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『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』
("Spider-Man: Across the Spider-Verse")
作品概要
『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』は、2023年6月に公開されたアニメーション映画。
2018年公開『スパイダーマン:スパイダーバース』の続編であり、前作と同じくソニーが製作・配給を務める。
監督・脚本は異なるものの、マイルズ・モラレス/スパイダーマンを声優として演じたシャメイク・ムーア、同じくグウェン・ステイシー/スパイダーグウェンを演じたヘイリー・スタインフェルドなど、前作からのオリジナルメンバーはしっかりと続投。
それに加え、MCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)のドラマシリーズ『ムーンナイト』にて主演を務めたオスカー・アイザックがミゲル・オハラ/スパイダーマン2099を、
『ゲット・アウト』や『NOPE/ノープ』などジョーダン・ピール監督作品で度々主演を務めるダニエル・カルーヤがホバート・ブラウン/スパイダーパンクを演じるなど、新キャストも豪華絢爛だ。
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前作はマイルズのスパイダーマンとしての成長をメインに描いてきたが、今作はマイルズとグウェンの関係性、マルチバースの広大な世界観を主軸に物語が展開していく。
上映時間は140分(2時間20分)。これはアメリカが制作したアニメーション映画の中で歴代最長のものになるらしい。
なお、続編『スパイダーマン:ビヨンド・ザ・スパイダーバース』は現在鋭意製作中。続報を待たれよ。
米国では5月2日に、日本では5月16日に公開され、どちらも爆発的なヒットを記録。先月公開の『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』のオープニング成績を超えるという異例の超・特大ヒットとなっている。
現在の全世界興行収入はおよそ700億円。まだまだスパイディたちの快進撃は続いていくことが予想される。
あらすじ
今は亡きピーター・パーカーの意志を継ぎ、新たなるスパイダーマンとしてNYの街を守るマイルズ・モラレス。
「その世界でたった1人のスパイダーマン」として活動する傍ら、思春期真っ只中のマイルズはしょっちゅう親と対立していた。
そんな中、別次元のスパイダーマンにして共に戦った盟友でもあるグウェン・ステイシー/スパイダーグウェンがマイルズの元を訪れる。
彼女は様々なユニバースのスパイダーマンたちが集う「スパイダーソサエティ」に属しており、マイルズもそこへ入りたいと志願する。
ソサエティでは様々なスパイダーマンたちが集っていた。パンクロッカーのスパイダーマン、バイク乗りのスパイダー”ウーマン”、
インド出身のスパイダーマン、レゴでできたスパイダーマン、猫のスパイダーマン………その他諸々。
マイルズの師匠でもあるピーター・B・パーカーとの再会も束の間、マイルズはソサエティのリーダーであるミゲル・オハラ/スパイダーマン2099と出会う。
そこでマイルズは、全ユニバースのスパイダーマンたちに課せられたある「悲しき運命」を知る。
「愛する人」と「世界」………どの世界のスパイダーマンも、どちらかを選び守らなければならない。
それを受け入れることこそ「スパイダーマン」に課せられた過酷なる使命。だがマイルズは宣言する………「僕はどちらも救ってみせる」と。
迫り来るスパイダーマンたち、マイルズの「親愛なる隣人の運命」への反逆。今、『スパイダーマン』シリーズの歴史を塗り替える衝撃作が放たれた。
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見所解説①もはや異次元なアニメーション作画
2018年度のアカデミー賞授賞式において長編アニメーション賞を受賞した『スパイダーマン:スパイダーバース』。
その高評価の理由の一つに「コミック風のアニメーション」を取り入れている、という点が挙げられる。
ただの3Dアニメーションではなく、コミックのコマ割り・登場人物の心の中のセリフ・効果音など、
まるでコミックのデザインがそのままアニメーションになったかのような独特な作風が大きく評価された。
また、別のユニバースからやってきたスパイダーマンそれぞれの絵のタッチが異なるのも非常に特徴的だ。
ある世界はモノクロのタッチ、ある世界は水彩画のようなタッチ、ある世界はカートゥーンのようなタッチ………
そんな個性的すぎるスパイダーマンたちが同じ画面で、しかもハイスピードで動き回りながら戦闘を繰り広げる。果たしてアニメーターの労力は如何程か………。
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さらに今作では、前作の倍近くのユニバースとスパイダーマンたちが登場する。
当然その種類に応じて絵のタッチも異なっており、前作の時点で忙しなかった絵面はより複雑に進化。その様はまるで一つの「美術作品」そのものだ。
そんなわけで、忙しなく動き続けカラーリングも事細かく疾走感が絶え間なく持続する、そんな異次元レベルとも呼べるアニメーション作画に飲み込まれること間違いなし………
というか、最早ストーリーが無くともこれだけで十分今作を堪能できるような気も。
見所解説②従来の『スパイダーマン』をぶっ壊す、異例の展開
どの作品・及びユニバースにおいて、スパイダーマンは必ず「大切な人」を失っている。
前作において、マイルズはアーロン叔父さんという「大切な人」を失っている。同様にグウェンも、彼女のユニバースにおいてリザードと化したピーター・パーカーという「大切な人」を失っている。
更に言えば、実写版のスパイダーマン作品においても同様だ。
トビー・マグワイア演じるスパイダーマンは親友のハリーを、アンドリュー・ガーフィールド演じるスパイダーマンは最愛の恋人グウェンを、
トム・ホランド演じるスパイダーマンは恩師たるトニー・スタークをそれぞれ失っている。
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だが、スパイダーマン2099ことミゲル・オハラは作中においてこれを「必然的なもの」として語る。
スパイダーマンは大切な人を失って然るべし………そうでなければそのユニバースは跡形もなく消失し、最悪の場合全てのユニバースが消え去ってしまうとのこと。
もし助ければ、その世界は失われる。だが助けなければ、当然その「大切な人」を見殺しにすることと同義。
それを知らぬまま「大切な人」を失うならまだしも、それを知りながらスパイダーマンとして生きていくことの過酷さは想像に難くない。
しかしそれが「己の運命」だと悟って、それでも戦い続けるのが全ユニバースの「親愛なる隣人」に課せられた使命。
あのクモに噛まれてしまった以上、どんなに辛かろうともそれを受け入れるしかないのだ………
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たった1人の「特異点」、マイルズ・モラレスを除いて。
世界も愛する人も、どちらも救ってみせるというマイルズの決意。それは今作という枠組みを超え『スパイダーマン』という作品そのものの根底を覆すものだ。
もし成功すれば、この蜘蛛の糸のように巻き付くある種の「呪縛」が解き放たれることとなる。一方もし失敗すれば、全てのスパイダーマンのユニバースが全て消滅してしまうという最悪の事態に。
仮に後者が実現してしまったら、MCUにおけるサノスの指パッチンを遥かに超える、アメコミ史上最悪のバッドエンドと言えるだろう。
全ユニバースのスパイダーマンたちを敵に回してでも、己の野望を達成すべく奔走するマイルズの姿………
臆病で未熟で実力不足だった、前作におけるかつてのマイルズの姿はどこへやら。何故か子の成長を見守っているかのような感情に錯覚させられる程に、その姿はとにかく「カッコいい」。
こんなにもスケールがデカすぎるストーリーが、今作にすっぽりと収まる………
ハズもなく、マイルズたちがたどり着く結末は次回作までお預け。鑑賞した身からすれば一刻も早く続きが観たい所ではあるが………気長に待つとしよう。
個人的な感想
率直に申し上げると、個人的今年ダントツNo.1に認定しても良いってぐらい最高に面白かった。
アクションは軽やかに、ラブロマンスは儚げに、ジョークは多めに、シリアスな場面は神妙に………といった具合に、『スパイダーマン』には欠かせない要素を着実に抑えていた。
だがその一方で、ストーリーは「今までの『スパイダーマン』をぶっ壊す!!」という尖りまくりなのも新鮮さが相まって非常〜〜〜に胸熱。
スパイダーマンに待ち受ける悲惨な運命をゲームのシナリオ的な不変の出来事として描く製作陣の意地悪さはさることながら、そんな運命にマイルズが抗うという構図は興奮必須。
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また今作のヴィランであるスポットのキャラクター造形もまた良い。
スパイダーマンと同じくお喋りだったり天然な一面を持ち合わすなどチャーミングな印象が見受けられる一方で、
自らの全てを奪ったスパイダーマンへの果てしない憎悪をも持ち合わすというギャップ。果たして次回作ではどう暴れてくれるのか………
前作『スパイダーマン:スパイダーバース』をよーく見返すと、変異する以前のスポットの姿がしっかりと写っている。ああいうふとした出来事が、後にマルチバースを脅かす脅威となるとは………
んで何よりも刮目すべきなのはやっぱりアニメーション。スパイダーマンの戦闘シーンはどうしてもハイスピードな描写が必要不可欠となってしまう………
だが今作のアニメーションは、そんなスピーディなバトルアクションを100%、いや200%もの鬼クオリティで提供してくれた。
にしても2023年の映画は次回作へ期待させてくれる作品が多いこと多いこと。『ワイルド・スピード/ファイヤーブースト』といいどれだけ期待させれば気が済むんだハリウッドよ。
ラストのあの対立構図もアツすぎる。あの超展開にはニヤけが止まらなかった………詳しくは言えない、というかここでは言いたくないので気になる方は前作をご鑑賞の上是非劇場へ。
まとめ
前作を余裕で超えてくる超絶クオリティにただただ圧倒され続けた、そんな2時間だった。
先月、世界的大ヒットを記録した『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』が公開されたばかりだというのに、たった1ヶ月でこんな化け物みたいな作品が生まれてしまうとは。
しかもまだ今年に入ってから半年も経っていないという事実。さては今年、去年以上にヤバい年なのでは?
またアニメーション作品ということで(個人的な意見ではあるが)字幕版・吹き替え版の両方を鑑賞することをオススメしておこう。
もちろん字幕版であれば、本国にて上映されたオリジナルver.を楽しむことができるという利点があるが、先述した通り今作は絵面がいい意味でとにかく忙しい。
字幕を目で追っているうちに場面が次々と切り替わっていき、逆に絵をしっかり見ようとすると字幕を読み逃し………
一方、吹き替え版は当然字幕も表示されず音声も聞き慣れた日本語音声のためスラスラと耳に入っていくこと間違いなしだ。
(私含む)洋画の吹き替えが苦手な人も、アニメーション作品であるため違和感なく鑑賞に臨めるはず。
私も暇な時間を見つけて吹き替え版でおかわり鑑賞をしようと思う。字幕と吹き替えで二度楽しめるのは、ある意味アニメ映画の特権なのかも?
と、いうわけで今回はこの辺で。皆様も是非劇場でご覧になって度肝を抜かれていただきたく思う。
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それではまた、次の映画にて。