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【最新映画レビュー】前人未到の「不可能」へと。『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング』レビュー&感想

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『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング』

(”Mission: Impossible - Dead Reckoning”)

作品概要

ハリウッドを代表するアクション俳優、トム・クルーズ。そんな彼を代表するスパイ・アクションシリーズ『ミッション:インポッシブル』シリーズ(以下『M:I』シリーズ)から最新作が登場。

監督は前作『〜フォールアウト』と同じくクリストファー・マッカリーが務める。昨年公開『トップガン マーヴェリック』で大成功を収めたトム・クルーズは、イーサン・ハントとして今作でも大活躍。

またイーサンの長年のチームメンバーであるルーサー/ヴィング・レイムスベンジー/サイモン・ペッグも引き続き続投。二人ともノリが相変わらずである。

そして前作『〜フォールアウト』からホワイト・ウィドウ/ヴァネッサ・カービー、(正確には前々作『〜ローグ・ネイション』からだが)イルサ/レベッカ・ファーガソンも続投。

「撮りたいアクションを撮ってから脚本を書いていく」という荒唐無稽な撮影スタイルは今作でも健在であり、中でもバイクで崖から実際に飛び降りるという無茶振りがすぎるアクションは今作の大目玉。

興行的にはシリーズのビッグネームも相まってか世界的な成功を収めている。その数値は『トップガン マーヴェリック』に勝るとも劣らない、とも。

シリーズ史上最高峰の「不可能」に挑むイーサン・ハント、その勇姿を見届けよ。

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あらすじ

IMF(Impossible Missions Force)エージェント、イーサン・ハントの元に、新たなる任務《Mission》が課せられた。

推測航法《デッド・レコニング》を秘密裏に行なっていた潜水艦が謎の失踪を遂げた。そこに搭載されていたのは、世界そのものの基盤を崩しかねない超高性能AI「エンティティ」

もし悪しき者の手に渡れば、世界は混沌に満ち満ちていく………最悪の未来を回避すべく、イーサンは「エンティティの奪還」という任務を課される。

そんなイーサンの前に立ち塞がるは思いもよらぬ変数たち。コソ泥のグレース、武器商人のホワイト・ウィドウ、そしてかつてイーサンがIMFになる前の宿敵だった男、ガブリエル

果たしてイーサンたちは「エンティティ」という名の、人智を超えた存在を奪還することができるのか?

未だかつてない「不可能」たちが、幕を開ける。

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見所解説①トム・クルーズ「僕がいる限り、ハリウッドは不滅だ」

ハリウッドにおいて最も名高いアクション俳優と言っても過言ではないトム・クルーズ。

彼の映画に対する愛はもはや常軌を逸しており、特にアクションの演技に関してはスタントマンを極力登用しないという強いこだわりを持っている。

その姿勢は『M:I』初期の頃から表れ始めており「飛び立つ飛行機に生身でしがみつく」「地面数センチスレスレのワイヤーアクション」など、シリーズにおいて名シーンとされているものはほとんど全てトム自身が演じている。

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そして今作『〜デッドレコニング』でも世間の度肝を抜くようなトンデモアクションをトムはやってみせた。前述した今作の代表的なシーン「崖からバイクで飛び降り」のシーンである。

断崖絶壁の上にセットを組み、トムはバイクに乗って坂を上がり、そのままダイビング。ワイヤーやCGのテコ入れは一部を除いて一切なく、命綱は背中に搭載されたパラシュートのみ。

無論、一度失敗すればそのまま命を落としてしまう超危険なスタントだ。というかCGで大抵どうにかなってしまうこの時代、プロのスタントマンですらここまでやらないような気が………

もし降下中にパラシュートがバイクに引っかかったりすれば一巻の終わりだ。今作上映前に予告編として度々このシーンのメイキング映像を目にしたが、何度見てもやはりドキドキハラハラしてしまう。

だが今作の常識外れな撮影はこれだけに止まらない。悪役ガブリエルとの最終決戦が繰り広げられる列車のシーン、あれもまた実際に列車を発車させて撮影に臨んだという。

最終的に列車は橋の上で脱線し落下していくのだが、なんとそれも実際に列車を橋から落として撮影。

徹底的に「リアル」を追求し、一切の妥協をも許さない撮影陣にはとても頭が上がらない………というより最早一種の狂気だ。

見所解説②シリーズ最高のスケール、世界を滅ぼすのは「人工知能」

歴代『M:I』シリーズにおいて、数々の悪役たちが世界を破滅させんと暗躍してきた。その多くは核爆弾にまつわるものだが、そんな彼らの野望をイーサンは幾度となく阻止してきた。

だが今作の敵に関しては、もしかするとイーサンの手ですら敵わないかもしれない。何せ相手は人間………ではなく「人工知能」なのだから。

映画の歴史においては『ターミネーター』『マトリックス』など、多くのメジャーな作品に取り入れられてきた「AI」という名の悪役。

しかしながら、その目的はほぼ一貫して「人類の殲滅」といった比較的目的がハッキリとしているもの。

だが今作に登場するAI「エンティティ」は一味違う………このAIには「目的が無い」のだ。

人類を窮地に陥れるわけでも、誰かの命令で動いているわけでもない………ただただ気の赴くままに世界の情勢を荒らしまくるその様は、最早不気味ささえ覚える。

私がエンティティを「シリーズ最大の敵」と揶揄した理由がこれである。相手は超高性能なAI、裏をかこうにも付け入る隙間なんてものは一切なく、例え明晰な頭脳を持つイーサンでさえも容易には太刀打ちできない相手だ。

これにはシリーズ初の二部作構成というのも納得である。こんなデカ過ぎる相手、1作品では到底収め切れるはずがない。

また恐ろしいことに、エンティティはまだ「自我を得たばかり」のAI、すなわち赤子同然なのである。

もし時間が過ぎていって、エンティティが「大人」まで成長し、誰も暴走を止められなくなったら………?考えれば考えるほどに恐ろしい。

果たして次回作でイーサンはこの赤子を止められることができるのか。兎にも角にも、来年が待ち遠しくて仕方ない。

個人的な感想

長年続いてきたシリーズモノの映画において「続編/最新作が最高傑作」と称される映画はとても稀だ。

『エイリアン』など例外はいくつかあるものの、基本的に映画とは「原点にして頂点」という思想が根強い。

しかし『M:I』シリーズはどうだろうか………私の中の勝手なイメージでは、どのタイトルも優劣があまりないような気がする。

大抵どのシリーズも「このタイトルが全てを台無しにした!!」と酷評される作品が一本あるイメージ。一方『M:I』シリーズは、そういった(悪い意味で)決定的なタイトルは存在しない。

強いて言うならジョン・ウー監督の『M:I 2』が若干不評気味か。

今作の公開前、急遽『M:I』〜『〜フォールアウト』まで見返した私だが、次のタイトルを追うごとに「水綿的『M:I』最高傑作」が更新され続けていたのである。

理由は多岐に渡るが、アクションのスケールからサプライズ的展開まで、シリーズが進むごとに着々と進化を遂げているように思える。

そして今作もその例に漏れず『〜デッドレコニング』(個人的)シリーズ最高傑作に躍り出る………と思いきや、意外にもそれは叶わなかった

自分で思い返してみて導き出された答えはいくつかあるが………主な理由として挙げられるのは中盤あたりのギャグシーンだろうか。

基本的にシリアスな作風を貫き通す『M:I』シリーズにおいて、場の雰囲気を和ませるギャグシーンというのはある意味貴重だ。しかしながら、個人的にこのコメディチックな雰囲気はどうしても受け入れられなかったのである。

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スポーツカーをジャックしたかと思いきや、ただの黄色いオンボロ車だった………切羽詰まった状況のハズなのにテンポは何故か遅いし、オンボロ車を出す意味も個人的にあまりシックリ来ず。

あとは純粋に二部作構成であるために物語の締めが中途半端でそこに物足りなさを感じてしまったのかも。そこは来年まで乞うご期待ってやつなので致し方ないが。

とはいえど、カッコいいアクションはしっかりカッコよく、ハラハラするシーンはしっかりハラハラさせてくるあたり、その辺は流石『M:I』シリーズ、愛も変わらず抜かりないなぁと。

………思えば、ここまでシリーズが長続きしていて最新作が公開されたとしても、シリーズ全てを復習しなくても良い、というのは割と『M:I』の大きな特徴なのではないかと今更ながら思った。

流石に来年公開予定の『〜PART TWO』は今作を履修した上で鑑賞に臨むべきだろうが………「とっつきやすさ」というのは案外、シリーズモノの映画において重要なのかもしれない。

まとめ(あとがき)

今作の劇場公開から既に1ヶ月半が経とうとしていることに驚きが隠せない………いや私が執筆に取り掛かるのがあまりにも遅過ぎただけの話だろうが。

果たして次回作はどういった展開になっていくのだろうか。ガブリエルが鍵を取り戻すべくイーサンに襲いかかるのか、或いは予期せぬ第三勢力が乱入してくるのか………

いずれにせよ、一瞬の瞬きすらも惜しくなるような狂騒劇を来年また劇場で拝むことができる、と考えるとワクワクが止まらない。

さてさて、この記事を何とか書き切った勢いで他の作品の記事も書き上げたいところ。ブランクが看過できないレベルで空いてるので何としてでも取り戻さねば。

というわけで今回はこの辺で。

https://eiga.com/movie/97229/gallery/3/

それではまた、次の映画にて。

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