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【最新映画レビュー】時空を駆ける「世界最速のヒーロー」。『ザ・フラッシュ』レビュー&感想

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『ザ・フラッシュ』

("The Flash")

作品概要

『ザ・フラッシュ』は、DCコミックス原作『フラッシュ』をベースとしたアメリカのスーパーヒーロー映画。『マン・オブ・スティール』を皮切りに始動した「DCEU(DCエクステンデッド・ユニバース)」の第12作目に当たる。

現在はDCEUはリブートされ、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』『ザ・スーサイド・スクワッド ”極”悪党、集結』ジェームズ・ガンの新体制のもとDCU(DCユニバース)として新たなる作品群を構想中。

今作はDCEUの一作品として制作されたが、今後のDCUの展開に必要不可欠な作品としてシリーズの一部に含まれている。

監督は『MAMA』『IT/イット ”それ”が見えたら、終わり。』などを手がけたアンディ・ムスキエティ

主演として、『ジャスティス・リーグ』にてバリー・アレン/フラッシュを演じたエズラ・ミラーが続投。

数々の暴力事件スキャンダルを引き起こしたことで「問題児」としてフラッシュの続投を危ぶまれていたが、ジェームズ・ガンの要望により無事再演することができた。

だが今作の魅力はそれだけじゃない………なんとあのマイケル・キートン演じるブルース・ウェイン/バットマンが奇跡のカムバックを果たしたのだ。

キートンが再び漆黒のマントに身を包むのは、実に『バットマン リターンズ』(1992年公開)以来30年ぶり。

『バットマン』の他に『バードマン〜』『スパイダーマン:ホームカミング』など、何かと「翼」を持つ役に縁のあるキートン。

また新生スーパーガールとしてサッシャ・カジェが抜擢。DCコミックの映画でスーパーガールが登場するのは何気に史上初

ドラマシリーズ『SUPERGIRL/スーパーガール』におけるメリッサ・ブノワ扮するスーパーガールと異なり、ダークかつクールな雰囲気が際立っている。

他にも『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』にて初登場のベン・アフレック扮するバットマンも続投。

従来の漆黒の衣装と異なり紺色の衣装に身を包んでいるなど、デザインがコミック寄りになっているのを確認できる。

………といった風に、かつての『ジャスティス・リーグ:ザック・スナイダーカット』を彷彿とさせる豪華仕様を兼ね備えた今作。

広告などでは大々的に「あの『ダークナイト』を超える、DC映画最高傑作」と宣伝されており、巷では「あのトム・クルーズもが大絶賛した」と囁かれている。

が、しかし。本国の方ではオープニング成績はあまり奮わず『THE BATMAN -ザ・バットマン-』『ブラックアダム』を下回る近年のDC映画にしては低調のスタートとなっている。

その一方で、レビューサイトなどでは「DC映画最高傑作の名に相応しい超大作」「マルチバースというやや飽和気味な設定に一石を投じた作品」など概ね好評かな模様。

私の感想はというと………それは後程述べるとしよう。

あらすじ

科学捜査官として活動する傍ら「ジャスティス・リーグ」の一員としてヒーロー活動を日々行う「世界最速のヒーロー」ことバリー・アレン/フラッシュ

朗らかな性格を持つ彼だが、幼い頃に最愛のを亡くし、は母親殺しの容疑をかけられ長らく服役しているなど、複雑な家庭環境を有していた。

己の思いを振り切るように、街を光をも超える速さで駆け抜けるフラッシュ………その瞬間、彼は速さという次元を超えて時をも巻き戻す力「スピードフォース」に目覚める。

そこで彼はあることを閃く………「時間を遡れば、母も父も救うことができるのではないか」と。

時を遡り、無事母と父の運命を変えることができたバリー。元いた時間に戻ろうとしたその瞬間、何者かによってスピードフォースの空間から弾き飛ばされ別の時間軸の世界へ飛ばされてしまう。

その世界には若き日のバリー、全く別人のバットマン、スーパーマンではなくスーパー”ガール”などが存在する、バリーの元いた世界とは大きく異なるものだった。

さらにその世界に、かつてスーパーマンが退けたゾッド将軍率いるクリプトン軍が侵略しに来てしまう。一刻も早く止めなければ、今度こそ世界はゾッド将軍の手に落ちてしまう。

果たしてバリーは世界を救い、元の世界に帰ることができるのか?DC映画の歴史を塗り替えるハイスピード・アクション・ストーリーが、今始まる。

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見所解説①アメコミ界随一のスピードスター「フラッシュ」の魅力

先述した通り、今作はDCコミックのファンには堪らないネタが多数盛り込まれている。

といっても主に過去作の登場人物のカムバックだが、そのサプライズを無碍にしないようにしっかりと作中で見せ所を作っているのもまた素晴らしい。

そもそも『ジャスティス・リーグ』にて大活躍(主に『スナイダーカット』にて)したエズラ・ミラーが、

再びバリー・アレン/フラッシュとして、しかも主演としてカムバックしてくれたのはファンとして非常に嬉しい限りだ。

だが『フラッシュ』を語る上で外せないのはやはりドラマ版の存在だ。タイトルは『THE FLASH/フラッシュ』、バリー・アレン/フラッシュを演じるはグラント・ガスティン

こちらは「アローバース」なる独特のユニバースを有しており、シーズン9まで物語を展開している(今年にシーズン9が公開され、完結するとのこと)。

日本では比較的マイナーな印象を受けるが、本国ではこちらの方が有名な模様。筆者もいつか観てみたい所存だ。

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話を戻して今作『ザ・フラッシュ』。今までは競合社であるMARVELが多く取り入れていた「マルチバース」という世界観を、DC映画では何気に初めて多く取り入れた今作。

つまりどういうことかというと………どんなサプライズが待ち受けていたとしても何ら不思議ではない、ということだ。

即ち、劇中においてグラント・ガスティン演じるフラッシュがサプライズ出演する可能性だってある。

映画とドラマ、DCEUとアローバース、2人の「世界最速のヒーロー」が共演するという胸熱すぎる展開。この夢の共演には期待せずにはいられない。

見所解説②伝説のヒーローの「帰還」と「誕生」

今作をただの「フラッシュの単独作品」として描いていないのは、やはり「あのヒーロー」が伝説的なカムバックを果たしたのが原因だろう………

あのマイケル・キートン扮するバットマン、まさしく「生ける伝説」が、遂にDC映画に帰還したのだ。

『バットマン リターンズ』以来、文字通り長年越しの「リターンズ」を果たすこととなったキートンバッツ。

キートン自身年齢は70を超えており、劇中におけるキートン演じるブルース・ウェインも最初はお髭がモジャモジャなお爺さんとして登場。

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他のバットマンにはない黄色が印象的なロゴマーク、月夜に映えるバットウィング、底なしの滝や取り付けられたモニターが印象的なバットケイブ………

当時の装備や景観がそのまま流用されているのは、往年のファンからすれば何とも嬉しいサプライズだ。

そんでもってアクションも、現代の映画風にスピーディかつボリューミーに進化。

あんなお爺さんなのによう動けるなぁと言ったらハリウッドで有名なな某考古学者に怒られそうなので黙っておくが、ガジェットを最大限に活かしたバットマンらしい戦闘スタイルは必見。

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更に今作に欠かせないのがスーパーガールの存在だ。サッシャ・カジェ扮する”新生”スーパーガール、そのミステリアスな雰囲気が現在人気急上昇中だ。

スーパーマンことカル=エルの従姉妹、それがカーラ・ゾー=エルことスーパーガール。

DC映画におけるスーパーマンというと、やはりヘンリー・カヴィル演じるスーパーマンが記憶に新しい。

だが『MoS』にて「希望」の象徴だったスーパーマンに対して、今作のスーパーガールはややダークな一面が目立つ。

なにしろ彼女がバリーたちによって発見された時には、ヒーローとは到底言えないほどに衰弱していたのだ。

後に太陽の光を浴び完全復活を遂げたのだが、それでも彼女は人間という名の種族の存在意義を疑っていた。

見所解説③孤独なヒーローがただ望むのは「母の愛」

マルチバース、タイムスリップ、ヒーローたちの集結。実に壮大なスケールを有している今作だが、そんな今作の奥底に隠されたテーマが「母の愛」だというのは最早言うまでもない。

なぜならバリーが時を遡った理由はただ一つ「家族の運命を変えたい」というごく普遍的なものなのだから。

もう一度、母と父と子で食卓を囲みたい………その願いは家族愛に溢れた、暖かくも儚いもの。

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バリー・アレン/フラッシュは確かにスーパーヒーローだ。だがその一方で大人になりきれていない、母の愛を欲する子供という一面を持つ。

例え宇宙の法則を捻じ曲げようとも母と父を救う、というある種の「貪欲さ」はまさにこの「幼さ」から来るものだろう。

今作は、そんな母の愛に飢えるフラッシュが独り立ちする、いわば「成長物語」と断言できる。母の運命を変えるはずが、世界の運命までも変えてしまった………

残酷なタイムパラドックスの真実を知り、例えいくら時を戻そうとも変えられない運命というものが存在する、と悟るバリー。

母親の死、父親との離別。「バリー・アレン」にとっては忌々しい過去でも「フラッシュ」というヒーローにとっては残酷にも必然的な出来事なのだ。

義父を亡くさなければ、スーパーマンはヒーローにならなかった。両親を目の前で殺されなければ、ブルース・ウェインはバットマンにならなかった。

「大切なものを失うこと」………これはDCだろうとMARVELだろうと関係ない、スーパーヒーローがスーパーヒーローたる所以なのである。

壮大な冒険譚の裏に隠されたたった一つの、だが何者にも代え難い強固なる「愛」

ヒーロー映画のみならず、どのジャンル及び媒体の物語に欠かせないこのテーマと真摯に向き合った今作は、ある意味非常に「映画らしい」作品と言えるだろう。

個人的な感想

まず率直な感想から述べさせていただこう………「面白かったけど、正直期待しすぎた節がある」といったところか。

個人的に、今作は今年公開の作品たちの中でも1、2位を争うぐらい期待値が高めだった。

「もしかしたらあのキャラクターがサプライズ出演するかも?」と、次々考え出したら止まらなくなってしまうほどに胸は期待で躍っていたのだ。

ヘンリー・カヴィルのスーパーマンがもしかしたらサプライズで戻ってきてくれるかも!?とかいう妄想を結構真面目にしていたまである。

だが実際鑑賞してみて「全て期待通りの最高な作品!!!」………とまでは残念ながらならなかった。

もちろん胸が熱くなるような展開もあり十分楽しめたのだが、私の高まりに高まりまくった期待値を超えることはできなかったといった印象だ。

今作はマルチバースという設定を多く取り入れている為、自ずとストーリーの内容も複雑になっていく。

作中、キートンバッツがマルチバースを「絡まったスパゲッティ」と揶揄したように、私たち観客の脳味噌という名のスパゲッティも少なからず絡まりかけたハズだ。

そして終盤のあの展開で私の脳内のスパゲッティはいよいよ解くことが難しくなってしまった。

詳しくは語れないが、DC映画の歴史を知らねば理解できぬネタたち、というミートソースがスパゲッティに降りかかってきたのである。

ソースはスパゲッティに絡まり、麺もまた更に複雑に絡み合い、そして遂にスパゲッティは伸び切ってしまった………

故に終盤の御涙頂戴シーンも素直に感動できなかった節がある。この作品を骨の髄まで楽しむことができなかった、ということに一抹の悔しさを覚える。

とはいえ、これらの私が感じた「混乱」というのは私の「知識不足」に起因する。要するに全ては私の勉強不足、という言葉で片付けられてしまうわけだ。

だがこれだけは言いたい………果たしてあのラストはこの映画において正解だったのか?と。

理由に関して、これもまた盛大なネタバレになってしまう為詳細は伏せるが、下手すれば今作での出来事が全て無下になってしまうものだからだ。

確かに超ビッグなサプライズ演出であるのに違いないが、今作『ザ・フラッシュ』の着地点として相応しかったのか?という点に関しては個人的に何とも言えない感じ。

………が、今作が近年のヒーロー映画の中でも中々優れた作品であるのは間違いない。

フラッシュの超速ダッシュから始まるオープニングは完璧な物語の引き込み方だと思うし、その後のフラッシュのスピードを最大限に活かした人命救助シーンも非常に痛快だ。

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また現在のバリーと若き頃のバリー、2人のバリーによるコメディチックなストーリーもちょうどいい塩梅で仕上がっていたように思う。

フラッシュのスーツはどうやって着用しているのか?そもそもスーツを着なければならない理由とは?その答えを全て行動を以てして証明している若きバリーには笑うしかない。

そんでもって肝心の戦闘シーンに関してだが、決して百点満点のクオリティだったとは言い難いが見応えは抜群だった。

疾走感MAX状態なフラッシュ×2、バットウィングの空中戦とガジェットを存分に活かしたバットマン、クリプトン出身なだけあって圧倒的フィジカルで敵をねじ伏せるスーパーガール

もはや全員が主人公なんじゃないかと錯覚させられるほどにそれぞれの見せ場が確立されていた。

だからこそ、私は彼らが織りなすアクションを少々勿体無いと思ってしまった。それぞれ個性ある戦い方を有しているのだから、どうせならもっと存分に活かしてほしかったなーと。

とまぁ、個人的に感じた大まかな感想としてはこんな感じ。ん〜〜〜何だろう、痒い所に手が届かない感覚というか何というか………不完全燃焼?

兎にも角にも、今作を隅から隅まで楽しみ尽くすことができなかったことを少し悔しく思う。面白かった、面白かったけど何かが足りない………!!みたいな。

まとめ

今作の公開日は6月16日。冒頭でも記述した通り、奇しくもこの日はMARVELのアニメ映画『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』の公開日でもあった。

今年の上半期を締め括る作品として輝くのは、果たしてスパイダーマンか、フラッシュか。

そんなわけで、(私含めて)皆この2作品をどうしても比べてしまう節があるように思える。

これはあくまでも私の主観だが………「どっちの方が気に入った?」と聞かれれば、私はスパイディの方を選ぶだろう。

やはり新作への期待度というのはある程度の範疇に収めるべきなのだろうか………

確かに期待をあらかじめ下げておけばショックは少ないし、逆に面白ければ「思ったより面白かった!!」と感じることができるかも。

さて、今後のDC映画の展開としては、米国にて8月18日から『ブルービートル』が公開される模様。

昆虫の生物的なデザイン『アイアンマン』を彷彿とさせるメタリックなデザイン融合したかのような特徴的なヒーローであり、その姿はまるで日本の特撮ヒーローのよう………。

しかし、日本では何故か日本語字幕の予告編すら公開されておらず、全く音沙汰なしの状態となっている。『ザ・フラッシュ』の上映時に遂に予告編が公開されるか!?とも思ったが、結局叶わず………。

『トランスフォーマー/ビースト覚醒』『ジョン・ウィック:コンセクエンス』のように、

米国と日本での公開日がズレるというだけならまだ良いものの、全く情報が無いとなると「もしや日本公開されないのでは?」と不安になってしまう。頼むぜハリウッド。

と、最近私が切に感じる憂いを吐いたところで今日はこの辺で。

(正直この記事に時間をかけすぎた。もっとスピードを上げねば………。)

https://eiga.com/movie/83919/gallery/

それではまた、次の映画にて。

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