『イコライザー』シリーズとは
近年のアクション映画などにおいてよく見られる「一見普通の男が実は超強かった」系のジャンル。
『ランボー』から始まり、現在では『ジョン・ウィック』などの人気シリーズにて登用されている。
この『イコライザー』シリーズもまた、名も無き男が世に蔓延る悪を粛清する、痛烈極まりないアクション映画だ。
1984〜1989年にかけて、アメリカで放送されたTVドラマ『ザ・シークレット・ハンター』の劇場版でもある。
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2023年現在までに3作品が公開されており、全タイトルを『グローリー』『トレーニング デイ』のデンゼル・ワシントンが主演を務める。
監督にはアントワーン・フークアが、デンゼルと同じく3作品を通じて就任。先述したデンゼルの代表作の一つ『トレーニング デイ』でも監督を務めている。
元DIA工作員のロバート・マッコールが、行く先々で出会う極悪人をその名の通り「粛清」する『イコライザー』シリーズ。
字幕版・吹替版ではDIAではなくCIAと表記されているが、本記事では元の設定に則りDIAと表記させていただく。
一見するとロバートが正義の味方として悪と戦う、いわばヒーロー映画的な印象が強いが、その本質は「ダークヒーロー」のそれに近い。
一度彼の中でスイッチが入ってしまえば、相手はどう足掻こうと「死」を免れることはできない。
罪の裁量なんてものは関係なく、悪事を犯した彼らに待っているのはただ冷徹な「死」のみ。
彼の下す「正義の鉄槌」とは罪を裁くものではなく、文字通り悪人の頭を叩き潰すためのものと言えるだろう。
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よく比較対象とされる『ジョン・ウィック』と比べると、向こうは正統派なガンアクションであるのに対し、こちらはギミックに富んだアクションを拝むことができる。
身の回りにあるものを使い、敵を素早く的確に倒していく。さながらスタイリッシュな『ランボー』と言ったところか。
圧倒的ともいうべき戦闘スキルで、「正義」の名のもと敵を屠る………その1秒1秒を”決して”見逃すな。
①19秒で、世の悪を粛清する。『イコライザー』
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『イコライザー』
(”The Equalizer")
あらすじ
ホームセンターで働く、気の良い中年男性ロバート・マッコール。彼の習慣とは夜な夜なダイナーへ行き、紅茶を飲みながら本を読むことだった。
ある日の夜、彼は自身と同じくダイナーの常連であるテリーと名乗る少女娼婦と出会う。
本名はアリーナであり、彼女の夢は歌手になることだった。夢なんか叶いやしないと悲観する彼女に、ロバートは「自身の環境を変えろ」と励ます。
だがある日、アリーナは客に暴行を加えてしまい、元締めのスラヴィは見せしめとしてアリーナを痛めつけ、彼女を病院送りにしてしまう。
彼女の惨状を知ったロバートは、アリーナの働いていた店を訪れ、彼女に仕事を辞めさせて欲しいと頼み込むが、門前払いされてしまう。
「退院したら、また搾れるだけ搾り取ってやる」と宣うスラヴィに、ロバートは静かな怒りを燃やしていた。
怒りの頂点に達したロバートは、部屋にあるものだけでスラヴィ含む総勢5名を、ものの約30秒で殺害してしまう。
ロバートの正体とは、元DIAの凄腕工作員だった。事の経緯を知ったスラヴィのボスであるプーシキンは、部下を殺したロバートを殺害しようと企むが………
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作品解説
正義の処刑人ロバート・マッコールが悪を「死」を以て断罪する、アクション超大作の第一弾。
先述した通り、アントワーン・フークアが監督を、デンゼル・ワシントンが主演を務める。
「ものの19秒で、全ての敵を屠る」………『イコライザー』シリーズのコンセプトである「敵を最速で片付ける」戦闘スタイルは当然ながら今作が発祥。
無駄な動きを排除したスタイリッシュ極まりないアクションは、今作ひいてはシリーズ随一の見所と言える。
ちなみに2014年といえば、同じくアクション映画として名を馳せることとなる『ジョン・ウィック』が公開された年でもある。
「一見普通の男が実はヤバいやつだった」というコンセプトは全く同じなものの、主軸となる戦闘スタイルは大きく異なる。
『イコライザー』が「あるもの全て使え!!」ならば、『ジョン・ウィック』は「とにかく頭を撃ち抜け!!」といった感じ。
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だがしかし、知名度に関しては確かに向こうのほうが上かもしれないが、今作『イコライザー』も負けちゃいない。
『ランボー』に代表されるような、その場にあるものを使って戦うというスタイルを、現代に甦らせたという功績は中々に大きい。
『ブレット・トレイン』や『バイオレント・ナイト』、『Mr.ノーバディ』等の近年のアクション映画は、間違いなく『イコライザー』シリーズの影響を受けていると断言できるだろう。
また素早いアクションと言っても、CGを使った人間離れした「速さ」ではなく、生身の人間が生み出す「速さ」を重視している為、よりスタイリッシュさが際立っている。
決してCGによる速さがダメと言っているわけではないが、リアリティのある速さだからこそめちゃめちゃカッコイイ。
洗練されたアクション映画とは、まさにこういった作品を言うのだろう。必殺仕事(処刑)人、ロバート・マッコールの大暴れを堪能せよ。
②ドライバー、兼、私刑執行人。『イコライザー2』
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『イコライザー2』
(”The Equalizer 2”)
あらすじ
元DIAの凄腕工作員、ロバート・マッコールは以前まで働いていたホームセンターを辞め、Lyftの運転手として働いていた。
多種多様な客と触れ合いつつ、客のトラブルを自身の能力を使って密かに解決するという生活を送るロバート。
常連客の1人である老人の「姉を探して欲しい」というお願いを聞いたり、同じアパートに住む不良少年のマイルズの面倒を見てあげたりと、その性格は相も変わらずお人好しだ。
順風満帆な日々を送る彼だったが、ある日かつての同僚であるスーザンが殺害されたという情報を耳にする。
元DIAの職員とその家族が集団自殺したという事件を調査していたスーザンだったが、謎の集団に襲われ命を落としてしまったのだという。
最愛の親友を喪ったことで、再び静かなる怒りに燃えるロバート。真相究明と報復を決意した彼は、その腕を以てして調査を開始する。
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作品解説
前作のヒットを受け、続編の制作が決定。監督のアントワーン・フークア、主演のデンゼル・ワシントンは前作に引き続き続投。
主人公のロバートは前作の出来事を経て、自身の力は他の誰かの助けになると確信したのか人助けをするように。
本編中での時間の推移は不明だが、5年もの歳月が経とうとその実力は一切衰えていない模様。
乗客である女性をレイプしたと思しき集団のいる部屋に1人で乗り込み全員ボッコボコにするなど、そのデタラメな強さは相変わらず。
前作のような「ものの19秒で仕留める」といったキャッチコピーは見当たらないが、彼の手腕が紡ぎ出す「速さ」は未だ健在だ。
しかもそれでいて、病的なまでに「お人好し」なロバート。前作同様「普通」とかけ離れた道を歩まんとする若者を助けようと世話を焼いてくる。
側から見たらただのおじいちゃんにしか見えないのもまた、彼の魅力の一つと言えるかもしれない。
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肝心のストーリーに関してだが、物語中盤にてスーザンを殺害した予想外な人物が判明し、悪を一切許さないロバートは戦うことに。
終盤にてロバートと暗殺部隊との戦いが始まる訳だが、暗殺部隊は全て元DIAエージェント、つまり全員がロバートに勝るとも劣らない実力を持っていると考えて良い。
ともなれば、そんな彼らを倒すのは当然一筋縄ではいかない。対して「人助け」として自身の腕前を振るっていたロバートは、一見すれば不利な状態だ。
結果は火を見るよりも明らか………ロバートの圧勝である。それも傷一つ負わずに。
限界まで磨き上げられた戦闘スキルと、卓越した工作技術が合わさってこその無双っぷり。最早、この世にこの男を殺せる者は存在するのだろうか。
ジョン・ウィックとロバート・マッコール、果たしてどちらが強いのかと度々思う。試しにおふざけで記事にしてみようかしら
③守る為の、最速にして最後の戦い。『イコライザー THE FINAL』
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『イコライザー THE FINAL』
(”The Equalizer 3")
あらすじ
舞台はイタリア・シチリア島。元DIAの凄腕工作員ロバート・マッコールは、とあるマフィアのワイナリーを襲撃する。
ボスが着く頃には、マフィアのメンバーはほぼ全員ロバートの手によって殺害されていた。
マフィアを壊滅させ、目的を果たしたロバート。しかしそこで不意を突かれ、マフィアのボスの子供が放った銃弾を喰らってしまう。
重傷を負ったロバートは、すぐに地元の町の国家憲兵であるジオに助けられる。治療を受けたロバートは、傷が治るまで町に滞在することになる。
しかし町にはナポリを拠点とするマフィア一味が滞在しており、町を無理矢理リゾート地へと作り変える計画を練っていた。
レストランへの放火、ジオへの暴行、その他数多くの非人道的行為。町は長らくマフィアに苦しめられてきたことを知ったロバートは、またもや自身の前に「悪」が現れたことを悟る。
町の人々、ひいては自身の平穏な暮らしを守る為に、ロバートは再び「悪」との戦いを繰り広げることとなる。
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作品解説
シリーズ最新作。過去2作品に引き続き、監督・主演は続投。
邦題が『〜THE FINAL』とあるように、今作でシリーズ最後のタイトルとなる(原題はナンバリングに則り『The Equalizer 3』)。
今まではアメリカ・マサチューセッツ州を舞台に物語が繰り広げられていたが、今回はイタリア・シチリア島が舞台。
従来のシリーズにおける都市部と打って変わり、今作では雄大なシチリア島の景色を堪能することができる。
あらすじにもあるように、今作はロバートが傷を負ってから物語がスタートする。
マフィアが複数人で襲い掛かろうと、特殊部隊を何人送り込まれようと、傷一つ負わずに単独で全滅させてきたロバート。
そんな彼が傷を負う………しかも命に関わるレベルだ。ここまでくると「彼に何かあったのでは?」と思わざるを得ない。
しかしながら、その答えは意外にも明白だった………その理由とは即ち「老い」である。
完全無欠なロバート・マッコールも、所詮はただの人間。重傷を負えば死にかけるし、歳を食えば身体も衰えてくる。
シリーズ1作目が公開されてから早9年。更にいえばデンゼル自身も既に還暦を迎えている。シリーズの幕が閉じようとしているのもそれが理由だろう。
現に作中では、怪我のせいというのもあるが長い階段を登るのに苦戦するロバートの姿が見て取れる。
今までは(やや誇張した表現だが)冷徹な殺人マシンといった印象が強かったロバートだが、今作ではある意味人間味のある彼の姿を拝むことができる。
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そんな絶賛不調なロバートだが、今回も今までの例に漏れずスイッチが入ってしまったようだ。
いつも通り(?)マフィアに単身で挑み掛かるロバートだが、果たして勝てるのか?
………まぁお察しの通り、またもやロバートの圧勝である。身体が衰えようが怪我が酷かろうが、そんなの関係ないと言わんばかりに今作でも大暴れ。
敵を全て葬り去るまでの時間はおよそ9秒。歴代最速のスピードを叩き出している。
その度を超えた無双っぷりは一種のスプラッター映画と呼ばれるほど。どうやら彼は死以外の罪の償い方を知らないらしい。今更だが。
今まではお人好しな性格故に「誰かのために」戦いへ身を投じていたロバート。だが今回は、今までのそれとは訳が違う模様。
無論、マフィアに迫害される町を救うためというのも理由の一つであるのは確か。
だが何よりも、彼自身がこの町を「自分の居場所」と認識しているから、というのが最大の理由だ。
今までずっと誰かの為に戦っていたのも、今思えば孤独感を紛らわす為、或いは自身の力を振るうことで自身の存在意義を見出す為の行動だったのかもしれない。
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だがこの町は、見ず知らずの自分を温かく出迎えてくれた。そうしてロバートは遂に悟ったのだろう………ようやく自分は居場所を見つけたのだと。
故に、ロバートは老いた身体に鞭打ち、再び戦うことを決意したのだ。町の人々を救うことで、自身も救われる為に。
まさにシリーズの幕引きに相応しいタイトルと言えるだろう。彼の余生が穏やかであることを祈るばかりである。
………と言いつつ、またどこかで悪を粛清すべく大暴れしていそうではあるが。笑
まとめ(あとがき)
『ジョン・ウィック』ぶりのシリーズ解説。必然的に映画レビューよりもボリューミーになってしまうけど、それはそれで書くのが面白かったりする。
先述した通り、このシリーズは『〜THE FINAL』でおしまい。続編やスピンオフの制作とかも現時点ではない模様。
ロバートが現役だった時代を、デンゼルの息子のジョン・デヴィッド・ワシントンが演じるのも面白そうかも?
本当は最新作公開前に書きたかったのだけれど、他にレビューしたい映画が多くそっちに気を取られてしまい。
あーだこーだしていたら、気づけば最新作公開から2ヶ月が経とうとしていた。自身の先延ばし癖を恨むばかりである。
今後のブログ更新に関して、レビューで取り上げたい作品の公開まで期間が空いた場合は、こういった解説や過去作のレビューが多めになるかも。
特に来年初頭あたりはスト等の影響でそうなる確率が高くなるかも。できるだけ活動の勢いは保っていきたい為、精進して参ります。
と、いうわけで今回はこの辺で。
https://eiga.com/movie/100006/gallery/3/
それではまた、次の映画にて。