
『スパイダーマン』の映画とは?
赤と青のスーツを身に纏い、超人的な身体能力とクモの能力を操り、街に蔓延る悪を打ち倒すヒーローにして「親愛なる隣人」………その名も「スパイダーマン」!!
マーベル・コミックの生みの親であるスタン・リーとスティーヴ・ディッコの手によって生み出されたキャラクターであり、スーパーヒーローでありながらもティーンエイジャーらしい悩みを抱えたキャラクターとして、数あるマーベル・コミックのヒーローの中でも特段高い人気を持つ。
本名はピーター・パーカー。科学を愛する少年、あるいは青年として描かれることが多く、どの作品でもMJという名のヒロインに想いを寄せている(作品によっては別の人に恋してる時も)。
そんな『スパイダーマン』、過去に何度か映画化されていることで知られている。『ブレイド』や『X-MEN』と同様、MCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)が始動する前からシリーズが制作されており、アメコミ映画ブームの火付け役となった。
シリーズ打ち切りや再始動など様々な過程を経て、これまでに制作された作品はのべ9作品にも及ぶ。だがこれらの作品が公開されるまで、権利問題を始めとする数多くの問題が発生していたのも有名な話。
事の発端は90年代頃。マーベルは経営難に陥っており、資金確保のために実写映画化の権利を20世紀フォックスやソニーに売却。このうちソニーは『スパイダーマン』の実写映画化の権利を獲得し、2002年にサム・ライミ監督、トビー・マグワイア主演で『スパイダーマン』を公開。歴史に残る大ヒットを記録した。
ここでマーベル側がソニーに課した条件とは「前作公開から5年9カ月以内に最新映画を公開すること」。これが守られなければソニーは『スパイダーマン』の映画化の権利を失ってしまうことになり、その契約を守るために始まったのが『ヴェノム』をはじめとするSSU(ソニー・スパイダーマン・ユニバース)である。
≪SSUについてはこちらの記事を参照されたし。≫
そこから約15年ほどソニーの主導のもとで『スパイダーマン』の実写映画が制作されていったのだが、MCU作品『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』にてアイアンマンらMCUのヒーローたちとスパイダーマンの共演が実現。その後、MCU版スパイダーマンの単独映画『~ホームカミング』が公開され、マーベルのファンたちは新たなるスパイダーマンの誕生に熱狂した。
このマーベルとソニーのクロスオーバー協定において交わされた契約とは、興行収入として得た利益の内100%をソニーが獲得、マーベルが興行収入の5%とグッズ化の権利を保持するといったものだった。
だが2019年公開の『~ファー・フロム・ホーム』において、新たな問題が発生する。マーベルを傘下に加えたディズニーが、ソニーに興行収入の利益を折半することを提案したところ、ソニーはこれを拒否。両者の関係は徐々に険悪になっていき、最終的にスパイダーマンのMCU離脱、契約の解消といった最悪の事態になりかねない状態となった。
ここで問題解決のために立ち上がったのが、MCU版スパイダーマンを演じるトム・ホランド。契約を一度見つめなおすことを両社に提案し、結果和解。どちらも製作費を出費し興行収入をバランスよく得るという契約に落ち着いた。
こうして両社の権利問題は無事解決し、2021年公開『~ノー・ウェイ・ホーム』に、2026年公開『~ブランド・ニュー・デイ』など、ヒット作を連発し続けている。
『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』 https://eiga.com/movie/96269/gallery/20/
今でいう「アメコミ映画」とは、複数の作品のキャラが一堂に会する「クロスオーバー」や、別次元の宇宙こと「マルチバース」といった壮大な設定が盛り込まれることが多くなり、結果作品自体の規模や設定・ストーリーの風呂敷が肥大化しがちである。
だが『スパイダーマン』の映画は、どの作品(一部除く)も一貫してスパイダーマンもといピーター・パーカーの成長や葛藤、及び等身大のヒーローとしての活躍が描かれており、純粋なヒーロー映画として十分に楽しめる作りになっている。
スパイダーマンとはマスクを被り、NYの市民を助けるために日々孤独に戦い続けるヒーロー。そしてピーターはスパイダーマンとしての自分を偽り、一般人としての生活を送らなければならない。
だがもし親しい人物たちに自分の正体がバレてしまったら、自らだけでなくその人たちにも危険が及んでしまう。どんなに辛いことがあっても、どんな痛みに苛まれようとも、ただただ一人で孤独に戦い続ける………それがスパイダーマンという名のヒーローの本質である。
故にこそ、スパイダーマンは世界中から愛される唯一無二のヒーローとなっている訳である。そんな「親愛なる隣人」ことスパイディの実写映画、計9作品をこれから紹介していこうと思う。
大いなる力、目覚める。『スパイダーマン』
https://eiga.com/movie/1178/gallery/3/
『スパイダーマン』
("Spider-Man")
あらすじ
ミッドタウン高校に通う科学好きの青年、ピーター・パーカーは、人一倍優しい性格を持ちつつも学校でいびられ続けており、気弱な性格の自分に鬱憤とした気持ちを抱いていた。
そんな彼の心の支えとは、叔母のメイと叔父のベン、親友のハリー、そして彼が密かに想いを寄せるMJ(メリー・ジェーン)だった。また彼の科学に対する見解は高校生ながら卓越しており、大企業「オズコープ社」の社長にしてハリーの父であるノーマンにも認められるほどだった。
そんなある日、ピーターは社会見学でコロンビア大学の研究室を訪れ、そこで遺伝子改良を施された蜘蛛に首筋を嚙まれてしまう。翌日目を覚ますと、ピーターの身体は劇的な変化を遂げていた。細身だった身体は筋骨隆々になり、また手には無数のごく短い針のようなものが生えそろっており、加えて手首からは蜘蛛の糸のようなものが出るようになっていた。
文字通りクモ人間のような身体になったピーターは、違法で行われている地下闘技場での試合に出場し、そこでお金を稼ぐことを思いつく。正体を隠すために自前のスーツを用意し、自身の何倍も大きい大男に勝利。だがピーターは運営にカモられ、手にした賞金はごく僅かだった。
腹を立てたピーターは闘技場を後にし、その際にやってきた強盗をあえて見逃してしまう。その後外へ出ると、大勢の人に囲まれながら1人の男が倒れているところを発見。その人とは、ピーターの叔父であるベンだった。誰かから銃弾を受けたようであり、その犯人とはまさしく先程ピーターが逃してしまった強盗だったのである。
自らの選択によりこうした最悪の結果を招いてしまったこと、そしてベンおじさんがピーターへ最期に告げた言葉である「大いなる力には大いなる責任が伴う」を胸に、ピーターは正義に身を捧げることを決意。スーツを一新し、クモの力を宿したスーパーヒーロー「スパイダーマン」として活躍し始めた。
一方同時期、ノーマンは軍から新薬開発の締め切りを急かされており、その影響で強いストレスに見舞われていた。ある日、軍の重鎮から「2週間以内に成果を出せ」と告げられ、焦ったノーマンは身体増強の薬を自身に投与。結果として屈強な肉体を手に入れることには成功したものの、その反動で凶暴な別人格が生まれてしまう。
ノーマンのもう一つの人格は「グリーン・ゴブリン」となり、緑の装甲と不気味なマスク、そして数々の危険な兵器を身に着けて人々を襲い始める。ゴブリンの凶行を阻止するべく、ピーターはスパイダーマンとして彼に戦いを挑むが………
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作品概要
後に「サム・ライミ版」と銘打たれる三部作の1作目。『死霊のはらわた』などのホラー映画の監督として有名なサム・ライミがメガホンを取り、『カラー・オブ・ハート』や『サイダーハウス・ルール』で当時注目を集めていたトビー・マグワイアが主演を務めた。
他にもノーマン役としてウィレム・デフォー、MJ役でキルスティン・ダンスト、ハリー役でジェームズ・フランコ、ピーターが働く新聞社「デイリー・ビューグル」の編集長ことJ・ジョナ・ジェイムソン役でJ・K・シモンズが出演している。
ゴアホラーを得意とするサム・ライミが娯楽映画の監督を務めたことは当時としても衝撃的で、内容としてはエンタメ性の高いアクション映画としながらも所々にジャンプスケアなどホラー風の演出が施されている。
https://eiga.com/movie/1178/gallery/
1998年の『ブレイド』、2000年の『Xメン』と並んでアメコミ映画もといマーベル映画ブームの火付け役となった映画であり、これら2作品を大きく超える大ヒットを記録したことで有名。
今からおよそ24年前の作品でありながらもCGのクオリティは一級品であり、特にスパイダーマンがNYの街をスイングするシーンは、これまでの映像技術的に実現不可能とさえ言われていた為大きな話題を呼んだ。
加えて当時ヒットした理由として、ピーター・パーカーという等身大のキャラクターが主人公を務めていたというのもある。確かにスパイダーマンとは強大な力を得たヒーローであるが、中身のピーターはまだまだ年齢的にも未熟な高校生。どこにでもいるようなごく普通の青年といった風貌が、逆に観客たちからの共感を得たのである。
そして、あの「9.11」の数カ月後にこの作品が公開されたこともまた歴史的ヒットの理由の一つに数えられる。あまりにも凄惨すぎる事件にアメリカ国民が悲しみに包まれていた中、NYの市民たちを守るために奮闘するスパイダーマンの姿は多くの人を勇気づけた。
後のMCUなどの基盤を築き上げた、大いなる伝説の幕開け。アメコミ映画がハリウッドを席巻する、今作はまさにその先駆けとなった。
運命の糸と、狂気の野望。『スパイダーマン2』
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『スパイダーマン2』
("Spider-Man 2")
あらすじ
高校を卒業し大学生となったピーターは、NYを守るヒーロー「スパイダーマン」として日々事件を解決している一方、多忙さにより大学は落第寸前、新しく始めたピザ屋のバイトはクビになってしまうなど、順風満帆とは言い難い日々を送っていた。
そんなピーターを見かねたメイおばさんはパーティを開き、そこでMJやハリーと再会する。MJは女優としてデビューを果たしていた一方、ハリーは父ノーマンの遺体を抱えるスパイダーマンの姿を偶然目撃しており、その日以来スパイダーマンへの憎悪に囚われていた。そんなハリーに対し、ピーターは複雑な心境を抱いていた。
数日後、ピーターはあることがキッカケで心優しき科学者であるオットー・オクタビアスと出会う。科学を何よりも愛する彼はピーターを歓迎し、ピーターもそんな彼を尊敬していた。
そんなオットーは現在、オズコープ社の命運をかけた「核融合プロジェクト」の開発に勤しんでいた。プロジェクトのデモンストレーションに際し、オットーは人工知能を搭載した四本のロボットアームを装着、大衆の前で実験に取り掛かる。
核融合の制御は順調であるかのように思われたが、やがて周囲の建物を飲み込む形で暴走し始める。ピーターは咄嗟にスパイダーマンのスーツを着用し暴走の激化を抑えるが、オットーの妻は事故で死亡、さらにオットーの装着していたロボットアームの制御チップが破壊されてしまう。
これにより、ロボットアームに搭載された人工知能が暴走。装着していたオットーも徐々に人格を蝕まれ、かつての温厚な性格は消え去り狂気の科学者「ドクター・オクトパス」へと変貌、核融合装置を再建すべくNYを襲うようになる。
一方ピーターは、恩師の変貌に加えMJの婚約、さらにハリーとの関係性の悪化により精神が不安定となり、スパイダーマンとしての力を失ってしまう。これ以上ヒーローを続けることができないと判断したピーターは、遂にスーツとマスクを脱ぎ捨て引退を決意するが………
https://eiga.com/movie/1179/gallery/3/
作品概要
サム・ライミ版『スパイダーマン』の第2作目。前作が公開されてから2年の間にCG・VFX技術が向上し、その年のアカデミー賞では視覚効果賞を受賞した。
サム・ライミが監督を続投し、トビー・マグワイア、キルスティン・ダンスト、ジェームズ・フランコらも引き続き続投した他、今作のヴィランであるドクター・オクトパス役としてアルフレッド・モリーナが出演した。
グリーン・ゴブリンとの戦いから2年後、NYの親愛なる隣人として活躍し続ける一方、ピーター・パーカーという一般人としての生活との折り合いに悪戦苦闘する姿が描かれている。
スパイダーマンとは孤独に戦い続けるヒーロー。X-MENのように複数人と組んで戦うこともないため、彼は強大なる敵だけでなく孤独とも戦わなければならない宿命を持つ。
そんなピーターに待ち受けていたのは、スパイダーマンとしての超人的な力を失うこと。最大の武器であるウェブも、人間離れした身体能力も失うことになり、遂にNYは偉大なるヒーローを失ってしまうのだった。
だがピーターには、スーツを纏わずともヒーローとしての精神が備わっていた。これを機に、ピーターは再びスパイダーマンとして立ち上がり始める。こうしたヒーローの再起を主軸としたストーリーは十八番とされつつも非常に親しまれており、今作が全スパイダーマン映画の中でも特段高い人気を誇っている所以でもある。
https://eiga.com/movie/1179/gallery/2/
加えて特筆すべきは、ヴィランであるドクター・オクトパス(以後「ドックオク」と呼称)との戦いである。映画終盤、ドックオクに捕まったMJを救出するべく、スパイダーマンは彼との戦いに臨む。
最初は高層ビルでの高低差を活かした戦いに始まり、続いて街中を疾走する電車上での戦いに移行。非常にスムーズかつスピーディなシークエンスに仕上がっており、スパイダーマン映画の名シーンの一つに数えられる。
だがこのシーンが真価を発揮するのはその後の展開にある。戦いの最中、ドックオクが電車のブレーキを意図的に破壊し、電車が制御不能に。このままでは電車は猛スピードで脱線し、多くの乗客が犠牲となってしまう。
絶体絶命の状況の中、スパイダーマンは迷いなくボロボロのマスクを脱ぎ捨て、乗客の救出に向かう。電車を止めるべく、彼は何重ものウェブを周囲の建物にくくりつけ、すんでのところで電車の静止に成功する。
力尽きたスパイダーマンは電車から落下しそうになるが、今度は乗客たちが彼を救出。NY市民の命を何度も救ってきたヒーローの素顔を見て、乗客たちは「まだ子供だ」「うちの息子と変わらない」と呟く。
やがてスパイダーマンは目を覚ますが、乗客たちは彼の正体を秘密にすることを彼に約束する。その後ドックオクが再び電車を襲撃するも、乗客たちは逃げ惑うことなくスパイダーマンを守るべくドックオクの前に立ちはだかるのだった。
MCUやDCUなどのヒーロー映画では、ヒーローたちが戦いの中でもたらした二次被害に対して一般人が糾弾するといった展開が多く見受けられる。もちろん現実的に考えれば至極当然な展開ではあるのだが、このような「ヒーローに守られる側だった人々が、ヒーローを守るべく立ち上がる」といったような展開は、他のヒーロー映画と比較しても中々ない。
孤独に生きるスパイダーマンにとって、このような市民たちの行動が彼にとって如何に救いになったかは想像に難くない。ドックオクとの戦いも併せて、シリーズ屈指の名シーンとして語り継がれているのである。
本記事でも紹介している『〜ノー・ウェイ・ホーム』でも似たような展開が繰り広げられるが、これとは真逆の最悪の展開に発展してしまっているため余計にそう感じられる………というものあるかもしれない。
復讐の果てに待つ、運命。『スパイダーマン3』
https://eiga.com/movie/1180/gallery/3/
『スパイダーマン3』
("Spider-Man 3")
あらすじ
ドクター・オクトパスの野望を阻止し、今日も日々街を駆け回るスパイダーマン、もといピーター・パーカー。そんなピーターも遂にMJとの交際が始まり、以前とは一変して順風満帆な生活を送っていた。
幸せそうな2人を見て、メイおばさんはピーターに指輪を手渡し結婚を提案。大事そうに指輪を持ち帰る最中、ピーターはかつてのノーマン・オズボーン/グリーン・ゴブリンと同様の装備を纏った何者かに襲撃される。
その正体とは、ピーターの親友であるハリー・オズボーンだった。父親ノーマンを殺した犯人はスパイダーマンであり、そのスパイダーマンの正体こそがピーターであると信じて疑わない彼は、ノーマンの亡霊に唆された形で復讐に駆られ、「ニュー・ゴブリン」として立ちはだかる。
街を縦横無尽に駆け巡る戦いの末、ピーターの仕掛けたトラップによりハリーは頭を強打し負傷。その結果、ノーマンを喪ってからの記憶を喪失してしまうのだった。記憶喪失になったことで元の親友同士の関係に戻れたとはいえ、親友が復讐鬼へ変貌したことに動揺を隠せないピーター。そんな彼のもとへ、さらなる衝撃的な情報が舞い込む。
その情報とは、かつてベンおじさんを殺した真犯人がフリント・マルコという名の男であり、現在刑務所から脱走し逃亡中ということだった。また当のマルコは謎の実験施設に迷い込み、実験に巻き込まれたことで身体の物質が砂そのものへ変化。自在に砂を操る危険な「サンドマン」へと変貌してしまう。
ベンおじさんを殺した犯人であるマルコに対し、日に日に殺意を膨らませていくピーター。そんな中、スパイダーマンのスーツに謎の黒い生命体「シンビオート」が寄生する。目が覚めると、彼は漆黒のスーツを身に纏い「ブラック・スパイダーマン」となっていた。
今までにない力を手にし、気分の高揚を隠せないピーター。だがピーターのスーツに寄生したシンビオートは着用者の精神を蝕んでいく性質を持ち、ピーターの温厚な性格は徐々に傍若無人な性格へと変貌していった。
怒りに身を任せてマルコへの復讐を果たしたピーターは、未だかつてない高揚感に包まれる。個人的な恨みを抱いていたエディ・ブロック・Jr.のカメラを破壊、さらに彼の書いた記事がデマであることを編集長の前でバラすことで彼の人生を崩壊させ、さらに記憶を取り戻したハリーのことを容赦無く殺害しようとする。
やがて遂にはMJに拳を振るってしまったことで、ピーターはようやく自分のしでかしたことを自覚するようになる。全ての原因は己の迷い、そして漆黒に包まれたスーツにあることを悟ったピーターは、シンビオートをスーツから引き剥がそうと試みるが………
https://eiga.com/movie/1180/gallery/
作品概要
サム・ライミ版『スパイダーマン』三部作の3作目にして最終作。当時としては映画史上最高額の制作費が投じられ、興行成績も成功を博した一方、ファンからは若干苦言を呈されているタイトルでもある。
監督のサム・ライミ、キャストのトビー・マグワイア、キルスティン・ダンスト、ジェームズ・フランコ、J・K・シモンズらは続投。新キャストとして、サンドマン役のトーマス・ヘイデン・チャーチとエディ・ブロック・Jr.役のトファー・グレイスが出演した。
宿敵グリーン・ゴブリン、悲劇の科学者ドクター・オクトパスに続いて、スパイダーマンに襲いかかるヴィランが今作では何と3人も登場する。
まずは全身を自在に砂へ変化させることのできるサンドマン。砂嵐を起こしたり、身体を砂化させることで攻撃を受け流したり、周囲の砂を大量に吸収してビルほどの大きさまで巨大化したりと、中々の強敵となっている。
次に「二代目グリーン・ゴブリン」ことニュー・ゴブリン。その正体はあらすじにもあるようにピーターの親友ことハリーであり、父の仇を討つべくピーターに襲いかかる。スケボーのようなグライダーとそこに内蔵された数々の爆弾、近接戦用の刀を兼ね備える。
そして第三のヴィランとは、原作でも非常に高い人気を持つ「ヴェノム」である。ピーターのスーツに寄生していた生命体「シンビオート」が、スパイダーマンに恨みを持つエディ・ブロックJr.に寄生したことで生まれた。
ウェブや身体能力などのスパイダーマン特有の能力はそのままに、残虐な凶暴性を兼ね備えたヴィランであり、劇中ではサンドマンと協力関係を結びスパイダーマンと戦った。
なお原作におけるヴェノムとは筋骨隆々の姿かつシンビオートとしての自我が存在し、細身かつ言葉を発さない今作のヴェノムは原作から大きくかけ離れているとされファンから批判が寄せられた。これを受けて、2018年公開のスピンオフ映画『ヴェノム』ではより原作に近づいた姿となっている。
https://eiga.com/movie/1180/gallery/2/
と、このように3人のヴィランが一堂に会するというこれまでにない要素を持つ今作だが、どのヴィランにも共通して言える要素が「復讐」である。ハリーは父を奪われた恨みを、エディは人生をめちゃくちゃにされた恨みを、それぞれスパイダーマンに対して抱いている。
一方ピーターも、ベンおじさんを殺したマルコに対してこれまでにない憤りと恨みを抱いている。ただの「ヒーロー」と「ヴィラン」の単純な関係性に留まらない、複雑な事情をそれぞれ抱いているからこそ、この四つ巴が成立しているのである。
こうしたシリーズ最大級のスケール感から、三部作の最期を締めくくる最終作に相応しい作品と言っても過言ではないだろう。
………しかしながらこのサム・ライミ版『スパイダーマン』、実は今作の続編として幻の『スパイダーマン4』が企画されていた。ヴィランは後に『〜ホームカミング』で登場するヴァルチャー、他にも原作における人気キャラクターであるブラック・キャットが登場予定だったらしい。
元々サム・ライミ監督も、『スパイダーマン3』の失敗を受けて『4』を最高の形で作り上げようと意欲的だった。ではなぜ計画が頓挫してしまったのか?それはサム・ライミと制作側であるソニーとの対立が原因である。
そもそも『スパイダーマン3』制作段階で、ライミとソニーの対立は始まっていたという。その最たる例がファンから賛否両論の「ヴェノム」であり、ライミは「物語が詰め込みすぎになってしまう為ヴィランは3人もいらない」と主張する一方で、ソニーは原作屈指の人気キャラであるヴェノムを登場させることを強く要求。
劇中でのエディ/ヴェノムの登場も、流れとしては綺麗ではあるものの「ピーターの親友であるハリー」と「ベンおじさんの仇であるマルコ」と比較すると若干ポッと出な印象も見受けられる。
その後『スパイダーマン4』の制作が始まったものの、ヴィランがヴァルチャーであることに対しソニーは「そんな禿頭のヴィランはグッズにしても売れない、もっと別の魅力的なヴィランを出すべき」と主張。また制作のスケジューリングに関しても非常にタイトであり、完璧に脚本を仕上げたいライミとさらに対立を深める結果となった。
結果としてライミは完全に愛想が尽き、『スパイダーマン4』の監督を降板。企画も霧散し、サム・ライミ版『スパイダーマン』は真の幕引きを迎えたのだった。
と、このようにかなり酷い目に遭わされたサム・ライミだったが、最近ではMCU映画『ドクター・ストレンジ:マルチバース・オブ・マッドネス』の監督を務めたり、『〜ノー・ウェイ・ホーム』におけるトビー・マグワイアやウィレム・デフォーらの再演など、マーベル映画の伝説を築き上げたレジェンドとして再び頭角を現し始めている。
インタビューにて『スパイダーマン4』の可能性について言及された際も「今はトム・ホランドのシリーズに集中すべきだが、もし機会があれば是非やってみたい」と前向きな姿勢を見せている。もしかすると、約15年越しの続編が近い将来に実現する………かもしれない。
新生・アメイジングなスパイダー。『アメイジング・スパイダーマン』
https://eiga.com/movie/53201/photo/
『アメイジング・スパイダーマン』
("The Amazing Spider-Man")
あらすじ
幼い頃に両親が亡くなり、メイおばさんとベンおじさんのもとで暮らす高校生、ピーター・パーカー。どこか冴えないが、困っている人は放っておけない優しい性格の持ち主な彼は、同級生のグウェン・ステイシーに密かに想いを寄せつつ平凡な日常を送っていた。
ある日彼は、亡き父リチャードの残したバッグから謎の資料を見つけ出す。父は何者だったのか?なぜ両親は亡くなったのか?真相を突き止める為に、ピーターはリチャードの元同僚であるコナーズ博士を尋ねるべく、オズコープ社の実習に参加する。
実習の最中に目を盗み、社内の実験室に忍び込むピーターだったが、そこで遺伝子改良されたクモに噛まれてしまう。やがてオズコープ社で働いていたグウェンにバレてしまい追い出されてしまうが、帰りの電車にて尋常でない身体能力や反射神経など、自身に奇妙な力が発現したことが判明する。
後日、ピーターはコナーズ博士の自宅を訪れ、自分がリチャードの息子であることを告白。たちまち2人は親睦を深め始め、2人の卓越した頭脳により新薬を開発。それは爬虫類の再生能力をもとに作られた医療用の薬だった。
だが後日、ピーターはベンと口論になり家を飛び出してしまう。しばらく街を彷徨っていると、そこには銃で撃たれ血を流すベンがいた。ベンはピーターに「大いなる力には大いなる責任が伴う」と告げ、ピーターの腕の中で息絶えてしまう。
ベンを襲った強盗の正体、そして彼の死に際の言葉を胸に、ピーターはオズコープ社にて蜘蛛の糸に似た糸を発射する装置「ウェブシューター」を開発。赤と青を基調としたスーツを身に纏い、街を守るヒーロー「スパイダーマン」となる。
同時期、コナーズ博士は上司から新薬の報告を急かされ、焦ったコナーズは薬を自身に投与。失った右腕が再生するなど絶大な効果を発揮するが、徐々にトカゲの鱗のようなものが浮き出始めるなど異変が起き始める。
やがてコナーズ博士は人格までもが蝕まれていき、巨大なトカゲ男「リザード」へと変貌。NYを恐怖に陥れる存在に、ピーターはスパイダーマンとして立ち向かうが………
https://eiga.com/movie/53201/gallery/27/
作品概要
サム・ライミによる『スパイダーマン』シリーズが終結し、キャストとストーリーを一新したリブート作品。
監督はサム・ライミからマーク・ウェブに、ピーター・パーカー/スパイダーマン役はトビー・マグワイアからアンドリュー・ガーフィールドにそれぞれ交代。ヒロインもMJからグウェン・ステイシーに変わり、グウェン役をエマ・ストーンが演じた。
サム・ライミ版でもグウェン・ステイシーは『3』にて登場しており、当時は若き頃のブライス・ダラス・ハワードが演じていた。
「クモに噛まれてスパイダーマンとしての力を得る」「ベンおじさんの死をきっかけにヒーローとして目覚める」などの展開はサム・ライミ版と同じなものの、ピーターの両親の謎を追う物語であったりヴィランがグリーン・ゴブリンからリザードになっていたりと、多少の変更点が存在する。
スパイダーマンのスーツも新たに一新され、スーツの目にあたる部分が白から黒(サングラスを用いている)になっているなどサム・ライミ版のとは一味違ったデザインとなっている。またスパイダーマンの主力武器であるウェブも、体内から直接出るのではなくピーターお手製の装置「ウェブシューター」から発射されるようになっており、これは原作コミックのスパイダーマンにおいても同様である。
https://eiga.com/movie/53201/gallery/17/
そんな「マーク・ウェブ版」こと『アメスパ』、アクション要素がサム・ライミ版よりも更にスタイリッシュになったことで知られている。
ウェブを巧みに操り、素早く動き続けながら戦うスパイダーマン。どちらかというと泥臭い肉弾戦が多めだったサム・ライミ版とは異なり、ハイスピードで展開されるアクションシーンが最大の見どころとなっている。
加えて『アメイジング〜』のスパイダーマンはやたらとお喋りである。ヴィランと戦う時も軽快なトークで軽口を叩きながら戦い、本物のクモのように相手を絡め取ってしまう様は原作のスパイダーマンそのもの。
では中身のピーター・パーカーはその真逆でめちゃくちゃ根暗なのかというとそうでもなく、アンドリュー・ガーフィールドという超絶ハンサムな俳優が演じているため、ピーターも心なしか若干陽キャ寄りなキャラクター設定となっている。常時背負っているスケボーがまさしくその象徴と言えるだろう。同級生のフラッシュからは相変わらずイジメられているが………
そしてそんなハンサムすぎるピーターが想いを寄せているのは、これまた爆美女なエマ・ストーン扮するグウェン・ステイシー。後にアカデミー主演女優賞を2個も獲得する言わずと知れた大女優であり、若き頃のフレッシュな彼女の美貌もまた今作の魅力といえよう。
そういう意味では、絶妙に芋臭くて根暗だが優しさに満ち溢れたピーターを演じたトビーの方が「ピーター・パーカー」という役柄のみで考えれば適任と言えるかもしれない。一方でアンドリューはスパイダーマンとしてのカッコよさが際立っているため、良い差別化と言えるだろう。
シリーズのリブートによって実現した、新たなる伝説の幕開け。サム・ライミ版と同様、『アメスパ』シリーズもファンから絶大な人気を誇っており、アメコミ映画の歴史に新たなる名を残したと言っても過言ではないだろう。
クモ&電撃、新たなる幕開け。『アメイジング・スパイダーマン2』
https://eiga.com/movie/78257/photo/
『アメイジング・スパイダーマン2』
("The Amazing Spider-Man 2")
あらすじ
リザードとの激闘から2年後、ピーターは新たなるスーツを身に纏い、NYの「親愛なる隣人」スパイダーマンとして日々活躍していた。
恋人として結ばれたグウェンとも良好な関係で、高校も無事卒業。順風満帆な日々を送っているように見えたが、自らの腕の中で息絶えたグウェンの父親・ジョージとの約束が未だ頭から離れずにいた。
スパイダーマンがピーターであることを知ったジョージが彼と交わした約束とは「グウェンを危険に巻き込まないために別れる」こと。ピーターはその約束を未だ果たせていないことに悩みを抱えており、街中で幾度もジョージの幻影を目撃していた。
意を決したピーターは、遂にグウェンと別れることに。気持ちを入れ替えスパイダーマンとしてのヒーロー活動に専念しようとするものの、街のパトロールついでにグウェンの行き先を追ってしまうなど未だ吹っ切れずにいた。
その頃、NYに新たな脅威が生まれようとしていた。気弱だが、NYにおける送電システムを開発した凄腕の電気技師・マックスは、スパイダーマンに助けられ「君が必要だ」と言われたことで彼の熱烈なファンになっていた。
そんな彼の誕生日の夜、マックスは上司から残業を命じられ機械の整備を行っていたところ、電気ウナギの入った水槽に転落してしまう。中にいた大量の電気ウナギに噛まれたことで、マックスは文字通り電気人間となってしまった。
膨大な力を制御できずにいたマックスはタイムズスクエアに向かうが、彼の能力は徐々に暴走していき警察が出動するまでの大騒ぎにまで発展する。スパイダーマンも急いで現場にかけつけマックスを説得しようとするが、早とちりした警官が誤ってマックスを銃撃してしまう。
周囲からぞんざいな扱いをされ続け、電気人間になったことでようやく注目を浴びるようになったものの、スパイダーマンによってそれを奪われたと勘違いしたマックスは、遂に怒りを爆発させ覚醒。タイムズスクエアを一瞬で破壊するほどの力を得る。
最終的にスパイダーマンが機転を効かせたおかげでマックスは刑務所に収監されるが、彼は自らを「エレクトロ」と名乗り、スパイダーマンへの復讐の機会を伺い続けていた………
https://eiga.com/movie/78257/gallery/
作品概要
『アメイジング・スパイダーマン』の続編。興行不振の影響でシリーズが打ち切りとなってしまったため、今作が『アメイジング〜』シリーズの最終作となる。
監督のマーク・ウェブ、主演のアンドリュー・ガーフィールドとエマ・ストーンは引き続き続投し、今作のヴィランであるエレクトロ役として新たにジェイミー・フォックスが出演した。
スーツのデザインが再びリニューアルされ、目の部分が白くなるなどより原作に近づいたデザインとなっている。一方ヴィランのエレクトロは原作とは大きく異なる姿で描かれており、青い電気を操るキャラクターとして登場する。
前作の時点でかなりの完成度を誇っていたアクションシーンがさらに進化し、スピード感・迫力が共にパワーアップ。アクションに重きを置いたスパイダーマン映画としての地位を確立した。
特に、シリーズ恒例のNYスイングとスピーディな戦闘シーンの両方が詰め込まれた冒頭10分間は圧巻であり、ファンからも「伝説の10分間」として語り継がれている。
またストーリーに関しても、スパイダーマンとしての在り方やピーター・パーカーという人間についての掘り下げがされており、ファンからも高く評価されている。重きを置いた部分で言えばやはり映像の方ではあるものの、今作にて描かれるピーターとグウェンのほろ苦い関係性は筆舌しがたい良さがある。
https://eiga.com/movie/78257/gallery/10/
サム・ライミ版『スパイダーマン2』でも描かれたように、スパイダーマンとはどこまでも孤独なヒーロー。加えて強い重責がある故に、ピーター・パーカーという「人間」としての生活も時に挫けそうになってしまう。
だがヒーローとは何度でも立ち上がる存在。今作においても様々な苦難が彼を襲うが、それでも立ち上がる姿はどんなヒーローよりも勇ましい。そういう意味では、今作はピーターという人間性とスパイダーマンというヒーロー性の両方にフォーカスを当てた作品と言えるかもしれない。
個人的に、この『アメスパ2』は私の人生に非常〜〜〜〜〜に大きな影響を与えた作品でもあります。詳しくは「あとがき」にて………
………と、このようにファンからも評価が高く、スパイダーマン映画としての魅力も満載なのにも関わらず、『アメスパ』シリーズは興行不振により打ち切りとなってしまった。全世界興行収入も赤字となってしまい、これは歴代のシリーズと比べると非常に少額となる。
この時『アメスパ2』の続編である『3』と『4』、それからスパイダーマンのライバルことヴェノムのスピンオフ映画、及びスパイダーマンのヴィランたちで結成されたチーム「シニスター・シックス」を描いた作品が制作予定だった。
だが2015年2月9日、ソニー・ピクチャーズとマーベル・スタジオが提携を結び、MCUにスパイダーマンが登場することが決定。これによりMCU作品としてのスパイダーマン映画を制作することが決定し、それに伴って上記の企画は軒並み白紙となってしまった。
https://eiga.com/movie/88636/gallery/
立ち消えとなった企画たちのうち、ヴェノムのスピンオフ映画計画のみは2018年に実現したものの、他は完全に消滅。アンドリューもスパイダーマン役を降板し、新たにトム・ホランドがキャスティングされた。
………だが2021年、『〜ノー・ウェイ・ホーム』にて歴代のヴィランおよびスパイダーマン2人がカムバックしたことで話題となり、さらに過去の主要キャラたちが出演したことでそれぞれの続編が新たに制作される可能性が示唆された。
10年越しの『アメイジング・スパイダーマン3』の実現について、アンドリューは「実現の可能性はない」と否定しつつも「突飛なコンセプトとファンが喜ぶストーリーがあれば是非とも出演したい」と語っている。サム・ライミが『スパイダーマン4』に意欲的な姿勢を見せていたように、アンドリューも前向きに検討しているようだ。
実現される可能性は著しく低いが、決してゼロではない。再び「アメイジングな彼」が、スクリーンにて飛び回る姿を拝める日を待つとしよう。

















