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【最新映画レビュー】運命の冒険は遂にフィナーレへ。『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』レビュー&感想

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『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』

("Indiana jones and the Dial of Destiny")

作品概要

ジョージ・ルーカススティーヴン・スピルバーグのタッグによって誕生した『インディ・ジョーンズ』シリーズ第5作目にあたる今作。

今作『〜運命のダイヤル』で、『インディ・ジョーンズ』シリーズは幕を下ろすらしい。『レイダース/失われたアーク《聖櫃》』『〜魔宮の伝説』『〜最後の聖戦』『〜クリスタル・スカルの王国』と、長年続いてきた「伝説」もいよいよ終焉を迎える。

監督はいつも通りスピルバーグ………ではなく『LOGAN ローガン』『フォード vs フェラーリ』を手がけたジェームズ・マンゴールド「果たしてスピルバーグ以外が『インディ』を監督して大丈夫なのか………?」と不安がる気持ちも分かるが………真偽は実際に劇場で鑑賞し確かめるとしよう。

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主演はいつも通りハリソン・フォード。この人以外に「インディアナ・ジョーンズ」という男は務まらない!!

代表作は『ブレードランナー』『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』など、もはや詳しく語るまでもない珠玉の名作ばかり。

そんなハリソン・フォードもすっかりお爺ちゃんに。年齢は何と80越え。だがそんな老体に鞭打ち『インディ・ジョーンズ』の最後を飾るべく再び大冒険へその身を乗り出す。

また他にも『アナザーラウンド』マッツ・ミケルセン『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズジョン・リス=デイヴィス

他多数の著名俳優たちが出演。シリーズのラストを華々しく飾ることとなった。

が、しかし………今や年老いた老人となり、かつての冒険家としての姿の面影すらなくなってしまったインディを「痛々しい」「見ていられない」と一蹴するものも一定数存在し、今作の評価は賛否両論状態となっている模様。

だが、『インディ・ジョーンズ』という一つの映画の歴史が終わる、その瞬間………それをこの目で捉えることができることを私は誇りに思う。

今作、ひいてはインディアナ・ジョーンズという名の男が辿る結末がどうであれ………それは紛れも無い「伝説の終わり」の瞬間だ。しかと我が目に刻むとしよう。

あらすじ

1944年、ナチスが押収した秘宝「ロンギヌスの槍」を奪取しにナチスの基地へ忍び込んだ冒険家にして高名な考古学者であるインディアナ・ジョーンズは、

ナチスの高明な科学者フォラーと共に別の秘宝である「アンティキティラのダイヤル」を偶然発見する。

時を巻き戻すほどの強大な力が込められているとされるダイヤルを我が物にせんとフォラーはインディに襲いかかるが、戦闘の最中に消息不明に。最終的にダイヤルはインディの手に渡ることとなった。

時は流れ1969年。アメリカがアポロ11号による人類初の月面着陸に賑わう中、インディは教職の定年に達し退職

最早考古学には誰も興味を示さない、と自らの限界をバーで酒をあおりながら悟るインディ。

だがそこへ旧友バジルの娘であるヘレナが訪れる。彼女曰く、かつてインディが手にした「アンティキティラのダイヤル」とは世界の歴史を塗り替える伝説の大秘宝とのこと。

欠けたダイヤルの片割れを探しに行こうと提案するヘレナと、もう冒険は終わったんだと拒否するインディ。

だがそこへ現れたのは、なんとかつて消息不明になっていたナチスの科学者フォラーとその手下だった。

果たしてダイヤルは誰の手に渡るのか。世界を股にかけた、インディアナ・ジョーンズ生涯最後の大冒険が今、始まる。

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見所解説①今となっては懐かしい、若き日の冒険家の姿

『レイダース〜』におけるハリソン・フォード演じるインディアナ・ジョーンズは、若々しさダンディな雰囲気がせめぎ合う独特なキャラクター像を有していたようにも思える。

と、いうわけで序盤ではインディがナチスからダイヤルを盗み出すまでの経緯が描かれるわけだが、

麻袋から顔を出すは最新のVFXと合成によって誕生した若き頃のインディ「あの頃の彼」を再び劇場で目にすることができる………これぞファン冥利に尽きるというやつだろうか。

声は流石に現在のハリソンがアテレコしたものではあるものの、鞭を手に敵だらけな列車の中を走り抜けるインディの姿は、まるで当時の三部作の頃からそのまま飛び出してきたかのようなリアリティを孕んでいた。

加えて列車を駆け抜ける様もかつてのタイトルを彷彿とさせるようなものばかり。

敵に変装したり、危機的状況から間一髪で脱出したり、敵へ容赦無く顔面にゲンコツをぶち込んだり………

ウォラーに対し、帽子で視界を奪いつつ思いっきりグーパンチを叩き込む姿は何ともコミカルにして痛快だ。

んでもってウォラーにダイヤルを渡したかと思いきや、しっかりとインディの手に渡っていたというオチまでまるっきり一昔前の『インディ・ジョーンズ』だったと痛感。

ここのシーンだけ、今作は『レイダース/運命のダイヤル《時計盤》』だったような気がする。何度もいうがこりゃーファンにとっては堪らん。

見所解説②ジェームズ・マンゴールド流ドタバタお宝争奪戦

『インディ・ジョーンズ』が『インディ・ジョーンズ』たる所以として真っ先に挙げられるのが、スピーディかつ仕掛けがいっぱいな「お宝争奪戦」だ。

キャラクターたちと舞台装置が忙しなく動き続けるその様は『レイダース〜』の頃からずっと続く、いわば伝統行事に近いものだ。

それもそのはず、この『インディ・ジョーンズ』というシリーズを牽引してきたのは、他でもない大巨匠ことスティーヴン・スピルバーグなのだから。

『激突!』『ジョーズ』『E.T.』と、数々の名だたる娯楽映画を生み出してきた彼だからこそ使いこなすことができた手法だと言える。

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ところがどっこい、今作『〜運命のダイヤル』の監督はスピルバーグではなくジェームズ・マンゴールドなのである。

アメコミ映画の歴史に文字通り名を「刻んだ」傑作『LOGAN ローガン』や、

初期の『ワイスピ』をも超えるとされるカーレース映画の金字塔的作品『フォードvsフェラーリ』を手がけた、という確かな実績と実力を持ち合わす監督なのは間違いない………

だが今回に限ってはそう簡単にはいかない。何せあの『インディ・ジョーンズ』の最新作にして最終作だ、下手にコケさせることは到底許されない。

スピルバーグではない「誰か」が、この壮大な冒険譚のラストを飾らなければならない………この時点で、マンゴールド監督にかけられたプレッシャーの重圧は想像に難くない。

不安と期待を募らせながら、我々がスクリーンで目にしたのは………スピルバーグのものとは少々異なるが、十分に『インディ・ジョーンズ』らしさが溢れた、愛も変わらず忙しないトレジャー争奪戦だった。

私含む多くの人は、今作のアクションをマンゴールド監督作品である『ナイト&デイ』のようだと形容した。

渋味全開な『LOGAN ローガン』『フォードvsフェラーリ』とは異なる、爽快感抜群のハイスピード・アクション劇。

スピルバーグのとは少々異なるものの「インディアナ・ジョーンズ」という男が繰り広げるに相応しい戦いを、マンゴールドは我々に届けてくれたのだ。

事実、スピルバーグは今作の試写版を鑑賞し「まさか私以外で『インディ・ジョーンズ』を撮れる人がいるとは………」と言葉を漏らしている。

見所解説③年老いた偉大なる冒険家は、最後の冒険に何を思う………

代々シリーズでインディを演じてきたハリソン・フォードも今年で81歳。もう業界から引退していても何らおかしくない年齢だ。

それでもフォードは、シリーズの終焉を飾るために再び「インディアナ・ジョーンズ」を演じた。

もうヨボヨボのお爺さんだが、カウボーイハットを被り鞭を叩きつけるその姿は幾年経とうとも勇ましい。

だがインディアナ・ジョーンズはジェダイでもなければレプリカントでもない、ただの人間だ。

いつも窮地から奇跡の生還を果たしているが、致命傷を負えば死ぬし老いれば身体も衰えていく。

作中ではすっかり年老いて、大学の考古学教授としてひっそりと暮らすインディの姿が。かつての勇ましさはすっかり息を潜め、近所の騒音に文句を言うただのおじいちゃんに。

教職に関しても、時代の推移と共に生徒たちは考古学に興味をなくしていくばかり。

授業そっちのけでアポロ11号の月面着陸のニュースに食らいつく生徒たちと、そんな中一人取り残されたインディの寂寥感たるや。

更に言えば、今回はヘレナの誘いをキッカケに再び大冒険へ身を投じる訳だが、半ば彼女に巻き込まれた形で冒険へ馳せ参じる形となっている。

つまり言ってしまえば、インディはかつての勇敢な冒険家としての姿を失いつつあるのだ。

秘境の奥底に眠る秘宝を求めて遺跡を突き進むその勇姿は、『レイダース〜』から約40年経った今この時を以て、遂に消えかかっている。

教職も引退し、今やただの一人の老人となってしまった「インディアナ・ジョーンズ」という名の男。

警察に寄り縋り「事件が起きたんだ!!」と喚くインディの姿に強い違和感を感じた者もきっと少なくないだろう。

事実、鞭や拳を駆使したアクションは前シリーズよりも控えめになり、代わりにカーアクションが多めに。

主演の年齢が年齢なので仕方ないことではあるのだが、シリーズを今まで追ってきたファンからは少々物足りないという意見も。

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故に今作のインディは、過去の勇ましい面影が残っていると共にどこか悲壮感が漂っているのが特徴的だ。それはどこか遠い過去を見つめているようにも、自らの限界を察しているようにも見える………

今作がやや賛否両論気味な評価へ落ち着いているのはこれが原因かと思われる。これを「かつての英雄」として捉えるか「ただの寂れた老人」と捉えるかは人によるが………

偉大なる冒険家、その長きに渡る旅路の果てに見たものとは何か………冒険の幕は遂に閉じるのか、或いはまだまだ続くのか。

その結末を、伝説の終わりをしかと見届けよ。

個人的な感想

今年4月頃にシリーズ4作を急遽走り抜けた上での今作の鑑賞。劇場公開当時を目の当たりにしてきた方々には遠く及ばないだろうが、私とてそれなりにシリーズへの思い入れはあるつもりだ。

まず大前提として『インディ・ジョーンズ』になくてはならない要素はしっかりと抑えられているのは評価されて然るべき要素なのは間違いない。

歳を重ねようとも(昔ほどではないが)割としっかり動けるインディや、『レイダース〜』のクライマックスを彷彿とさせる悪役ウォローの因果応報的な最期、などなど。

………が、しかし。基礎的なところは抑えられているものの、細かなオマージュなどがちょいちょい抜けてしまっているのが少々残念な所。

パラマウント映画のロゴがそのまま実写の映像に切り替わるモンタージュ、誰かがインディの教室を覗きに来るシークエンス、などなど………

前4作の中でも特に異作とされている『〜魔宮の伝説』でさえその小ネタをほぼ踏襲していたため、今作でそれが抜けてしまっているのが非常に惜しい。

それが相まってか、個人的に不完全燃焼のまま観終えてしまったのが悔しい。そこを再現しなかったのはマンゴールド監督の狙いだったのだろうか………

決してシリーズ最高傑作とは言い難い今作、しかしながら約40年もの間インディアナ・ジョーンズを演じてくれたハリソン・フォードにはただ一言「お疲れ様でした」と言いたい。

シリーズの終焉に相応しいかどうかは定かではないが、これにてハリソンが満を持してインディを卒業することができたのは喜ばしいことに変わりない。

今までありがとうインディ。ゆっくり休んでね。

結局また何かのゴタゴタに巻き込まれて冒険に出かけるんでしょうけど。笑

まとめ

更新が遅れて、いや遅れすぎて自称マイペース人間の私も流石に焦りを覚える。もう7月が終わりを告げようとしているのにも関わらず、未だ2023年上半期の記事すら書き終わっていない。

今回のレビュー記事も同様だ。公開が6月30日なのにも関わらず何故ここまで引き延ばしてしまったのだろうか。公開されてから1ヶ月後に記事を書く阿呆がいるか。

にしても、過去の名作がこうして幕を閉じてしまうのはどうしても寂しさを覚えてしまう。無論、その映画の大ヒットをリアルタイムで見届けた方々の方が悲しみは大きと思うが………

もしかすると、私の生きてるうちに新たなるインディアナ・ジョーンズが誕生して、全く新しい『インディ・ジョーンズ』が出来上がるかもしれない。それはそれで楽しみだ。

ハリソンもスピルバーグもルーカスも、映画の歴史を塗り替えた偉人だからといって不老不死の超人って訳じゃない。いつの日か、彼らの人生にもエンドクレジットが流れることだろう。

今こうして『インディ・ジョーンズ』という一つの「伝説」がフィナーレを迎えたのと同様に、何事にも始まりがあれば終わりもある。

我々がすべきことは、そんな彼らに「楽しい物語をありがとう」と感謝の言葉を告げることだと私は思う。それが傑作だろうとそうでなかろうと「今までお疲れ様でした!!」と笑顔で送り出そうではないか。

と、いうわけで今回はこの辺で。

この調子で更新ペース上げてくぞー!!!………と言いたい所だが、如何せん学業やらバイトやらでリアルが多忙で………なるはやで次の記事も投稿できるよう努めるのでどうかお待ちを。

https://eiga.com/movie/97256/gallery/2/

それではまた、次の映画にて。

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