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『グランツーリスモ』
(”Gran Turismo”)
作品概要
日本原作、SONY発祥の世界的なレーシングゲーム『グランツーリスモ(※)』が、ハリウッドにて映画化。
※山内典一氏が開発した、実際のレーシングカーを細部に至るまで再現しゲームに落とし込んだ、数あるレースゲームの金字塔的作品。
「『グランツーリスモ』の凄腕プレイヤーが実際のプロレーサーになる」などというぶっ飛んだ話ではあるが、何と実話。
「ヤン・マーデンボロー」という実在の人物が元ネタであり、更に当の本人はカーアクションのスタントとして参加。生みの親である山内典一氏もカメオ出演している。
その一方で、監督は意外にも『エリジウム』や『第9地区』などを手がけてきたニール・ブロムカンプ。今作が、彼の従来の作品とは雰囲気が大きく異なるのは一目瞭然。
決して輝かしいとは言い難い暗めな作風から、一気に輝かしさに満ち溢れた明るい作風へと変貌。今までにないような「変化」に、思わず胸が踊る。
他にも『バイオレント・ナイト』のデヴィッド・ハーバー、『LotR』のオーランド・ブルームらが出演。主演のアーチー・マデクウィは意外にも『ミッドサマー』に出演。
喜びと苦難に満ちた「夢」への道、それはまるで一本のサーキット。何があろうとも走り抜けろ………ただ一つの「ゴールライン」へと向かって。
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あらすじ
ヤン・マーデンボローはレースゲーム『グランツーリスモ』の凄腕プレイヤー。強者相手に日々連勝を重ねる、その実力は折り紙つきだ。
いつか本物のプロレーサーになることを夢見る彼だが、両親からは「現実を見ろ」と苦言を呈されていた。
そんなある日、ヤンは「あるプロジェクト」の招待を受ける………『グランツーリスモ』のトッププレイヤーたちを招集しプロレーサーへと育成する、通称「GTアカデミー」だ。
見事最終予選を突破し、世界で10人しかいないアカデミーの一員となったヤン。彼の夢は一歩、現実へと近づいたのだ。
しかしながら、プロレーサーになることは、当然ながら決して容易なことではない。
ただボタンを押して運転するのと、実際にアクセルを踏み込んで運転するのとでは雲泥の差があり、夢と現実のギャップに大きく苦しめられることとなる。
あまりにも過酷すぎる「夢」への道、だがそれでもヤンは諦めない………例えそれが茨の道だと知っていても。
アクセルを踏み込め。エンジンをふかせ。栄えある「夢」へと達するために。
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見所解説①心臓震わす、ド迫力のカーレース・シーン。
レースを題材とする映画において、当然ながらカーレースは必要不可欠となる。
超高速度で走り抜き、時に車体をぶつけ合いながらトップを競う、文字通り「火花散る」熾烈なる戦い。
『ワイルド・スピード』『フォードvsフェラーリ』など、歴代のカーレース映画においてその伝統は引き継がれてきた。
そんな超高速の世界において光るのは、わずか1秒にも満たない数々の「瞬間」たちである。
それは車を起動する「瞬間」であったり、順位を抜かす「瞬間」であったり、ゴールに達する「瞬間」であったり………
そんな「瞬間の連続」こそが、カーレース映画をカーレース映画たらしめる要素なのだ。
今作『グランツーリスモ』は、そんなありとあらゆる「瞬間」に満ちた、究極のカーレース映画だったと言える。
開始1分も経たずして閑静なる劇場に響き渡るエンジンの重低音、そこから続く怒涛のレースシーン。映像に度肝を抜かれるとは正にこの事。
極め付けはレーシングカーが発車する際の「G(重力加速度)」だ。レーサーはこの圧倒的な負荷に長時間耐え、尚且つ運転中に的確な判断を下さなければならない。
尚、ドライバーにかかる「G」は3.5G………その数値はスペースシャトルの発射に匹敵する。
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かの『トップガン マーヴェリック』でもそうだったように、この「G」は蚊帳の外にいるはずの我々観客にも強く伝わってくる。
強い負荷によってレーサーの顔が歪み、車内が超高温度に包まれ………それでも尚、レーサーは勝利のために車を走らせなければならない。
時速200kmを優に超える、過酷な超速の世界から紡ぎ出される疾走感と重圧感を体感できる………何と凄まじいパワーを持つ映画なのだろう。
見所解説②「たかがゲーマー、されどゲーマー」仮想と現実の融合。
今作が従来のカーレース映画と異なる点として、第一に挙げられるのがやはり『グランツーリスモ』という「原作」の存在。
先述した通り、原作は日本だがその人気は海外でも破竹の勢いだ。
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当然「ゲームにて最強の座をほしいままにした男が、実際のレースに挑戦する」というストーリーであるが故に「ゲーム」と「レース」の繋がりは必要不可欠だ。
だがしかし、そこも抜かりなく描いてみせているのもまた今作の併せ持つ唯一無二の特色だ。
レース中に入り乱れるレースカーたちの内、どれが誰の車なのか名前を車上に明記したり。
視点がドライバーの目線、つまり実際のゲーム内の画面に入れ替わったり。
ゲーム内での運転席が実際の運転席へと変形していく、そういった「メカ描写」もニール監督特有のエッセンスなのかなと思ったり。
そして何よりも、ゲーム内で培った経験が実際のレースに活きる、まさに奇跡というべき瞬間は外せない。
何千時間もゲームをプレイし染みついた「コースの攻略法」は、普通のレーサーでは手にすることができない類稀なる「才能」に他ならない。
まさに「たかがゲーマー、されどゲーマー」。これほどにパンチの効いた「下剋上」はそうそうないだろう。
見所解説③0.1%未満の可能性に賭けた、奇跡の成長物語。
今となっては最早、使い古されて久しい「夢を諦めない」という王道のテーマ、しかしながらこのテーマが持ち合わす「アツさ」はいつの時代も健在だ。
今作も同様のテーマを取り扱っているわけだが、やはり「王道」とはいつまでも色褪せないものだ。
「ゲーマーがプロのレーサーになる」………実話であるのは確かだが、どこか荒唐無稽な印象を受けるのもまた事実。
その成功確率は果たして如何程か。1%、或いはそれ未満………兎にも角にも、果てしなく0%に近い数値であることには違いない。
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しかしヤン・マーデンボローは、それでも「挑戦」を選んだ………例えその挑戦がどれだけ馬鹿げていて、尚且つ成功とは程遠いものだったとしても。
彼の胸の内には様々な物が抱えられていた。それは父親との確執であったり、或いは「夢」への不信感であったり。
だがヤンはそれでも走る。全ては「この道が正しかったんだ」と確信を得る為に。
ある意味、ヤンにとって「夢を叶える」という行為は「傷を癒す」ひいては「成長する」ことと同義だったのかもしれない。
今作は「1人のゲーマーが壮絶な訓練を経てプロレーサーになる」物語であるのと同時に「1人の青年が紆余曲折を経て大人になる」物語でもあるのだ。
なんと煌びやかな成長物語、なんと輝かしい奇跡の連続。この「輝き」こそ、まさに映画的であると言うに相応しいのではなかろうか。
個人的な感想
簡潔にいうと「今年No.1と言っても差し支えないのでは?」というのが正直な感想。兎にも角にも素晴らしい映画体験だった。
先述したレースシーンの大迫力はさることながら、ヤンの父親を中心とした人間ドラマもしっかりと描かれており、非常に満足度の高い至極の一本に仕上がっていた。
………正直に白状すると、今作は強面勢揃いだった9月の公開作品たちの中で若干影が薄めな印象を受けた。
故に私は今作にそこまで期待を抱いていなかったのだが、どうやらそれは甚だしく的外れだった模様。圧倒的神作だったとここに記しておこう。
意外だったのが、『グランツーリスモ』と今作にて監督を務めたニール・ブロムガンプの作風がマッチしていた点だ。
『エリジウム』『第9地区』とダークなSF映画を多く手がけてきたニール監督、果たして今作のスタイリッシュかつクールなイメージに合うんだろうか………
と若干不安になっていたりもしたが、それもまた私の杞憂だったらしい。大した違和感も感じさせず、スクリーンではゲームの時よりも迫力が更にパワーアップした『グランツーリスモ』が繰り広げられていた。
特筆すべきはレースカーのメカ描写である。『グランツーリスモ』のゲーム画面が実際のレースカーのコックピットに変形していくシーンは、まさに「現実と虚構の融合」を視覚的に表現しているといえよう。
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そして何よりもストーリーがアツい、アツすぎる!!既にやり尽くされた王道の展開ではあるものの、いつだって心を踊らされてしまうのは何故なのだろうか。
灼熱のエンジンが如き胸熱なストーリーと、無性にGがかかってきそうな怒涛のカーレースシーン。こんなにアツい映画があまり話題にならなかったというのは、今でも俄かに信じ難い。
もう既に上映終了している映画館も少なくないだろうが、もしまだチャンスがあれば是非とも映画館で鑑賞して頂きたい。行ってみな、トぶぞ。
まとめ(あとがき)
前回の投稿から何と、何と1ヶ月も経過してしまった。一週間に一本投稿とは果たして何だったのか………
堪忍袋がはち切れる前に、一つ言い訳をさせて欲しい………執筆及び投稿が遅れた理由の一つとして、少々リアルの方が忙しかったのである。
書類の作成やら提出物やらに追われ、中々PCの前に座る時間がなかったのだ。どうか許してくれ。
今月の初めあたりに『ポケモンSV』を買い、その結果夢中になりすぎてブログの方が疎かになってしまった、だなんて口が裂けても言えない。
………とまぁそれはそうとして、そろそろ10月も終わりが近づいてきた。今作の公開日は9月中旬だったはずなのに。あっれれーおかしいなぁー
10月といえば、マーティン・スコセッシ監督最新作『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』にギャレス・エドワーズ最新作『ザ・クリエイター/創造者』と非常〜〜〜に豪華。
そいつらもできるだけ早くレビューせねば。でないとまた更新が1ヶ月以上遅れるという最悪の結果に………。
と、いうわけで今回はこの辺で。
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それではまた、次の映画にて。