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【最新映画レビュー】その被造物は「自由」を求めた。『ザ・クリエイター/創造者』レビュー&感想

https://eiga.com/movie/99650/gallery/9/

『ザ・クリエイター/創造者』

(”The Creator”)

作品概要

AIと人類。無機物と有機物。創られしものと創りしもの。今も昔も決して相容れない両者に、共存という道は存在するのか。

『ザ・クリエイター/創造者』は、AIと人類が共存/対立する世界を描くSF映画だ。

監督として、『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』を手がけたギャレス・エドワーズが登用された。

主要キャストとして『TENET テネット』のジョン・デヴィッド・ワシントン、『硫黄島からの手紙』の渡辺謙が出演。

「人類」と「機械」は、往々にして決して相容れないもの。だが人間と遜色ない感情を有す彼らは、果たしてただの「機械」なのか?

従来のSF映画の根底を覆す、衝撃作を目撃せよ。

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あらすじ

今からおよそ10年前。LAに核爆弾が投下され、多くの生命が失われた。

調査の結果、核の投下はAIの仕業だということが判明し、人類はAIとの戦争を宣言。

時は流れ、元特殊部隊のジョシュアは「ある任務」を請け負うことになる。その任務の内容とは「創造者」と呼ばれる存在「ニルマータ」の抹殺だった。

「ニルマータ」は超常的な能力を持ち、戦争の形勢を一瞬で逆転できてしまうほどの力を持つという。

「喪った妻に会えるかもしれない」という誘いのもと、ジョシュアは任務を引き受けることとなる。

現地に向かい、ニルマータを隠しているとされる集落に辿り着き、やがてジョシュアが目にしたものとは………1人のAIの少女だった。

この少女が「ニルマータ」なのかどうかも分からず、ジョシュアは命令に背き少女を連れ逃走

この少女は何者なのか。亡くなった妻は今どこにいるのか。旅路の果てに待ち受ける「真実」とは何なのか………

ジョシュアと、AIの少女「アルフィー」の運命は、やがて世界を変える大きな「歯車」となっていくのであった。

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見所解説①世界よ活目せよ、これが「SF」だ。

ジョルジュ・メリエスの『月世界旅行』から始まり、現在まで数多くの観客を魅了し続けてきた「SF映画」。

最高傑作と称された『2001年宇宙の旅』。金字塔として後世まで語り継がれてきた『ブレードランナー』。映像表現に革命をもたらした『マトリックス』。

映像という存在は、常にSFと共に発展してきたと言っても過言ではないだろう。SFはいつだって、ワクワクと驚きを観客に提供してくれた。

ところで、SFにとって最も重要な要素とは何か。ハイスピードなアクション?複雑かつ緻密な物語?

様々なものが想起させられるが、最も重要な要素とは「世界観」だ。

暗闇に輝くネオンの光。空中浮遊する車。人間社会に溶け込むロボットたち。

世界観こそが作品の基盤たりうるものであり、それがあってこそストーリーやアクションが際立っていくものだ。

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今作『ザ・クリエイター/創造者』、その世界観はまさしく「ザ・SF」と呼ぶべきだろう。

舞台は人類とAIが共存関係を築いているニュー・アジア。中東アジアの情景に、AIをはじめとする機械的な建物が入り混じった摩訶不思議な世界を有する。

まさに『ローグ・ワン〜』を手がけたギャレス・エドワーズにしか作り出せない世界だと言える。公開前は「ニール・ブロムガンプに似てる」なんて言われもしていたが。

中でも特筆すべきはAIの描写だ。人類とAIが共に生活を営んでいるということで、AIがさも人類と同じかのように暮らしているのだ。

その様は実に多岐にわたる。神に祈りを捧げるAI。農作業をするAI。中には寝そべってタバコを蒸すAIなんかもいて………兎にも角にも、その様はいい意味で異質だ。

そんなユニークすぎる世界観を、今作では2時間弱じっくりと味わうことができる。是非ともストーリーだけでなく、シーン毎の情景に目を向けてみて欲しい。

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見所解説②人ならざるものたち、その存在意義とは。

SF映画において、人工知能・AIの存在は極めて普遍的な存在だ。

『ターミネーター』『ブレードランナー』『2001年宇宙の旅』………その他多くの作品にて取り入れられている「AI」という存在。

知っての通り、ほとんどの作品において人類とAIは対立しており、果てなき争いを繰り広げている。

『ターミネーター』シリーズでは核戦争を繰り広げ、『マトリックス』ではAIが人類を仮想世界で支配している。

しかしその一方で、人類に協力的なAIもまた存在する。『ターミネーター2』のT-800、『インターステラー』のTARSなんかはいい例だ。

AIとはすなわち「人工知能」。人の手によって作られたとはいえ、それぞれが独立した思考回路を持ち、独自の考えを導き出すことができるのがAIの特徴だ。

何も極端に「悪者」と決めつける必要はない………彼らは不倶戴天の仇敵にもなれるし、肩を預けれる頼れる仲間にもなれるのだ。

………だが不運にも、今作ではAIをと断定する人類が多数登場するのである。それがニュー・アジアと対立関係にあるアメリカ合衆国だ。

LAでの核の爆発をAIの仕業とし、一方的な殲滅を行う人類。主人公のジョシュアも、アルフィーと出会うまではそちら側の人間だった。

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渡辺謙演じる、AIのハルンは劇中にてこう語る………「私たちはただ、平和に暮らしたいだけなのだ」と。

身体が鋼鉄でできていようと、その心は人類と何ら変わりないもの。故に劇中では、AIの存在意義について問うシーンが数多く存在する。

主要人物の1人であるアルフィーをはじめ、我々観客はAIたちに感情移入させられることとなる。

今までのSF映画では何の違和感もなく観ていた人類とAIの戦闘シーンも、今作ではそうはいかない作りとなっている。

被造物とは排斥されて然るべき存在なのか。はたまた、人類と共に歩むことは許されるのか。

AIという存在が、現実世界においても徐々に身近となってきた今この時代において、到底無視できるものではなくなってきたこの問題

ギャレス・エドワーズが映画界に投じたこの「一石」は、世界を動かすほどの「波紋」となるのか………目を見張っていきたいところである。

個人的な感想

世界観の描写だったりAIに対するシビアな問題だったりと色々と尖った印象を受ける今作だが、意外にもストーリーは家族愛に溢れた、所謂正統派な構成をしていた。

私はこのストーリーの部分にまんまと泣かされてしまったのである………具体的にはジョシュアとアルフィーの関係性に、見事涙腺が決壊してしまった。

また見所解説でも述べた、世界観の描写もまた素晴らしい。今作の上映時間は2時間弱と比較的スマートだが、個人的に3時間でも十分楽しめたと思う。

直近でVODにて『ゴースト・イン・ザ・シェル』を観ていた為に、SF的な世界観の差異も楽しむことができた。次は『ブレードランナー2049』でも堪能してみるか………

2023年下半期を代表する超ビッグタイトルだったが、その名に恥じぬ完成度だと言っても過言ではないだろう。

改めて、ギャレス・エドワーズに盛大なる拍手喝采を。今後とも良質なSFを作り続けて頂きたい所存である。

まとめ(あとがき)

『ゴジラ-1.0』を公開日に観に行った次の日、思いっきりインフルを発症。ウンウンと一週間ほど苦しんでいた為、執筆が遅れてしまった。

加えて同日公開の『キラーズ〜』に比べて中々指が進まず。結果書くのがかなーり遅れてしまったのである。

このブログでは主に洋画を取り上げてきたわけだが、当然『ゴジラ-1.0』のことも記事にするつもりだ。邦画でも興味のあるやつは山ほどあるので。

聞くには海外でも大絶賛だったそうな。そりゃー書くしかねーだろ。その内2回目も観に行きたいな。

と、言う訳で今回はこの辺で。

https://eiga.com/movie/99650/gallery/3/

それではまた、次の映画にて。

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