シリーズ解説

【シリーズ解説】映画史上、最も苛烈な「復讐劇」『ジョン・ウィック』シリーズを一挙解説!!

『ジョン・ウィック』シリーズとは

かつて最強の殺し屋として名を馳せた男「ジョン・ウィック」を主人公に物語が展開していくクライム・アクション映画シリーズ『ジョン・ウィック』。

主演を『マトリックス』で有名なキアヌ・リーブスが担当。制作の立案自体もキアヌ本人が立てたものだった。

今やキアヌの『マトリックス』に並ぶ代表作となっている。

そんな本シリーズの全4タイトルの監督を務めるのがチャド・スタエルスキ

かつて『マトリックス』でキアヌのスタントを務めた経験があり、故にキアヌとの仲も良い。

また『デッドプール2』『ワイルド・スピード/スーパーコンボ』を手掛けたデヴィッド・リーチもまた『ジョン・ウィック』シリーズには欠かせない存在。

1作目ではチャドと共に監督を、2作目以降は製作総指揮として参加している。

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数あるアクション映画、ひいては近年公開されたものたちと比べても、クオリティ・人気双方共に高水準を保っているのが今作の特徴。

余計なストーリーを廃し、ただひたすらに銃で敵の頭をブチ抜いていくハードボイルドなアクション、その爽快感疾走感が人気の秘訣かもしれない。

そして本シリーズは、アクション映画における新たなるジャンルを確立させるに至った。

ガン・アクションカンフー・アクションの融合、通称「ガン・フー」だ。

日本の殺陣アクションやアニメ、香港映画のカンフーマカロニウエスタンなど、国内外の数々のジャンルに影響を受け誕生したという。

シリーズが続いていくにつれ、出演キャストもだんだんと豪華になっていくのも今作の特徴。

それに伴い舞台も世界規模のものとなっていき、最新作『〜コンセクエンス』では日本も登場。相変わらずの『ブレードランナー』よろしくネオンが輝くなんちゃって日本だが。笑

歪で厳かで雅な裏社会の世界観、義理も人情もへったくれもない登場人物たち、そして誰もが見惚れるキレッキレなアクション。

今作から放たれる魅力という名の弾丸からは、誰も逃れられない。

「闇の者」の鮮やかなる復讐。『ジョン・ウィック』

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『ジョン・ウィック』

(”John Wick")

あらすじ

男は妻を心から愛した。己が人生の全てを賭けて得たものを、彼は愛のために全て捨て去った。

しかし程なくして、妻は命を落としてしまう。

失意の中、亡き妻からある贈り物が届く。それは一匹の犬だった。

「貴方には愛する相手が必要よ」そう言い残して逝った妻。彼は妻の言葉通り、犬を愛することにした。

だが安息も束の間、彼はひょんな事からとあるマフィアの息子の逆鱗に触れてしまう。

滅多打ちにされ、車を奪われ、そして………愛すると決めた犬をも喪ってしまった。

数日の内に、自身の大切なものたちを失い、奪われてしまった男。

やがて男は「かつての自分」へと舞い戻り、復讐を決意する。漆黒のスーツ、一握りのナイフ、そしてを持って。

男の名は「ジョン・ウィック」。かつて裏社会に名を轟かせた、最強の殺し屋である。

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作品解説

記念すべきシリーズ第1作。監督をチャド・スタエルスキデヴィッド・リーチのコンビ、製作総指揮と主演をキアヌ・リーブスが務める。

あらすじの通り、今作は「復讐」がメインのストーリー。

今やキレキレなアクションが代表的な要素となっている本シリーズだが、今作ではあくまでも「復讐」を引き立てる要素として機能している。

とは言えど、この頃から既に「ガン・フー」スタイルのアクションは確立されており、見応えは抜群。

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今作においてやはりミソなのは「たかが犬と車、されど犬と車」ということ。客観的に見れば、ただペットの犬と愛車を奪われてしまった、ただそれだけのこと

ましてや相手がマフィアとなれば、報復という行為は即ちを意味する。

しかし、ジョン・ウィックからすれば「それだけのこと」では済まない。

なぜならその奪われたものたちは、ジョンにとって欠いてはならないものたちだからだ。

そんな尊きものたちを、いとも容易く奪われた。ジョンが過去の自分に戻るには、それで十分すぎる理由だった………

ジョンにとっては、ただ「それだけのこと」に過ぎない。

そしてこの「小さく壮絶な復讐」は、後に裏社会の基盤を揺るがす大いなる衝撃へと発展していくのだった。

あれもこれも、全ては某マフィアの息子がやらかしたことが原因、と考えると中々に恐ろしい。

またジョンの復讐譚だけでなく、スタイリッシュかつ厳かな裏社会の世界を拝めるのも今作ひいては本シリーズの見どころ。

NYを拠点とする殺し屋たちの拠点「コンチネンタル・ホテル・NY」をはじめ、超クールなアンダーグラウンドの世界観にどっぷり浸れるのもまた醍醐味だ。

華麗に、紳士らしく、殺りまくれ。『ジョン・ウィック:チャプター2』

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『ジョン・ウィック:チャプター2』

(”John Wick: Chapter 2”)

あらすじ

ヴィゴ率いるタラソフ・ファミリーを壊滅させ、新たに犬を迎え再び平穏な生活を送ろうとしていたジョン・ウィック。

しかしながら、一時的ではあるものの「伝説の殺し屋の帰還」は、裏社会に大きな波紋を呼ぶことになる。

ジョンの家に訪れたのは、イタリア系犯罪組織「カモッラ」を率いるサンティーノ・ダントニオ。ジョンが現役だった頃に交わした「誓印」を条件に、ある「仕事」を頼み込む。

一方、ジョンは今度こそ引退を決意しサンティーノの「仕事」を断ってしまう。

サンティーノは仕方なくジョンの家を後にするが、その報復としてジョンの家を爆破。妻との思い出は全て炎に飲み込まれてしまう。

「誓印」の力は絶対………仕方なくサンティーノの「仕事」を引き受けることにしたジョン。

その内容とは、裏社会を統率する組織「主席連合」の幹部の座に就こうとする、姉ジアナの抹殺だった。

結果としてジアナの抹殺には成功したものの、サンティーノは口封じのために刺客を送り込む。

更にジョンへ700万ドルの懸賞金をかけたことで、世界中の殺し屋たちがジョンの命を狙うこととなった。

世界最強の殺し屋 vs 世界中の殺し屋たち………一石を投じられた裏社会は、更なる「混沌」へと変化してゆく………。

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作品解説

れっきとした『ジョン・ウィック』の続編ではあるが、前作からわずか5日後の出来事。

シリーズ間の時系列の間隔が非常に短い、というのもまた本シリーズ唯一無二の特徴だ。

「コンチネンタル・ホテル」に続き、「主席連合」「誓印」など前作から更なる世界観の広がりを見せてくれるのが今作の主な特徴。

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それに伴ってか、今作は前作よりも「スタイリッシュさ」が際立っているようにも思える。

依然として「復讐」に因んだ要素は健在なものの、今作は「裏社会のクールさ」を際立てることに専念している印象。

ジアナ抹殺のために、ジョンがヨーロッパの各所にあるコンチネンタルのサービスで下準備を整えていく一連のシークエンスは必見。

ジョン・ウィック/キアヌ・リーブスの魅せるアクションは相も変わらず「無双」の一言。

例えその数が十数人に上ろうと、一瞬たりとも怯まず頭を撃ち抜いていく様は最早「カッコいい」を超えて「美しい」の領域。

ひとえにアクションと言っても、その「殺し方」は実に多岐に渡る為、そこに着目してアクションシーンを堪能するのもまた一興と言えるだろう。

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また、メインキャストとしてローレンス・フィッシュバーンが出演しているのもまた今作の大きな特徴。

言わずもがな、キアヌとローレンスの共演『マトリックス』で非常に有名。ここに『マトリックス レボリューションズ』以来、実に14年ぶりの共演を果たすこととなった。

タイトルが進むにつれ、内容も豪華絢爛となっていく『ジョン・ウィック』シリーズ、その勢いは弾丸の如く止まることを知らない。

「平和を望むなら、戦いに備えよ。」『ジョン・ウィック:パラベラム』

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『ジョン・ウィック:パラベラム』

(”John Wick: Chapter3 - Parabellum")

あらすじ

サンティーノ・ダントニオとの死闘の果てに、コンチネンタル・ホテルにて彼を殺害

業界では禁忌とされる「聖域の掟」を破ってしまったジョン。

コンチネンタル・ホテル・NYの支配人であるウィンストンは、ジョンに1時間の逃亡の猶予を与えジョンを追放

これによりジョンは、今までは利用できていたコンチネンタル・ホテルのサービスを一切利用できなくなってしまう。

ジョンに課せられた懸賞金1400万ドル。これを狙い世界中の殺し屋たち、そしてあの「主席連合」までもがジョンの命を狙うこととなる。

四六時中命を狙われ続ける死線を潜り抜け、かつて現役時代に協力関係にあった人物や組織を訪ね助けを求めるジョン。

共闘した仲間、殺しの技を叩き込まれた組織………ジョンの目的とは、主席連合の「首長」に会うことだった。

しかし主席連合は彼を逃さない。そしてその魔の手は、ジョンだけでなくウィンストン、そしてバワリー・キングにも伸びようとしていた。

未だかつてない「死闘」の連続。その結果は「平和」か、或いは新たなる「戦争」か………。

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作品解説

【公開:2019年5月17日(米国)2019年10月4日(日本)】

シリーズ3作目にして、本シリーズの「アクション祭り」的要素が遂に大爆発。

まず冒頭5分も経たずして早速殺し合い。やっと一息ついたと思ったらまた殺し合い。移動の際も常に殺し合い。

最早狂気的とさえ思える、圧倒的密度で繰り広げられるアクション・フェスティバル。

前作からやや薄れ気味であった1作目のテーマ「復讐」は、今作でほぼ完全に息を潜めたと言える。

ひとえにアクションと言っても、そのジャンルは実に多岐に渡る。

いつもの「ガン・フー」から、ナイフの投擲、疾走感あふれるバイクチェイス、果てにはをも駆り出すジョン。

更に、シリーズには欠かせない「犬」も今作では大暴れ(厳密にはジョンの犬ではないが)。敵の頭やアソコを喰いちぎりまくる。

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いよいよアクション映画として真なる覚醒を遂げた『ジョン・ウィック』シリーズ。

そのあまりにも高すぎる密度から、良くも悪くも「キアヌ・リーブスのアクションお披露目会」となっているのは正直否めない。

しかしながら、何十にも上るアクションシーンの数々、その全てがクオリティ抜群なのもまた事実。

1作目では「復讐」によって生み出されていた「爽快感」は、今作では「アクション」による「爽快感」へと変貌を遂げていた。

常に加速し続ける、ジョンの2時間半にも及ぶ激闘の連続に、目を奪われること間違いナシ。

復讐の死闘、その「報い」の果てに。『ジョン・ウィック:コンセクエンス』

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『ジョン・ウィック:コンセクエンス』

("John Wick: Chapter 4”)

あらすじ

コンチネンタル・ホテル・NYでの決戦の末、ウィンストン主席連合の元に降った。

ジョンはウィンストンの銃弾を受け傷を負い、バワリー・キングと共に息を潜めつつ、主席連合への恨みを募らせていた。

その後、ジョンは自身の結婚指輪を奪い去った首長を探し出すも、首長は既に入れ替わっていた。

首長は「私を殺しても何も変わらない」とジョンに警告する。しかしジョンはその言葉に意も介さず、首長を殺害する。

この出来事を受け、主席連合の首長として新たにグラモン侯爵が就任。

グラモンは首長殺しのジョンを生かしたことへの報復で、ウィンストンの支配人の権限を剥奪すると共にコンチネンタル・ホテルを爆破。コンセルジュのシャロン射殺されてしまう。

主席連合は今度こそジョンを抹殺する為、盲目の殺し屋にしてジョンの旧友であるケインを娘の命を人質に協力を強要する。

一方ジョンは、友人であるシマヅに匿ってもらう為大阪のコンチネンタル・ホテルへ訪れる。しかしそれでも尚、主席連合は彼を逃さなかった。

わずか一年も経たずして生まれた「報い」の連鎖。血で血を洗う壮絶な死闘、その果てに夜明けを迎える者は果たして誰か。

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作品解説

第4作目にして「報い《Consequence》」即ち「復讐」というテーマに帰結した、ある意味原点回帰とも言えるタイトル。

今作は何と言っても出演者が未だかつてない程に豪華世界中のアクションスターたちが、この壮絶極まりない死闘に身を投じることとなった。

香港アクション映画の大スタードニー・イェンに、我らが日本の真田広之が参戦。

他にも『IT/イット ”それ”が見えたら、終わり』ビル・スカルスガルドも出演。

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特にドニー・イェン扮するケインは、ジョンに次ぐ今作の主役と言っても過言ではない。

長らくジョンらを苦しめてきた主席連合との決戦とのことで、今作は言わばシリーズの集大成的な作りとなっている。

前作よりも更に進化した「アクション祭り」に、報復・復讐をテーマに据えた「原点回帰」

それはまるで『ジョン・ウィック』シリーズの幕が閉じようとしているかのよう。

「犬を殺され、車を奪われた」………たったこれだけのほんの些細な出来事がここまでのスケールにまで発展したというのは実に感慨深い。

それと同時に、このシリーズはいつだって「報い」というテーマがあったんだと気付かされる。

かけがえのないものを奪った「報い」、家を壊された「報い」、自分を殺そうとした「報い」………

幾多もの命を奪ってきたジョンは、いつだって「報い」に従って銃の引き金を引いてきたのだ。

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そしてジョン自身もまた多くの人の「報い」を背負ってきた。それは現役の時代だろうと引退した後の時代だろうと関係ない。

そしてその「報い」は、到底「死」では償いきれないほどに膨れ上がってしまった。

いつか訪れるジョンの「死」の後に何が待っているのか………それはウィンストンだろうと主席連合だろうと、そして我々でさえも知る由もない。

果てなき「報い」のその終わりに、彼は何を見たのか。安らぎか、或いは苦痛か、その答えを知る為に、彼は報復の銃弾を撃ち放つ。

まとめ(あとがき)

最新作『〜コンセクエンス』が最近公開されたとのことなので、いっちょ解説系でも書いてみるか!!と思い執筆に至ったのだが、如何だっただろうか。

本シリーズの大ヒットにより、現在続々と派生作品が制作されている模様。

ジョンの視点以外でも、あの魅力的な世界を堪能できるとは嬉しい限りだ。

若き頃のウィンストンやシャロンを描いたドラマシリーズ『ザ・コンチネンタル:ジョン・ウィックの世界から』は現在Amazon Prime Videoにて配信中。

また『〜パラベラム』にてちらっと登場したバレリーナを主役としたスピンオフ『バレリーナ』も制作中とのこと。

劇中ではジョンがサプライズ出演するなんていう噂も。

個人的にはジョンの全盛期を描いた『ジョン・ウィック:オリジン(仮題)』を観てみたい所存。

引退のキッカケとなったあの「遂行不可能な仕事」とは何だったのか、めちゃくちゃ気になる。

と、いうわけで今回はこの辺で。今後も様々な形で続いていくであろう『ジョン・ウィック』シリーズ、気長に待つとしよう。

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それではまた、次の映画にて。

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