はじめに
狂瀾怒濤の2023年も、遂に終わりを迎える時が来たようだ。
上半期BEST10での記事でも言ったように、今年は中々の豊作揃いだ。
何せ上半期の時点で『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』や『〜アクロス・ザ・スパイダーバース』と、かなりの強者揃いだ。
しかしながら下半期の者どもも負けちゃいない。特に邦画は『ゴジラ-1.0』に『首』と話題作が目白押しだ。
今回は、そんな激動の2023年下半期に公開された映画を「個人的な」ランキングでBEST10を発表してみたく思う。
いつも通り完全に筆者の主観でランキング付けをしていくので、どうか温かい目で見守っていただきたい。
【10位】
https://eiga.com/movie/98573/gallery/21/
『君たちはどう生きるか』
(”The Boy and the Heron")
日本を代表するアニメ監督、宮崎駿によるスタジオジブリ最新作。駿が監督するジブリ映画は、2013年公開『風立ちぬ』以来10年ぶりとなる。
菅田将暉、木村拓哉、國村隼、他多数の豪華キャストが声優として出演。
海外版では、ロバート・パティンソンにクリスチャン・ベール、マーク・ハミルらが吹替を担当した。
多くの人が「意味不明」「明らかにエンタメ向けではない作品」と批判しており、事実私も鑑賞中「なんだこれ?」と感じる部分が多々あった。
しかしながら私は、今作に対し「郷愁」に近い感情を抱いたのである。
主題歌が流れ出し、クレジットが流れてゆく中で私の瞳から零れ落ちた一抹の涙は、間違いなく「寂しさ」によるものだったと、少なくとも私はそう確信している。
もっとあの世界に浸っていたい、永遠に終わらないで欲しい………
それは私が抱いたいっときの感情であるのと同時に、今のスタジオジブリに駿自身が込めた感情でもあるのかもしれない。
【9位】
https://eiga.com/movie/99284/gallery/12/
『首』
(”Kubi”)
『ソナチネ』や『HANA-BI』等数多くの作品を手掛け、世界的にも高い評価を得ている北野武(ビートたけし)監督による最新作。
従来の作品通り監督自身が主演を務める他、西島秀俊・加瀬亮・中村獅童など現代の邦画を代表する俳優陣が集結した。
忠誠心や武士の誇りなど時代劇にありがちな設定を一切廃し、戦国時代の真実を描くというコンセプトのもと制作された今作。
筆者含む、大多数の人は北野武の作風に倣い「戦国版『アウトレイジ』」と予想した。
しかし蓋を開けてみればアラビックリ、芸人・ビートたけしによる戦国版ブラックコメディが繰り広げられていたのである。
実際の撮影もお笑いライブを意識し、一発撮りやアドリブのコントを多く取り入れたという。
あんなカッコいいビジュアルイメージ持っといて中身は漫才かよ!!とツッコミを入れたくなるが、殺伐とした戦国時代をコメディ化するというのは中々新鮮な試みと言える。
忠義も義侠もクソもない、血で血を洗うまさに生き地獄。だが北野武は豪語する、「これぞ真の戦国時代」だと。
【8位】
https://eiga.com/movie/100006/gallery/9/
『イコライザー THE FINAL』
(”The Equalizer 3”)
デンゼル・ワシントンによるアクション映画『イコライザー』シリーズ最新作。邦題にもあるように、今作がシリーズラストの作品となる。
前2作に引き続き、アントワーン・フークアが監督を務める。
正義の二文字の下、どんな手を使おうとも悪を滅してきたロバート・マッコール。
しかしながらその戦いは果てしなく孤独であり、マッコール自身も歳を重ねるほどに身体の衰えを感じていた。
そして長きにわたる戦いの末、マッコールは遂に居場所を手に入れた。故にマッコールは、そんな自分の居場所を守るために最後の戦いへ身を投じていく………
という名目で、敵のイタリアン・マフィアをスプラッター映画よろしく惨殺しまくるマッコール氏。
敵を仕留めるその速さ、およそ9秒。ギネス世界記録でも挑戦なさる気でしょうか。
一切の慈悲も見せず、ただ冷徹に命を刈り取ってゆくその姿は「正義の味方」とはどうにも呼び難い。
3作目にして、遂にマッコールのイカれ具合が完璧に露呈したと言える。
第1作公開からいよいよ10年が経とうとしている今、老齢になろうとも一切の無駄もなく敵を瞬殺していくマッコールはやはりカッコいい。それだけでも一見の価値ありだ。
【7位】
https://eiga.com/movie/99650/gallery/8/
『ザ・クリエイター/創造者』
(”The Creator”)
『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』を手がけたギャレス・エドワーズによるSF映画。
キャストに『TENET テネット』のジョン・D・ワシントン、同じくギャレスの作品である『GODZILLA ゴジラ』の渡辺謙らが出演。
『ブレードランナー』に『DUNE/デューン 砂の惑星』と、数あるSF映画たちはそれぞれ独特の世界観を有してきた。
今作もまたその例に漏れず、実に「SFらしさ」の溢れた作風となっている。
それを視覚的に楽しむだけでも今作を観る価値は大いにあるが、そこに「AIの存在意義」という現代的なテーマが入り込んでくることで更なる深みを持つようになる。
映画においてAIとは人類に仇なすもの、という固定観念を根底から覆す今作の主題は、現実世界におけるAIの発達に通ずるものも感じられる。
被造物は創造主と共に在るべきか否か。ただのエンタメSF映画では終わらない、ギャレス・エドワーズからの「問い」に我々人類はどう答えるのか………
と小難しいことをつらつら並べたが、純粋な大衆向け映画として十分に楽しめるクオリティなので安心されたし。
【6位】
https://eiga.com/movie/98665/gallery/33/
『ジョン・ウィック:コンセクエンス』
(”John Wick: Chapter 4”)
キアヌ・リーブス主演のアクション超大作『ジョン・ウィック』シリーズ最新作。
前作『〜パラベラム』より、アクション映画として本格的な覚醒を遂げた本シリーズ。
今作ではそれに伴い、世界各国のアクションスターたちが集結。香港からは『イップ・マン』シリーズのドニー・イェンが、我らが日本からは真田広之が参戦。
そんな豪華スターたちとの共演ということで、キアヌ扮するジョン・ウィックも前作以上に大暴れ。
ヌンチャクを振り回したり、刀を振るったり、階段を駆け上りながら銃をブッ放したり。
犬と車の恨みで、ハンドガン片手に敵をぶっ殺しまくっていたあの頃のジョンはどこへやら………
と言いたいところだが『〜コンセクエンス』(報復・復讐の意)というタイトルは、ある意味一作目への原点回帰とも言えるかもしれない。
鑑賞後、脳味噌がショートを起こしてしまいそうになるほどの超・高密度な「アクション」の連続。今後のスピンオフ等のシリーズ展開にも期待していきたい。
【5位】
https://eiga.com/movie/99398/gallery/16/
『SISU/シス 不死身の男』
(”Sisu”)
最近のアクション界隈ではよく見られるようになった「一見普通の男が実は手を出しちゃいけないヤツだった」系映画。
『ランボー』『イコライザー』そして先述の『ジョン・ウィック』と、こういった系列の映画は長々と続いてきた。
しかしながら、その正体がベトナム帰還兵だったり元CIAだったり元最強の殺し屋だったりと、そろそろネタ切れなんじゃないか………?
と危ぶまれてきたところに、何とフィンランドから彗星の如く登場。ナチスに歯牙をかけるは、フィンランド最強の元老兵だ。
とはいえど、この元老兵………アアタミはゲリラ戦や銃撃戦、工作に長けているわけでもない。ただただ「死なない」のだ。
地雷原に足を踏み入れようとも死なない。戦車で攻め入られようとも死なない。首を括り付けられようとも死なない。
そうしてしぶと〜〜〜く生き残り続け、ナチスをボッコボコのギッタギタにしまくるその姿は「痛快」この一言に限る。
敵が無数の肉片と血飛沫へ変貌していくのは、いつの時代だって清々しいものだ。ゴア描写よアッパレ。
【4位】
https://eiga.com/movie/99524/gallery/24/
『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』
(”Killers of the Flower Moon")
言わずと知れた、ハリウッドを代表する巨匠マーティン・スコセッシによる最新作。
長らくスコセッシ映画を支えてきた、レオナルド・ディカプリオとロバート・デ・ニーロが共演。2人が同じスクリーンに登場するのは、長編映画ではこれが初。
「オセージ連続怪死事件」という、長らく歴史のベールに包まれてきた事件を記した、デヴィッド・グラン著の小説をスコセッシが映画化。
巨額の財産を目当てに、白人たちがオセージ族なるインディアンを殺害したという凄惨な事件。
その全貌が明らかになったのはつい最近のことであり、故に一部では「アメリカで最も闇の深い事件」と銘打たれている模様。
………お察しの通り、ディカプリオとデ・ニーロが主犯の白人役であり、事件の画策から逮捕までの経緯が描かれている。
特にディカプリオ演じるアーネスト・バークハートは絵に描いたような小心者として描かれており、徹頭徹尾何一つ成し遂げぬまま物語の幕が閉じることとなる。
かのディカプリオが、このような役を演じるというのは前代未聞の事例。しかしこういった役は、スコセッシの映画において非常に重要な役割を持つのもまた事実。
ちなみに原作小説では連邦捜査官のトム・ホワイトが主人公。ディカプリオは当初、こちらの役を演じる予定だったらしい。
決して痛快でも勇敢でもない、陰謀渦巻くドス黒い真実のみを映し出した西部劇。炸裂しまくるスコセッシ節にはくれぐれもご注意を。
【3位】
https://eiga.com/movie/99319/gallery/8/
『キリエのうた』
(”Kyrie”)
『スワロウテイル』『リリイ・シュシュのすべて』を手がけた、岩井俊二監督による最新作。
元BiSHのアイナ・ジ・エンドやSixTONESの松村北斗、広瀬すずや黒木華らが出演。
路上ライブで生計を稼ぐミュージシャンの少女・キリエを中心に、様々な登場人物が過去・現在において関わっていくのを描くロード・ムービーにして音楽映画。
3時間という長尺の中で語られるは、キリエことの人生そのもの。美しき思い出たちや、それに反するかのような暗い記憶たちが、彼女の「うた」によって紡がれていく。
一人の少女が背負うにはあまりにも壮絶な、それでも尚「歌い続ける」ことを決意したキリエの姿は、何者にも代え難いほどに勇ましく、力強い。
そんな物語、もといキリエの人生の全てを詰め込んだ、ラストの路上ライブのシーンは全力で観客の感情を揺さぶってくると言えよう。筆者はそのシーンで大号泣しました
色んなものを経験して、色んなものを失って。それでも今日という日を、前を向いて生きていく………
キリエ含めた、そんな人々にそっと寄り添うかのような、今年で最も優しい映画と言えるかもしれない。
【2位】
https://eiga.com/movie/98309/photo/
『ゴジラ-1.0』
(”GODZILLA MINUS ONE”)
日本を代表する特撮怪獣シリーズ『ゴジラ』。来年で生誕70周年を迎える大怪獣が、遂に令和の時代に現れた。
実写映画シリーズでは通算30作目となる今作。監督・脚本を『ALWAYS 三丁目の夕日』『アルキメデスの大戦』を手がけた山崎貴が務める。
キャストには神木隆之介、浜辺美波、山田裕貴、安藤サクラら豪華俳優陣が集った。
舞台は1954年公開『ゴジラ』よりも更に前、戦後直後の1947年、日本。
徐々に復興の兆しが見えてきているとはいえ、日本は戦争により何もかもを失い「無《ゼロ》」のまま。
そんな日本に、ゴジラが追い討ちをかけるように襲来。「無」はやがて「負《マイナス》」となる………という、歴代最高レベルの絶望感を醸し出す令和版『ゴジラ』。
最早「死」そのものの象徴と化した、過去最恐にして最強のゴジラもさることながら、そんな状況下においても懸命に生きようとする人々のドラマもまた魅力的。
国内では『シン・ゴジラ』を超える大ヒットを記録した上、海外興行収入が100億円を突破したという空前絶後の快進撃を遂げている。
まさに「日本の映画はここまでやれるんだぜ」ということを世界に証明してみせた、2023年屈指の超大作と言っても過言ではないだろう。
【1位】
https://eiga.com/movie/99416/gallery/29/
『グランツーリスモ』
(”Gran Turismo”)
栄えある(個人的)2023年映画・下半期1位に輝いたのは今作『グランツーリスモ』だ。
Play Stationの手がけるゲームの代表作の一つであり、数あるレーシングゲームの中でも金字塔的作品として語られる『グランツーリスモ』が、ハリウッドにて実写映画化。
監督を手がけるは『チャッピー』や『第9地区』を手がけたニール・ブロムガンプ。SF映画がメインの監督が、まさかの抜擢を果たした。
キャストにはデヴィッド・ハーバー、オーランド・ブルームらが集結。『ミッドサマー』にも出演した、新鋭アーチー・マデクウェが主演を飾ることとなった。
ゲーム『グランツーリスモ』のトッププレイヤーがレーサーとなった、ヤン・マーデンボローという実在の人物を元にした作品。
いちゲーマーがプロのレーサーへと成長していく、王道的なストーリーラインをなぞりながらもレーシングシーンはまさに圧巻の一言。
エンジンとブレーキが織りなす爆音を、身体で直に体感できる劇場(特にIMAX版)での迫力たるや………本当に心臓が飛び出てくるかと。
「王道的なストーリーライン」と聞くとやや飽和気味な印象を受けるが、だからこそ今作は今年No.1レベルに「アツい」。
夢なんて叶いやしないと吐き捨てられ、初心者と嘲られ、他のレーサーからは散々足蹴にされ………
それでも尚、唯一つの夢を叶える為に諦めないその姿、紡がれる物語は何よりも煌びやかであり勇ましい。
観る人全てにありったけの勇気を、そして音速が如し勢いの映像の暴力で殴りかかってくる『グランツーリスモ』。その圧倒的な速度に気圧される勿れ。
まとめ(あとがき)
早速ではあるが、11月初頭のインフルに続きまたもや体調を崩してしまったことをここに報告しておこう………そう、よりによって年の瀬に。
今は若干調子が戻りつつあるが………病み上がりの脳味噌で果たして理路整然と文字が書けるのか、という野暮な質問は置いておくとして。
さて「上半期・下半期のランキングときたら2023年総合ランキング的なものは書かないのか?」と思うかもしれないが、
結局は上半期・下半期の記事で書いたことをぶり返すだけ(要するにめんどい)なので今年は書かないことにする。
noteで書いてた頃は律儀に書いてましたけれども。あの頃のモチベはいったいどこへやら………
………と、サラッと投げ出すのも何だか寂しいので、とりあえずここに適当に箇条書きしておくことにする。適当極まりないが。
- 【10位】『ジョン・ウィック:コンセクエンス』
- 【9位】『SISU/シス 不死身の男』
- 【8位】『バビロン』
- 【7位】『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』
- 【6位】『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』
- 【5位】『シン・仮面ライダー』
- 【4位】『キリエのうた』
- 【3位】『ゴジラ-1.0』
- 【2位】『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』
- 【1位】『グランツーリスモ』
ざっとこんなもんだろうか。まぁ各作品の概要+感想はそれぞれの記事を見てちょってことで。
と、いう訳で今回はこの辺で。いつも記事をご覧になって下さっている方々、そうでない方も、良いお年を!!
それではまた、次の年にて。