SSU(ソニーズ・スパイダーマン・ユニバース)とは
2002年、サム・ライミ監督、トビー・マグワイア主演で誕生した『スパイダーマン』。一昨年に公開された『Xメン』と同様大ヒットを記録し、アメコミ映画の人気を確立させるに至った。
この時、日米双方において配給を務めたのがソニー(ソニー・ピクチャーズ・リリーシング)。その後長年に渡り、ソニーが『スパイダーマン』の映画化の権利を有していた。
詳細はここでは割愛するが、どうもMARVELとの争いがあった模様。故に互いの関係はギクシャクしていた。
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しかし2016年、MCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)の作品である『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』にて、トム・ホランド演じるスパイダーマンが電撃参戦。
その後も『スパイダーマン:ホームカミング』といった単独作や『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』にも登場するなど、ソニー絡み以外の作品でも大活躍することとなった。
しかしながらその一方で、ソニーは別プロジェクトとしてスパイダーマン関連のシリーズに着手すると発表。そうして始動したのがSSU(ソニーズ・スパイダーマン・ユニバース)だ。
主役となるのは、やはりシリーズのタイトルにもあるスパイダーマン………ではなく、原作において彼と対決することとなるヴィランたち。
ヴィランといっても、完全悪としてでなく正義の側面も併せ持つ、所謂「ダークヒーロー」として描いている。
今までに6作品が公開され、世界的な人気を博すこととなる………が、一部の作品は評価が芳しくない故にネットミーム化しているものも。
「MARVELはMCUだけじゃないんだぜ!!」と言わんばかりの勢いを見せているSSU、その軌跡を見ていくとしよう。
史上”最悪”、誕生。『ヴェノム』
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『ヴェノム』
("Venom")
あらすじ
アメリカ・サンフランシスコで活躍する記者、エディ・ブロックは、超大企業・ライフ財団が秘密裏に人体実験を行っているという噂を耳にする。
その噂によれば、ライフ財団は街のホームレスを誘拐しては、組織内で実験を行い数多くの死者を出しているという。
必ず真相を突き止めると意気込むエディは、財団のCEOであるドレイクに直接取材。人体実験について問い詰める。
しかしこの行いがドレイクの怒りを買ってしまい、結果エディは記者をクビに。結婚を視野に入れていた恋人にも振られ、全てを失ってしまう。
そこから半年後。財団にて研究を執り行っているドーラ博士がエディに接触し、施設内に侵入し真実を公にして欲しいと懇願される。
真夜中、単独で施設に忍び込むエディ。そこでは噂通り秘密裏に人体実験が行われており、多くのホームレスが隔離されていた。
そんな中、実験室の一角にて知り合いのホームレスに出会うエディ。だが声をかけるや否やホームレスはエディに襲い掛かり、やがて謎の液状の生命体がエディの中に入り込む。
その後エディは施設を脱走することに成功するが、それ以降「謎の声」が頭の中で響くようになり、やがて過度な食欲に駆られるなど「何か」に取り憑かれたかのようになってしまう。
エディの身体に入り込んだ謎の生命体、通称「シンビオート」は、エディの身体を乗っ取り「ヴェノム」として欲望の赴くままに全てを喰らい尽くさんとしていた。
不本意ではあるものの、身に余るほどの強大すぎる力を手にしてしまったエディ。彼の行く末は、史上最悪の残虐なる「悪」か、或いは………
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作品概要
シリーズ1作目は、スパイダーマンの因縁の宿敵にしてライバルである「ヴェノム」の単独作。原作でも非常に人気のあるキャラクターだ。
監督は『ゾンビランド』のルーベン・フライシャー、主演は『マッドマックス 怒りのデス・ロード』のトム・ハーディ。
トム・ハーディはエディ・ブロック役を演じると共に、ヴェノムの声優及びモーションキャプチャーも行っている。
実はサム・ライミ監督、トビー・マグワイア主演の『スパイダーマン3』にもヴィランとして登場したエディ・ブロック/ヴェノム。
当然出演している俳優も異なるが、加えてヴェノム自体のキャラクター性も原作とは大きく異なっている(喋らないためただの凶暴な怪物と成り果てている、スパイダーマンと同様細身なフォルム、など)。
しかし今作のヴェノムは原作の姿を色濃く残しており、胸のスパイダーマンのマークはないものの筋骨隆々なヴェノムの姿を拝むことができる。
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シンビオートに取り憑かれたら最後、宿主は死ぬまで僕と化す。身体の主導権を乗っ取られ、シンビオートの欲望の赴くままに、暴虐の限りを尽くされる………
予告編からも分かる通り、シンビオートを身体に宿した者の末路は悲惨だ。記者として活躍し、結婚を控えた恋人もいた、まさに順風満帆な生活を送っていたエディ・ブロックもその被害者の1人だ。
シンビオート「ヴェノム」に身体を乗っ取られ、自分の意思とは関係なしに人々を傷つけ始め、その強大な力に戸惑いながらも徐々に魅了されていく、そんなエディを描いた非常にダークなヒーロー映画………
かと思いきや、その中身は意外にも王道のヒーロー映画だ。MARVEL史上最も残虐なヒーロー映画………と見せかけ、エディとヴェノム、2人の凹凸コンビがスタイリッシュに戦うアクション映画に仕上がっていた。
ヴェノムも、残虐非道なシンビオート………という訳でもなく、ちゃんと宿主のエディの命令に従う忠犬っぷりを見せている。結果として「カッコイイ」よりも「カワイイ」が勝ってしまっている状態だ。
ゴツいフォルムのヴェノムから繰り出されるアクションは迫力満点。2人が完全に同化した際に行われる小気味いい掛け合いもポイントだ。
世界的にも大ヒットを記録し、最高のスタートダッシュを見事に決めたSSU。必然的に『ヴェノム』も、MCUにおける『アイアンマン』のようにユニバース全体の顔となるタイトルとなったのであった。
崩れて繋がる、”最悪”の友情『ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ』
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『ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ』
("Venom: Let There Be Carnage")
あらすじ
ドレイクとの戦いに勝利したエディ・ブロックは、地球外生命体・シンビオートのヴェノムと共に共同生活を営んでいた。
しかしながら、ヴェノムは人を食べたいという衝動を抑えきれずにいた。そんなヴェノムを制御すべく、エディは四苦八苦しながらも共に生活していた。
そんなある日、連続殺人鬼として収監されているクレタス・キャサディへの取材のチャンスを手に入れる。
クレタスとの対談の後、エディはヴェノムの協力のもと彼が新たに隠していた死体の居所を掴む。結果としてクレタスは死刑が確定し、エディは手柄を上げることに成功する。
しかしその後の取材で、クレタスはエディを挑発。ヴェノムは激怒しクレタスに掴みかかるが、その際にクレタスはヴェノムのシンビオートに噛み付いてしまう。
折角の取材が台無しになったと叱りつけるエディに、ヴェノムも激昂。結果2人は喧嘩別れしてしまい、離れ離れになってしまう。
一方クレタス、電気椅子による死刑の直前に、ヴェノムに噛みついたことで体内に取り込まれていたシンビオートが覚醒。
鮮血の如き真紅の身体とヴェノムを遥かに凌駕する凶暴性を持つ、史上最悪のシンビオート「カーネイジ」が誕生してしまうのだった。
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作品概要
シリーズ2作目。モーションキャプチャー・アクターとして有名なアンディ・サーキスが監督を務め、エディ・ブロック/ヴェノム役のトム・ハーディは続投。
今作のヴィランを務めるクレタス・キャサディ/カーネイジにはウディ・ハレルソンが、その恋人であるフランシス・バリソン/シュリークにはナオミ・ハリスが抜擢された。
前作におけるヴェノム、ヴィランのライオットに続き、新たなるシンビオート「カーネイジ」が登場。
赤と黒の攻撃的なフォルムが特徴的なカーネイジは、様々な武器を顕現することができるなど非常に強力なヴィラン。原作でも、スパイダーマンとヴェノムが共闘しても尚、倒しきれなかったほどの強さを持つ。
加えて、宿主であるクレタスが殺人鬼だったことが災いしてか、ヴェノムを大きく凌駕するほどの残虐性をも併せ持っており、善人・悪人関係なく名前通り「虐殺」する。
ヴェノムはエディの身体を包み込むようにして変身するのに対し、カーネイジはクレタスの身体から蠢き出すようにして変身する。この異形感、人によっては堪らないのではなかろうか。
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と、2作目にしてシリーズ最大級のヴィランが登場してしまったSSU、ひいては『ヴェノム』シリーズ。そんな強大すぎる敵を目前に、エディとヴェノムはいつになくシリアスなモードに………
なるかと思いきや、その真逆で凹凸コンビとしてイチャイチャしまくってる始末。その姿は「コンビ」を超えて「カップル」と呼称しても差し支えないほど。
前作にてワンちゃんが如し圧倒的「可愛さ」が見事露呈してしまったヴェノム、今作ではその「可愛さ」を余すことなく発揮している。
エディのために料理するヴェノム(尚腕前は無視するものとする)、パーティーでハッチャケちゃうヴェノム、喧嘩が原因でエディに拗ねた態度を見せるヴェノム………お前、本当に「残虐な」地球外生命体なのか。
前作では感じ取れていたダークな作風が、今作では良くも悪くも薄れ気味に。従って、今作に対する評価も前作と比較すると賛否分かれるものとなっている。
だがエディとヴェノムのイチャイチャがとにかく大好きな人、2人の友情をとにかく見たい人にとっては至高の一本と言っても過言ではないだろう。2人の怒涛の死闘は、まだまだ続く………
解放されし、渇望。『モービウス』
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『モービウス』
("Morbius")
あらすじ
過去にノーベル賞を受賞した経歴を持つ、天才医師のマイケル・モービウス。彼は天才的な頭脳を持つ代わりに、血液に関する不治の病を患っていた。
彼の発明した医療は数々の人々を救ってきたが、自分自身は未だに救えずにいないマイケル。苦悩の末、彼は意を決しある「荒療治」を決行することを決意する。
コスタリカに存在する「死の山」、そこに生息する吸血コウモリを捕獲し、その血清を自身に投与しようとするものだ。
結果として実験は成功し、モービウスは長年の夢である病の完治を成し遂げる。だがそれと同時に、身体にある「異変」を感じ始めるようになる。
それは、身体が「血」を求めていることだった。衰弱した身体は筋骨隆々となり、加えて超音波の感知能力や高速移動などコウモリに類似したような能力を得ることになる。
しかし「血」を、とりわけ「人の血」を摂取しなければ、マイケルは理性を失い人を襲う吸血鬼と化してしまう。
なんとか血の「渇望」を抑えようとするも、その衝動は日に日に膨れ上がってきて………彼に課された、壮絶なる運命の末路や如何に。
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作品概要
シリーズ3作目。原作にてスパイダーマンと敵対するヴィランにしてダークヒーローであるモービウスが主役の作品となる。
SFホラー映画『ライフ』を手がけたダニエル・エスピノーサが監督を、アカデミー賞受賞歴を持つジャレッド・レトが主演を務めた。
SSUで初となる、ヴェノム以外のキャラクターを主役に添えた作品。しかし名だたるスパイダーマンのヴィランたちの中でも、モービウスは比較的マイナーな方。
グリーン・ゴブリンやエレクトロなどといった著名なヴィランは既に実写映画にて登場しているものの、モービウスは名前すら挙がっていない。
当初はウェズリー・スナイプス主演『ブレイド』シリーズにて登場する予定だったらしいが、結果として実現することはなかった。
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故に今作の制作が決まった際、当然ながら不安の声も挙がった。結果としてその予感はほぼほぼ的中し、評価は決してすこぶる良いとは言えないものとなっている。
とはいえど、決して悪い所ばかりというわけでもない。コウモリの特殊能力を駆使した戦闘は疾走感があり、非常にスタイリッシュだ。
派手な爆発を起こすなどといったダイナミックなアクションではないものの、スピーディなアクションに見惚れること間違い無いだろう。
身体に纏わり付くモヤモヤが、高速移動した際に尾を引く感じが個人的に堪らない。NYの夜を疾走する姿は実に厨二心をくすぐられるものだ。
糸を手繰り寄せた、その先へ。『マダム・ウェブ』
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『マダム・ウェブ』
("Madame Web")
あらすじ
NYにて救命士として働くキャシー・ウェブは、救助活動中に川へ転落し、危うく命を落としかけてしまう。
しかしその最中、彼女の潜在能力………「未来予知」の能力が顕現。未来視の中で彼女は、3人の少女が謎の男によって殺害される光景を目にする。
混乱の最中、未来視に出てきた3人の少女………ジュリア、マティ、アーニャを咄嗟に保護するキャシー。しかしそこへ、蜘蛛を模した漆黒のスーツを身に纏った男が姿を表す。
エゼキエルと名乗る男は、触れたものへ致死量の猛毒を流し込む能力を以てして少女達を殺そうと画策するが、キャシーは未来予知の能力を生かしてエゼキエルからの逃避行を試みる。
執拗に自分達を追ってくるエゼキエルとは何者なのか?唐突に発現した、この未来視の力は一体何なのか?謎が謎を呼ぶ、異色のヒーロー×ミステリー・サスペンスが幕をあける。
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作品概要
シリーズ4作目。S・J・クラーソンが監督を務め、ダコタ・ジョンソンが主演を務めた。
予告編やポスターにて大々的に宣伝されている通り、今作はMARVEL初の本格的なミステリー・サスペンス映画となっている。
故にヒーロー映画らしいアクションはSSUのこれまでの作品と比べてかなり控えめとなっているが、その代わり緻密なギミックを有したストーリーが特徴的だ。
人によっては物足りないと感じてしまうかもしれないが「予知能力」のみを武器にヴィランと対峙するヒーロー、というのは今までにない試みだ。絵面の迫力には欠けるかもしれないが、そのスタイルは非常に興味深い。
ヴェノムとはまた異なる「もう1人のスパイダーマン」のようなフォルムを有するエゼキエルも、中々に魅力的なヴィラン。糸の代わりに猛毒で戦う、という能力もある意味蜘蛛らしい。
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………さて今作『マダム・ウェブ』、前作『モービウス』と同様評価があまり芳しくない結果となってしまっている。
先述したようにヒーロー映画の醍醐味であるアクション要素は薄く、そのためか集客的な効果もあまり見込めずにいたのかもしれない。
加えて興行収入も決して高いとは言えず、赤字に終わってしまっている。主演のダコタ・ジョンソンも「ああいう作品はもうやらない。良い経験にはなった」と発言している。
ましてや「マダム・ウェブ」は原作でも非常にマイナーなキャラクター。グリーン・ゴブリンやエレクトロなどの比較的有名なヴィランと比べると「誰コイツ?」といった反応になってしまうのは必然的だ。
総じてSSU全体に対する低評価っぷりを後押しする形となってしまった今作『マダム・ウェブ』。SSUの末路や如何に………
何人たりとも「俺達」は引き離せない。『ヴェノム:ザ・ラストダンス』
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『ヴェノム:ザ・ラストダンス』
("Venom: The Last Dance")
あらすじ
カーネイジとの死闘の末、国から追われ各地を放浪していたエディとヴェノム。時折「悪人」を見つけては成敗(という名の捕食)をし、当てもなく彷徨っていた。
だがそんな2人の元へ謎の異形の怪物が現れ、エディとヴェノムを襲い始める。
「ゼノファージ」と呼ばれるこの怪物は、シンビオートの創造主である「ヌル」の刺客として地球へと送り込まれたのだという。
ヌルの狙い、それは自分を縛り付ける「檻」から解放されるための「鍵」だった。「コーデックス」と呼ばれるそれは、シンビオートたちの中でヴェノムだけが唯一持っているものだという。
一方、アメリカの機密軍事施設であるエリア51では、地球にて捕獲されたシンビオートたちを研究する機関が活動していた。
施設内のシンビオートは、人間たちにこう告げる………「ヌルが地球にやってくる」「コーデックスを奪われれば、地球は滅亡してしまう」「阻止する為には、エディとヴェノムを殺すしかない」と。
かくして国にも研究施設の部隊にも、そしてヌルからも狙われることとなったエディとヴェノム。壮絶な旅路を歩みし、2人が紡ぐ「最後」とは………
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作品概要
シリーズ5作目………にして、『ヴェノム』シリーズ最終作。『ヴェノム』前2作にて脚本を担当していたケリー・マーセルがメガホンを取る。
エディ・ブロック/ヴェノム役のトム・ハーディは当然ながら続投。そして今作が、彼がエディ&ヴェノムを演じる最後の作品となる。
ちなみにヌルを演じたのは、前作『〜LTBC』にて監督を務めたアンディ・サーキス。(いつも通りというべきか)モーションキャプチャーで撮影している。
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SSU1作目として公開され、絶好調すぎるスタートダッシュを切った『ヴェノム』三部作を締めくくる、まさしくタイトル通り彼らの"Last Dance"となる今作。
最初はヴェノムが一方的にエディに寄生しただけだったものの、今や2人は共に背中を預け合える最高の相棒。その絆はどんなものよりも強固たるものだろう。
今までこれでもかと一蓮托生っぷりを我々観客に見せつけてきてくれた2人。そんな彼らがもうスクリーンで出会えないと考えると………おや、何やら目から汗が………
前作『〜LTBC』にて「相棒」を超えて熱々なカップルよろしくイチャイチャしまくっていた2人。今作でもそんなラブラブっぷりは健在であり、最早シリーズの醍醐味と化しつつあるのは言うまでもないだろう。
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しかし前述した通り、2人に置かれている状況は文字通り「絶体絶命」そのもの。果てしない絶望の中で抗い続ける2人だが、どうしてもここから再び平穏な日々へ戻れる予想ができない。
ましてやその黒幕はシンビオートの創造主・ヌル。原作でもサノスや征服者カーン、Dr.ドゥームを超えるほどの強大なるヴィランであり、ヴェノムたちだけでは到底敵わない相手だ。
和気藹々とした日々、壮絶なる死闘を経て紡いできた、2人の大いなる旅路。そのピリオドが如何に悲劇的であろうと、我々はそれが打たれるその瞬間を見届けなければならない。
ヴェノムを愛する人々に捧ぐ、最後のラブレターに等しい今作。まさにシリーズの終焉を飾るに最も相応しい作品と言える。
全てを狩り、喰らう者。『クレイヴン・ザ・ハンター』
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『クレイヴン・ザ・ハンター』
("Kraven The Hunter")
あらすじ
セルゲイとディミトリの兄弟は、裏社会を牛耳るニコライ・クラヴィノフの息子だった。2人は冷酷無比な父の背中を見て、懐疑的になりながらも逞しく育ってきた。
しかしある日、家族で狩りに出かけた時のこと、セルゲイは1匹の獰猛なライオンに襲われ命を落としてしまう。
だがそのライオンから流れ出た血がセルゲイの中に入り込み、彼はライオンの如き圧倒的な身体能力と視力、他様々な特殊能力を手にすることとなる。
それから16年後………セルゲイは獰猛なる狩人「クレイヴン・ザ・ハンター」として、日々裏社会に潜む悪事を働く人間を文字通り「狩って」いた。
ある日、クレイヴンが刑務所へ潜入し、強大な勢力を持つことで知られるギャングのボス・チョーニィを殺害したことで、裏社会に亀裂が生じる。
これによりクレイヴンは、多くの反社会組織から付け狙われるようになってしまう。しかし最強のハンターとして知られるクレイヴンは、襲撃を受けたとしても悉く返り討ちに。
まさに無敵のクレイヴンに、チョーニィの財産を横領しようと画策するアレクセイは、クレイヴンの「たった一つの弱点」を発見する………それは彼の最愛の弟、ディミトリだった。
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作品概要
シリーズ6作目。ヴェノムやモービウスと同じく、スパイダーマンのヴィランの1人として知られるクレイヴン・ザ・ハンターを題材とした作品となる。
J・C・チャンダーが監督を担当、主役であるクレイヴンを演じたのは、かつてMCU作品『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』にてクイックシルバー役を務めたアーロン・テイラー=ジョンソン。
他にも『グラディエーターⅡ 英雄を呼ぶ声』で双子の皇帝の1人を演じたフレッド・ヘッキンジャーや、アーロンと同様MCUにも出演した経歴を持つラッセル・クロウも出演している。
『アメイジング・スパイダーマン2』のラストにて登場した、これまたスパイダーマンのヴィランとして有名なライノもヴィランとして登場。今回はメカスーツではなく、全身まるごとサイに変身して戦う模様。
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ありとあらゆる手段で獲物を追い詰め、標的となったものを悉く狩り尽くす、最強のハンターことクレイヴン。
その戦い方はまさしく「猛獣」そのものであり、劇中でも人間とは思えないほどワイルドな戦い方を見せつけている。
故にSSUでは初となるR-15指定作品。紅の鮮血が飛び散り人がバッタバッタと死んでいく、痛快なバイオレンス・アクションムービーに仕上がっている。
またアーロン・テイラー=ジョンソンの圧倒的な肉体美も非常に魅力的。彼の出演作の中で、ダントツでカッコ良さが醸し出されていた作品なのではなかろうか。
今世紀最大のヒーロー×ラブロマンス映画(?)こと『ヴェノム』三部作と比べると、シリアスな展開と比較的暗めな雰囲気が続く今作。だがそのハードボイルドなアクションは、SSUひいてはMARVELの映画作品でも唯一無二のものだ。
(詳しくは後述するが)SSUの中でも重要な立ち位置となる今作。彼の「狩り」は、獲物を全て屠るまで終わることはない………
今後のシリーズ展開について
ユニバース系のシリーズモノにおいて、次々と新作の構想が練られていくのは至極当然のこと。MCUがそうであるように、SSUもまた数多くのプロジェクトを抱えている。
まずはスパイダーマンのヴィランの1人「エル・ムエルト」を描く映画『エル・ムエルト』だ。
プロレスラーを模したヴィランであり、ブラッド・ピット主演『ブレット・トレイン』にも出演したバッド・バニーが主役を演じる予定だった。
しかしながら………これを聞いてのオーディエンスの反応は知っての通り「誰それ?」状態。何しろあのマダム・ウェブよりも更に知名度が低いキャラクターだ。
結果として制作は無期限の延長に。本来は今年の1月に公開予定だったという。
https://www.cbr.com/spider-man-venom-sinister-six/
それよりもむしろ、ファンが興味を示したのはこちらの方だろう………スパイダーマンと敵対するヴィランたちによって結成されたチームを描く『シニスター・シックス』だ。
原作ではドクター・オクトパスにエレクトロにヴァルチャー、他多数のヴィランたちが登場。スパイダーマンだけでなく、デアデビルやファンタスティック・フォーなど他のヒーローたちとも戦いを繰り広げた。
当初の予定ではアンドリュー・ガーフィールド主演『アメイジング・スパイダーマン』と同じ世界線の作品として制作される予定だったが、SSUでもその構想が練られていたようだ。
『モービウス』のエンドクレジットシーンでは、『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』での「あの事件」を経て、『〜ホームカミング』のヴィラン・ヴァルチャーがSSUの時間軸に来訪。モービウスをチームに誘う描写が見受けられた。
実写映画におけるシニスター・シックスとスパイダーマンの対決は、まさにファンが長年待ち望んでいた展開。
それがMCUだろうとSSUだろうと、これを成し遂げれれば『〜ノー・ウェイ・ホーム』に並ぶほどの熱狂が世界中で巻き起こることだろう………
と、思われていたその矢先、全世界に悲報が走る………2024年12月11日、SSUのシリーズ打ち切りが報じられた。
これにより『クレイヴン・ザ・ハンター』がSSU最後の作品となり、他全てのプロジェクトは水の泡となってしまった。
DCEUに続き、SSUまで………と世界中が落胆したこのニュース。製作陣が大々的に「実現したい!!」と言っていた『シニスター・シックス』も、今や幻の作品となってしまった。
しかしながら、案外これも仕方のないことなのではないか、とも言われているのが現実だ。
「スパイダーマンのマイナーなヴィランを主役に映画を作る」という試みは確かに斬新ではあるものの、見ての通り観客からの反応はイマイチ。成功したとはとてもじゃないが言い難いだろう。
今後のタイトルでもそのスタイルを貫いていくとなると批判を受けるのは必至であり、最早コケるのは必然的。いずれにせよ、このシリーズが終幕を迎えるのは時間の問題だったのかもしれない。
ヌルというラスボス級ヴィランの登場、そしてSSUの世界に訪れたヴァルチャー………広げに広げまくった風呂敷を畳まずに去っていくとは。MCUの方で何かしらの形で拾われるといいが。
………が、一方でまだまだ生きながらえている作品も存在する。ニコラス・ケイジ主演のドラマシリーズ『Spider-Man Noir(仮題)』だ。
全世界で大ヒットを記録したアニメ映画『スパイダーマン:スパイダーバース』にて同名のキャラクターを演じたニコラス・ケイジ。
以前から実写化に意欲的であり、現在鋭意撮影中。Amazon Prime Videoにて独占配信されるとのことだ。
DCコミックスのDCEUにおいても、シリーズ自体は打ち切りになってしまったものの、ドラマシリーズ『ピースメイカー』は今も尚制作が続いている。ユニバースとは無関係に、ドラマシリーズだけを継続していくことも不可能ではないはずだ。
果たしてSSUの打ち切りの影響がどこまで及んでいるかは分からないが、せめてこれだけは実現できることを切に祈るばかりである。
あとがき(まとめ)
かつてDCEUの解説記事にて語ったように、私の映画人生において重要な役割を担う作品たちの多くはアメコミ映画に集約されている。
SSUの作品のいくつかもまた、私の映画ライフを語る上で欠かせないものだ………というより、もしかすると最も重要と言っても過言ではないかもしれない。
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そう、その作品こそシリーズ1作目である『ヴェノム』だ。私はこの映画に惚れ込み、アメコミ映画、ひいては映画そのものにのめり込んでいったのだ。
キッカケは両親と共に『ジュラシック・ワールド/炎の王国』を観に行った時のことだった………今でも昨日のことのように思い出せる。
上映開始前に『ヴェノム』の予告編が流れ、その凶悪にして最高にクールなフォルムは私の心を瞬く間に虜にしたのである。
昔TVで観た『スパイダーマン3』の記憶が突如として呼び起こされた、というのもあるが。
毎日予告編を見続け、10月の公開日を待ち続け………そうして迎えた公開日、友人と共に劇場から出た私は歓喜に満ち溢れていた。
そこから私は徐々に映画にのめり込んでいった………こうして今映画に関するブログを書いているのも、あの時『ヴェノム』の予告編が流れなければ起こり得ないことだったのかもしれない。
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というように『ヴェノム』シリーズ、ひいてはSSUは私の映画人生に非常〜〜〜に大きな波紋を呼んだのである。
打ち切りも仕方ない部分もあるかもしれないが、改めてこうして振り返ると寂しい気もしてしまう。ヴェノムとスパイディのバトル、見たかったなぁ………まじで。
一応『〜ノー・ウェイ・ホーム』のエンドクレジットにて、MCUの世界にヴェノムのシンビオートの一部が残っていったという描写がある為、MCUにて新たなるヴェノムが生まれる可能性もゼロではない。程々に期待していくとしよう。
と、いうわけで今回はこの辺で。
https://www.cbr.com/thor-4-venom-spider-man-no-way-home-connection-mcu/
それではまた、次の映画にて。