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『ゴジラ-1.0』
(”GODZILLA MINUS ONE")
作品概要
日本を代表する特撮怪獣・ゴジラ。その知名度は海外にまで知れ渡り、破竹の勢いが如き人気を誇っている。
近年ではハリウッドによる「モンスターバース」での『ゴジラ』が多めだったが、この度7年ぶりに『ゴジラ』作品が公開されることとなった。
その名も『ゴジラ-1.0』。タイトルにもあるマイナスとは何を意味するのか………それは後程解説しよう。
監督を『ALWAYS 三丁目の夕日』『アルキメデスの大戦』の山崎貴が務める。
大のゴジラファンとしてよく知られ、西武園ゆうえんちのアトラクション『ゴジラ・ザ・ライド 大怪獣頂上決戦』の映像監督も務めた。
このアトラクションでのゴジラが、今作のゴジラに酷似しているのは有名な話。もしかすると同じ世界線での出来事かも?
出演者として神木隆之介、浜辺美波、山田裕貴、安藤サクラら豪華キャストが集結。そんな彼らを蹂躙しまくるゴジラ含め、その絵面は錚々たるものだ。
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来年の2024年で生誕70周年を迎えるゴジラ。
70年もの間、時に日本ひいては人類を破壊し尽くし、時に地球を守るべく戦い続けてきた彼が、遂に再びスクリーンにて降臨する。
その大口から放たれる咆哮は怒号か、はたまた慟哭か。人類を絶望の淵へ追いやる、最恐のゴジラを劇場で体感せよ。
あらすじ
終戦直後、特攻隊の敷島は、零戦が故障したと偽り大戸島へ緊急着陸する。
しかしその夜、体長15mを超える恐竜のような生物が出現。大戸島の整備兵は、島の伝説から名前を取り巨大生物を「呉爾羅(ゴジラ)」と称する。
零戦の機銃でゴジラを迎え撃とうとするも、恐怖で身動きが取れない敷島。その間ゴジラは整備兵たちを次々と殺戮、敷島ともう1人を除いて部隊は全滅に至った。
失意の中、本土へ帰還する敷島。だが彼の故郷は空襲により焼き尽くされ、両親は既に他界。隣人の澄子からは「恥知らず」と罵倒される始末だった。
そんな中、闇市にて自身と同じく戦争で両親を失った典子と、孤児の明子に出会う。訳あって、敷島と典子は同棲をすることになった。
時は流れ1947年。日本は戦争の傷から徐々に立ち直り、明子も幼児にまで成長。だが敷島は、数々の罪の意識により未だ心の傷を抱えていた。
そんな中、大量の放射線物質を纏った巨大生物が日本へ向かってきているという報告が入った。
敷島含む、機雷除去船「新生丸」の乗組員たちは、この巨大生物の足止めを要請される。
現れたのは、確かにあの時大戸島に襲来したゴジラだった………しかしながらその姿は大きく変貌を遂げ、体長約50mもの巨大生物へと変わり果てていた。
機銃も機雷も一切効かず、おまけに強い再生能力も持つゴジラ。やがて重巡洋艦「高雄」が応戦するが、それでも全く歯が立たずゴジラの熱線によって大破。
奇跡的に生還を果たした敷島ら一行だったが喜びも束の間、遂にゴジラが本土へ上陸。
この圧倒的とも呼べる「絶望」に、日本は抗い、そして打ち勝つことができるのか。
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見所解説①絶望と破壊の化身、その名も「ゴジラ」。
人々が抱く『ゴジラ』へのイメージは、大きく以下の二つに分けられる。
水爆から生み出された悲劇の怪獣として人類を蹂躙する「ゴジラ」。
或いは、宇宙からやってきた脅威から地球を守るべく戦うヒーローとしての「ゴジラ」。
近年だと「平成VSシリーズ」や「モンスターバース」でのイメージが強い為、どちらかというと後者の方が比率高めかもしれない。
それから長らくゴジラが人類の敵となるタイトルは制作されなかったが、2016年に『シン・ゴジラ』が公開されたことで、ある意味初代『ゴジラ』への原点回帰を果たすこととなる。
全長118mというシリーズ最大級のスケールを誇り、非生物的な雰囲気を漂わせながら人々の街を踏み荒らすその様は正に「災厄」そのもの。日本を恐怖のどん底へと突き落とした。
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しかしながら、今作『ゴジラ-1.0』はその更に先をゆく恐怖を併せ持つ。
まず時代設定が1947年、即ち戦後直後。空襲によって既に崩壊し、それでも徐々にではあるが復興の兆しが見えてきた日本に、あのゴジラが襲来してくる………それがどれほど恐ろしいことなのかは言うまでもないだろう。
戦争によって全てを失い「無」となった日本が、ゴジラの襲来によって「負」となる………タイトルにもある「マイナス」とはこれに由来する。
とはいえど、今作におけるゴジラの全長は約50m。初代ゴジラとほぼ同じ大きさであり、スケールだけでいえば歴代シリーズと比べかなり控えめな方だ。
しかしながら、歴代最少クラスだからといってみくびってはならない。何故なら全長50mといえども、人間たちを蹂躙するにはあまりにも十分すぎる大きさなのだから。
建物を瓦礫に変え、人間を虫けらのように踏み潰し、日本という国を再び「絶望」のどん底へと突き落とす………
まさに70年前のあの日、ゴジラが日本へ初めて降り立ったあの瞬間が再び蘇ったかのようだ。
戦後間もない故に高い建造物がない為、よりゴジラの大きさが際立っているのも「恐怖」の要因の一つ。
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そしてこのゴジラ、もしかすると歴代最強格の強さを誇っていると言っても過言ではないかもしれない。
頭部に機雷が直撃しても即時に元通りになる脅威的な再生能力。キノコ雲を生み出すほどの圧倒的な威力を誇る放射熱線。
某モンスター・ゼロでも敵わないのでは?と思わざるを得ない。『VSシリーズ』以外で登場するにはあまりにもオーバースペックな今作のゴジラ。
庵野秀明に続き、またもや「ぼく(山崎貴)のかんがえたさいきょうのゴジラ」が現れたか。
さてそんなゴジラに立ち向かうは当然日本もとい人類なのだが、人類諸君はとんでもないハンデを負っている。
米国に戦艦や戦闘機を奪われ、軍事力は戦時中と比べ大きく低下。加えて米国からの援助はソ連との触発を避ける為一切なし。日本単独で、この化け物をどうにかしなければならない。
僅かに残された兵器たちで、歴代最強レベルのゴジラに挑まなければならないのだ。これぞまさに「どう足掻いても絶望」である。
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従来のタイトル、中でも初代『ゴジラ』は「戦争・水爆への悲哀」の象徴という側面が強調されていた。だが今作の個体からはそういった雰囲気は感じ取れない。
ただひたすらに暴れ回り、人類に深い絶望を植え付け続ける存在。その一挙一動には、不明瞭でありながら確かな「怒り」を感じられる。
『シン・ゴジラ』と同じく非生物的ではあるものの、きっとその胸の中には果てしない人類への憎悪が詰まっていることだろう。
それが棲家を追われたことに対してのものなのか、或いは日本が戦時中に犯した罪を裁こうとしているのか………依然としてその目的は不明である。
最早一種のホラー映画に近いゴジラの暴れっぷり。語り出すとキリがない為ここでは割愛するが、是非とも劇場で底なしの「絶望」を味わって頂きたい。
見所解説②何度でも這い上がれ、絶望に生きて抗え。
山崎貴の作品において、人間ドラマパートは非常に大きな役割を持つ。
彼の紡ぎ出す人間ドラマは良い意味で捻りのない、人と人との感情に正面から向き合ったシンプルなものだ。
代表作の一つ『ALWAYS 三丁目の夕日』はまさにこの人間ドラマが評価され、日本アカデミー賞・最優秀賞に輝いた。
今作『ゴジラ-1.0』においてもその特色が顕著に表れており、主人公・敷島をはじめとする数多くの登場人物が紡ぎ出すドラマを堪能することができる。
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………とはいえど、果たして『ゴジラ』に人間ドラマは必要なのか?と疑問に思ってしまうのも確かだ。
多くのゴジラ映画の場合、タイトルごとのテーマはあくまでも「ゴジラの暴れっぷり」にある。人間ドラマはあくまでも付け合わせ程度のものだ。
もし下手に話を大きくしてしまえば、それはかえって蛇足となってしまう。人間如きが怪獣王様の歩みを止めてはならないのだ。
Xなどでは山崎監督の過去作に倣って「ゴジ泣き」とネタにされていた今作。しかし蓋を開けてみれば、『ゴジラ』と人間ドラマが絶妙に調和していた。
戦後間もない日本が舞台ということで、生と死の概念は未だ強く根付いている。ましてや主人公の敷島は元特攻隊、数ある部隊の中で最も死に近いところにいた人物だ。
「もうこれ以上死ななくて良い」「国の為に命を捧げる必要がない」、そう安堵していた日本に「死」の象徴たるゴジラが襲来してくる。形は違えど、その様はかつての戦争と何ら変わりないものだ。
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だが、例えどれだけ絶望的な状況下にあろうとも、人々は生きねばならない。かつての戦で命を散らしていった者たちの遺志を継ぎ、生きねばならないのだ。
今作のキャッチコピー「生きて、抗え」とは、まさにこれに由来する。果たして今作の主題に相応しいのかと疑いもしたが、どうやらただの杞憂に過ぎなかったらしい。
過去のトラウマから自分は生きてちゃいけない人間だと言い聞かせる敷島と、誰かに託された生命を最後まで守り抜き生きようとする典子。
それはまるで「死」に苦しむ敷島を、典子が「生」を以てして救おうとしているかのようだ。
戦争の傷跡が色濃く残る死生観と、そこから生まれる「死に抗う者たち」のドラマ。
人間の根底にある感情に真っ直ぐ向き合った、まさに今作に相応しい人間ドラマと言えるだろう。
個人的な感想
普段から邦画をあまり観ない私ではあるが、国産『ゴジラ』最新作となれば話は別だ。
『シン・ゴジラ』は計4回ぐらい観たし、初代『ゴジラ』もしっかりと履修済みだ。
観るのが待ちきれない私は公開初日にIMAXで観に行ったのだが、まぁ〜〜〜最高に面白かった。
今年の邦画ランキングNo.1を飾る作品と言っても過言ではないかもしれない。
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純粋なエンタメ映画として仕上がっていたというのも理由の一つではあるが、今作、何よりも絶望感が半端ない。
戦後直後、まだ復旧もままならない日本に、歴代最強にして最恐のゴジラがやってくる………「これ日本勝ち目あるの?」と本気で思ったのはきっと私だけではないハズ。
そんな絶望の塊ことゴジラに対抗するのは、先述した生きる為に抗い続ける人類共。
しかしそこで「希望が絶望に打ち勝った!!日本の勝ちだ!!」で終わらせないのが今作『ゴジラ-1.0』。
ラストにて観客ひいては人類に、またもや超弩級の「絶望」を送り込んでくるのである。
詳細を知りたくば今すぐ劇場へ………ヒントは「今作のゴジラのスペック」とでも言っておこうか。
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水爆によって生み出された大怪獣が、この日本に生み出されて来年でいよいよ70年が経とうとしている。
それを記念して制作された今作には、過去作のオマージュが数多く存在することに気づいただろうか。
- 初代『ゴジラ』:物語の下地。ビルの屋上にいた記者隊がて倒壊に巻き込まれるシーンはそのまんまのオマージュ。
- 『シン・ゴジラ』:ゴジラを海底まで沈め、その重圧でゴジラを倒す計画「海神作戦」は、どこか『シン・ゴジラ』におけるヤシオリ作戦を彷彿とさせる。
- 『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』:放射熱線を放つ際、尻尾の方から背ビレが青く発光していく様は「モンスターバース」のゴジラの特徴。
- 『GODZILLA』:冒頭にて大戸島に上陸した成長途中のゴジラ(正式名称は「呉爾羅」)の姿が、ローランド・エメリッヒ版の『ゴジラ』に姿が酷似している。
………と、ざっとこんなものだろうか。他にも過去作の楽曲が使用されていたりと、数多くのオマージュが取り入れられている。
一つの独立した『ゴジラ』であるのと同時に、従来のシリーズの総集編的な側面も併せ持つ今作。
その上で、エンタメ・商業用の映画として完成されている点に関しては、然るべき評価を受けるべきであろう。
兎にも角にも、日本のゴジラがここまでやれるという事実には、ただただ感服せざるを得ない。
最近はハリウッドのゴジラが目立ちがちであった為、日本人の私としては嬉しい限りである。
新たなる国産の『ゴジラ』にして、ハリウッドに向けた山崎貴の挑戦状。かの怪獣王が歴史的な変貌を遂げる、その様を見逃すなかれ。
まとめ(あとがき)
まさかゴジラを観に行った翌日にインフルに罹るとは………G細胞でも埋め込まれてしまったのだろうか。
それはそうと今作、IMAX版が色んな方面で凄まじく。中でもゴジラの咆哮の迫力はとんでもなかった。まるで座席の下からゴジラが飛び出してきそうな勢い。
やはり『ゴジラ』はハリウッド版だろうと国内版だろうと映画館で観なくては。いつか『KoM』もIMAXで観てみたいものだ。
ちなみに、何気にこれが初の劇場で観る国内版ゴジラ。『シン・ゴジラ』の頃はまだクソガキですもの、許してくんざまし。
さてさて、今作が2023年邦画(私的)No.1に輝いた訳だが、果たしてもう一つの注目作『首』はどうなるか。
まだまだ気が抜けないぞ2023年、ということで今回はこの辺で。
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それではまた、次の映画にて。