
『プレデター』シリーズとは
ハリウッド映画の長い歴史において、主人公ら人類を陥れる人ならざる存在………通称「クリーチャー」は様々な形で登場してきた。
彼らが人間を襲う理由は様々だ。縄張り意識のため、復讐のため、あるいは単なる攻撃的な本能のため………
本記事で紹介するクリーチャー、通称「プレデター」もまた、人類を窮地に陥れる存在だ。しかしその理由は、他のクリーチャーたちとは大きく異なる。
彼らは人間を、本能に従って殺すのではない。彼らは人間を「狩り」の為に殺すのだ。
1987年、20世紀フォックス配給の元公開され大ヒット。同じく20世紀フォックス出身のクリーチャーであるエイリアンと共に、ハリウッドで最も有名なモンスターとして名を馳せた。
公開から40年近く経った現在も根強い人気を博しており、エイリアンと共に格闘ゲームへDLCキャラとして参戦したことも。

「狩り」を生業とするプレデター、その相手が人間だろうと何であろうと、多種多様な装備を用いて狩りを行う。
代表的な装備として挙げられるのは光学迷彩装置、プラズマ・キャノン、そして象徴的なヘルメットだ。どの作品でも、この三つは必ずといってもいい程登場している。
プレデターは基本的に単独で「狩り」を行うが、基本的にはターゲットを死角から狙う。木の茂みや木の上から光学迷彩装置を使い、全身を透明化させるのだ。
透明化の装置は基本的に腕に装着したガントレットを用いて起動する。逆にそこを破壊してしまいさえすれば、プレデターは透明化ができなくなり大幅に弱体化する。
プレデターが戦闘に使用する装備で、恐らく最も多く用いられているのが肩に装着したプラズマ・キャノンだ。超遠距離からでも威力を発揮できる為、一対一の戦いでも多用されている。
このプラズマ・キャノンの威力は絶大であり、人間の身体に直撃すれば即死は免れない。加えてヘルメットに備えられた照準機能により、百発百中の精度を誇る。
そんなヘルメット、キャノンの照準機能だけでなくプレデターの視界をサポートするという機能もついている。
プレデターは生物の熱源反応を元に獲物を探知しており、その為視界は真っ赤。ヘルメットは視界を赤外線で表示し、加えてズーム機能も備わっている。
ちなみにプレデターのヘルメットの下に隠された素顔は非常に醜い。その為「狩り」の間は滅多に外さないが、ターゲットとの一騎打ちの際はヘルメットを外し戦いに臨む。
https://eiga.com/movie/88482/gallery/
さてそんなプレデター、様々な装備を備えているだけでなく種族としての独特な掟・慣習を有していることでも有名だ。
「名誉なき者は一族にあらず。そして名誉のために戦わぬ者に名誉はない。」
この信条通り、彼らは「狩り」に種族としての存在意義、そして文化を持っている。
こうしたプレデター特有の文化は、どの作品にも共通して現れている………が、登場する個体の種類によって掟が適応されない場合もある。
彼らの持つ「狩りの掟」は以下の通りだ。
- 自らよりも弱い獲物(無抵抗の女性や子供)は狩りの対象にしない。
- 味方・敵問わず、勇敢な戦士には敬意を表する。
- 倒した敵の頭部をトロフィーとして保管する。
- 敗北した際は、部族の掟により自爆する。
- エイリアンを成人への通過儀礼として狩猟する。
狩りの成功こそが部族最大の名誉であり、逆にターゲットに「狩られる」ことはそれに次ぐ名誉となる。まさしく「狩りのため」だけに生まれた生物だ。
こうした、ただ人間を快楽のために殺すのではなく、「狩り」として、そして「戦士」としての掟や名誉のために人間と戦う(或いは共闘する)、という性質から非常に高い人気を得ている。
特に我ら日本人は、所謂「武士道精神」に通ずるものを感じるのではなかろうか。
狩るか、狩られるか。『プレデター』
https://eiga.com/movie/49023/photo/
『プレデター』
("Predator")
あらすじ
ゲリラ部隊に誘拐されてしまった政府の要人たちを救出するため、部隊を引き連れとあるジャングルへと赴いたダッチ少佐。
調査の最中、皮を剥がれ木に吊るされた死体を目撃する一同。敵の部隊は非常に残虐であると悟りつつも、ジャングルの奥地へと足を踏み入れていく。
しかしその最中、メンバーが1人ずつ殺されていくという事態が発生する。ゲリラ部隊の仕業と目を見張るも………周りには誰もいない。
不審に思ったゲリラ部隊の1人がジャングルを捜索し、そこで見つけたのは………不自然にジャングルの密林から浮かび上がる透明化した身体と、輝く双眸だった。
次々と不審死していく隊員、そして謎の生命体。そこで部隊はようやく悟る………自分たちは「狩り」の獲物であるということを。
作品概要
シリーズ1作目。『ダイ・ハード』を手がけるジョン・マクティアナンが監督を務めた。
主役のダッチ少佐を演じるは、みんな大好き「シュワちゃん」ことアーノルド・シュワルツェネッガー。『ターミネーター』や『コマンドー』と同じく、80年代における彼を代表するアクション映画の一つとなった。
ジャングルという視界が遮られやすい環境、そしてプレデターという見えざる敵。一作目にして、プレデターの魅力を全面的に押し出している。
非武装状態だったヒロインは襲わないなど、前述したプレデター特有の習性が垣間見えるシーンもチラホラ。
https://eiga.com/movie/49023/
姿の見えない敵から隊員が1人、1人と殺されていく展開はまさに恐怖そのものであり、緊張感も凄まじい。
しかしさすがはシュワちゃん主演の映画とだけあって、超ド派手なアクションシーンも一つの見どころ。
隊員がプレデターを発見し「いたぞぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」と叫びながら部隊全員で銃を乱射するシーンは、シンプルながらもシリーズ随一の名シーン。
どの作品でも、その圧倒的なマッスルを以てして敵を打ちのめしてきたシュワちゃん、その相手は遂に人間を超えて地球外生命体に。
狩るか、或いは狩られるか………後に続くシリーズのマスターピースとなった今作は、まさに必見の作品だ。
熱気蠢く、大都会にて。『プレデター2』
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『プレデター2』
("Predator 2")
あらすじ
最大気温が40℃を超える異常気象に見舞われたロサンゼルス。劣悪な治安により麻薬カルテルが跋扈しており、警察は日々彼らとの熾烈な戦いを強いられていた。
抗争の現場に到着したハリガン警部補は、上の命令を無視しカルテルのアジトに突入。しかしそこには、カルテルの構成員の死体が天井に大量に吊るされているという、見るも無惨な光景が広がっていた。
ここまで短時間でカルテルを全滅させ、ましてやその遺体を吊し上げるなど到底不可能だ。不審に思うハリガンだったが、事件の真相を追うべく捜査を引き継ぐことに。
だがその直後、またもや別の麻薬カルテルが何者かによって全滅させられるという事件が起こる。
明らかに人間ではない「何か」が暗躍していると踏んだハリガン。だがその「人ならざるもの」の歯牙は、遂に麻薬カルテルだけでなく警察にも向けられてしまう。
同僚を殺され、上からこれ以上頭を突っ込むなと諭されるも、同僚の仇を討つべく独断で調査を開始するハリガン。
だがそこでハリガンは衝撃的な事実を発見する………その「人ならざるもの」とは、人間を狩るために地球へと降り立った、宇宙最強のハンター………「プレデター」だということを。
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作品概要
シリーズ2作目。プレデターと人類の「狩場」は、ジャングルからロサンゼルスの市街地へ。
スティーヴン・ホプキンスが監督を務め、シュワちゃんに代わりダニー・グローヴァーが主役を務めることに。
「無抵抗の子供や非武装の人間は襲わない」「勇敢な戦士には敬意を表する」など、前作では語られなかったプレデターの習性が今作ではわかりやすく描写されるように。
前作においてはただ冷徹に人間を狩る地球外生命体だったのが、今作で随分とキャラクター性が追加されたように思える。人間の言葉をコピーし使うプレデターの姿はどこかコミカルさすら感じられる。
加えて舞台がジャングルから市街地に移ったことにより、前作とはまた違ったベクトルでプレデターのカッコよさを堪能することができるように。
透明化装置を使ったことにより、身体に稲妻を走らせながらこちらへ歩み寄る、水面に映るプレデターの姿は文句なしのカッコ良さ。
前作と比べるとやや不評気味な今作ではあるが、それでも前作とはまた違った魅力を持つタイトルと言えるだろう。
最強 vs 最恐。『エイリアン VS. プレデター』
https://www.amazon.co.jp/dp/B000O78IIA?tag=eigacom-movie-22&linkCode=ogi&th=1&psc=1
『エイリアン VS. プレデター』
("AVP: Alien vs. Predator")
あらすじ
2004年、人工衛星が南極のブーヴェ島の地下奥深くに、ある大規模な熱源反応があることを発見。調査を進めるうち、そこには未発見の超巨大遺跡が埋まっていることが判明。
これにウェイランド社は、社長のビショップ含めた調査隊を結成、ブーヴェ島への調査を開始することに。
地下遺跡に辿り着き、内部に入るため遺跡のギミックを起動する一同。だがその影響で、調査隊は遺跡内で散り散りになってしまう。
加えて不運にも、遺跡が起動したことにより、遺跡に長らく眠りについていた「怪物」………「エイリアン」が覚醒してしまう。
恐怖に怯える調査隊だったが、その最中で彼らはこの遺跡の「真実」を知る………この遺跡とは地球外生命体「プレデター」の慣習に由来しており、彼らが成人の議を迎えるために作られた「闘技場」だったのだ。
遺跡の起動に呼応するかのように、地球へと辿り着いた3体のプレデター。だが時を同じくして、エイリアンの生みの親であるクイーン・エイリアンも目を覚まし、エイリアンの卵を次々と生み出してしまう事態に。
「宇宙最強のハンター」プレデター、対、「宇宙最恐の生命体」エイリアン。狩るか狩られるか、殺るか殺られるかの、究極の戦いが今始まろうとしていた。
https://eiga.com/movie/1014/gallery/
作品概要
20世紀フォックスを代表するクリーチャー、エイリアンとプレデターがまさかの激突。『プレデター2』から囁かれていた夢の共演が遂に実現した。
監督を務めたのは、ミラ・ジョヴォヴィッチ主演『バイオハザード』シリーズで有名なポール・W・S・アンダーソン。サナ・レイサンやラウル・ボヴァが出演した。
本記事では『プレデター』シリーズの作品として紹介するが、正確にはクロスオーバー作品という立ち位置であり両シリーズとは異なる世界線である可能性が高い(『プレデター』シリーズと同じ世界線という説もあるが真偽は不明)。
先ほどプレデターの生態や習性をサラッと解説した際に先述したように、プレデターにとって「エイリアンの狩猟」は非常に大きな意味を持つ。
しかし知っての通り、エイリアンを狩るということはとても一筋縄ではいかない。エイリアンもまた、強靭な生命力や異常なまでの凶暴性、超強酸性の血液など多くの特徴を兼ね備えている。
故に両者の力は常に拮抗しており、完全に互角。人間相手にあれだけ無双していたプレデターも、エイリアンの手によって命を落としてしまうパターンも多々存在する。
今作では3体のプレデターが、遺跡に潜む夥しい数のエイリアン、そして『エイリアン2』ぶりの登場となるクイーン・エイリアンと死闘を繰り広げる。
だが今作の魅力はそれだけではない。エイリアンによって次々と仲間が殺されていく中、主人公のアレクサはプレデターと共闘することになる。
今まで人間を「狩りの対象」としか見ていなかったプレデターが、共に肩を並べて戦う「戦士」として認めたのはシリーズでは初めての出来事。
エイリアンも、単独シリーズではあまり使ってこなかった鋭利な尻尾をメインウェポンとしてプレデターと戦う。シリーズおなじみのインナーマウスによる即死攻撃も健在。
クロスオーバーという一種のスピンオフ作品ではあるものの、間違いなく『プレデター』シリーズの人気を確固たるものとしたタイトルの一つであることは確かだ。
それは、慈悲無き「鎮魂歌」。『AVP2 エイリアンズ VS. プレデター』
『AVP2 エイリアンズ VS. プレデター』
("Aliens vs. Predator: Requiem")
あらすじ
南極にて人間と共にエイリアンとの死闘を繰り広げ、部族として最大の名誉を受け命を落としていったプレデター。だが不運にもそれは、更なる「絶望」の始まりだった………
プレデターの体内にて密かに植え付けられていたチェストバスターが覚醒し、瞬く間に成長。プレデターの遺伝子情報をそのままに成体へと成長した、新たなるエイリアン「プレデリアン」が誕生した。
プレデリアンの生まれた宇宙船は地球へと墜落し、その衝撃で船内に保管されていたエイリアンのフェイスハガーが大量に解き放たれてしまう。
かくしてエイリアンは地球にて大量に繁殖し、成体へと成長したエイリアンたちは民間人を次々と殺戮し始め、付近の町は瞬く間に地獄絵図に。
だが時を同じくして、宇宙船の緊急信号を受信したプレデターたちの住まう星から、「掃除屋」としての役割を担うプレデターが地球に到着。数々のエイリアン、そしてプレデリアンと対峙する。
騒動は徐々に大きく発展し始め、軍まで動き出す事態に。雨降る闇夜の中、絶望の慟哭が鳴り響く………
https://eiga.com/movie/53075/gallery/4/
作品概要
エイリアンとプレデター、再び激突。監督はポール・W・S・アンダーソンからコリン・ストラウスとグレッグ・ストラウスの兄弟に交代した。
アクション映画的要素が強めだった前作から打って変わり、今作はかなりホラーなテイストに。加えて『エイリアン4』のような残虐な描写も多く、PG-12に指定されている。
闇夜から忍び寄るエイリアン、暗闇からサーチライトを照らすプレデター。両者とも「暗闇」という舞台装置に対する適性は非常に高い。
しかし周知の通り、この「暗闇」という舞台が今作の低評価にも繋がってしまっている。兎にも角にも、暗すぎて何も見えないのだ。
劇中通して舞台はずっと夜であり、加えて雨も絶えず降り続けている。果てには常に薄暗い下水道でプレデターとエイリアンが戦い始めてしまう始末だ。
お互い黒を基調としたキャラクターなので、暗いところでは見えにくくなってしまうのは必然の流れ。演出的には素晴らしいのだけれどね。
https://eiga.com/movie/53075/gallery/6/
しかしながら『エイリアン』シリーズとして見ても、主人公のリプリーが何としてでも阻止したかった「エイリアンが地球で繁殖した」という最悪以外の何者でもない事態となっており、
そんなエイリアンたち、そして新種のプレデリアンが大人子供を見境なく殺戮し始めるなど、今までのシリーズでは見られなかったエイリアンの新たなる恐怖を堪能することができる。
前作とはまた違ったテイストの、エイリアンとプレデターの戦いも必見だ。