放射熱線と引力光線を散らしながら、両者は激しく激突することに。
果たして地球を真に支配する「王」とは誰なのか。神と神がぶつかり合う、壮絶なる「神話」が今、幕を開ける。
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見所解説
モンスターバース3作目にして『GODZILLA ゴジラ』の続編。副題の『〜キング・オブ・モンスターズ』は、1954年公開の初代『ゴジラ』の英題が元ネタ。
監督にはギャレス・エドワーズから代わり、ブライアン・シンガー監督作『X-MEN2』や『スーパーマン リターンズ』の脚本を執筆したマイケル・ドハティが就任した。
キャスト陣に関しては、渡辺謙が前作に引き続き続投した他、カイル・チャンドラーやミリー・ボビー・ブラウンらが新たに出演している。
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今作、何といっても我らがゴジラに加え、キングギドラ・モスラ・ラドンなど、『VSシリーズ』でお馴染みの怪獣たちが登場。遂にゴジラ以外の特撮怪獣がハリウッドデビューを果たした。
ハリウッドの卓越したCGを以てして描かれる怪獣、もといタイタンたちの姿は美麗かつ圧巻。特撮のとはまた異なる迫力を持ち合わせている。
『VSシリーズ』においても、数々の作品で死闘を繰り広げてきた彼らが、今度はハリウッドを舞台に激突………ともすれば、その戦いは到底人類の手には負えないのは言うまでもない。
彼らがぶつかり合う度に、天は轟き、地は揺れ、世界は破壊し尽くされる………まさしく「神話」の戦いそのものである。
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また、今作は実に多くの『ゴジラ』シリーズのオマージュが盛り込まれているのも特徴的だ。
伊福部昭による『ゴジラのテーマ』が流れるなど、東宝版『ゴジラ』に関する様々な要素が追加されている。往年のゴジラファンなら大興奮間違いなしだ。
しかしなぜ、ここまで豪勢な映画に仕上がっているのか………その豪華絢爛っぷりは、東宝版のシリーズを含めても歴代最高レベルだ。
今作が公開された2019年は、ゴジラ生誕65周年。歴代のシリーズの中でも節目に相当する年である為………という見方も取れなくはない。
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だが真の理由はまた別にある………それはズバリ「監督が生粋のゴジラオタクだから」だ。
ゴジラをいちキャラクターとしてではなく「神」に等しい存在として崇めるという、筋金入りのゴジラオタクであるマイケル・ドハティ監督。
そんな彼がゴジラ映画のメガホンを取るとどうなるか………結果は火を見るより明らか。監督がやりたい放題する映画の完成である。
だがこの豪華さの割には、興行的にあまり振るわなかった模様。同時期に公開された映画が『アベンジャーズ/エンドゲーム』に『アラジン』と、あまりにも相手が悪すぎたというのもあるが。
筆者的にはダントツで『〜エンドゲーム』よりも面白かったと記憶している。あの興奮をもう一度、映画館で味わいたいものだ………