映画のアレコレ

傑作を生み出し続けた偉人たち。ハリウッドの「名監督」を15人紹介!!

はじめに

映画を作るにあたって欠かせないものとは何か。文字通り作品の顔となる俳優か?企画そのものを一から組み立てるプロデューサーか?それとも映像を繋ぎ合わせ一つの作品へ完成させる編集者か?

無論、上記の三者も映画制作において決して欠けてはならない要員だが、演出や作風など映画の核の部分を司る者こそが「監督」という役職である。

プロデューサーが制作にあたってのスケジューリングやプロモーションを総括するのに対し、監督は映画そのものの統括を行う。配役・ロケハン・演技指導・カメラワークの指示・編集作業などを司る存在であり、「映画は監督の所有物」と言われることもある。

今日までに数え切れないほどの映画が作られ、それらのどの作品にも必ず監督が参加しており、長い歴史が形作られていった。特に「映画の都」ことハリウッドでは、世界を席巻した数多くの「巨匠」たちが存在する。

ある人は多数の名作を生み出し、ある人は衝撃的な表現技法を生み出し、ある人は「映画の神様」とまで称された。珠玉の演技を魅せる俳優もまた映画に欠かせない魅力と言えるが、そんな俳優の演技を演出と絡めて仕上げていくのが監督なのである。

本記事では、何十年も続くハリウッドの歴史において名を残した「巨匠たち」を15人紹介する。どれもが映画の歴史を変えた「偉人たち」であり、彼らの生み出した数々の技法が後の監督たちに受け継がれていった。

それでは、長い長い巨匠たちの歩みを共に振り返ってみるとしよう。

アルフレッド・ヒッチコック (Alfred Hitchcock)

https://eiga.com/person/13205/gallery/0857613/

「サスペンスの帝王」「スリラーの神様」と呼ばれる映画監督。その名の通り数多くのサスペンス・スリラー映画を手がけ、映画史上最も後世に影響を与えた映画監督の1人に数えられている。1899年8月13日生まれ、1980年4月29日没。

1925年に『快楽の園』で映画監督デビュー。無声映画からトーキー映画への変遷を経て様々な作品を制作し、どれもが興行的・批評的にも成功した。

50年代以降にはワーナー・ブラザース、パラマウント、ユニバーサルら大手映画制作会社と契約し、そこで彼の代表作となる『サイコ』『鳥』『北北西に進路を取れ』『裏窓』『めまい』を監督。監督とプロデューサーを兼任して制作し、これもまた興行的にも成功を遂げた。

https://nikdirga.com/2021/06/15/vertigo-so-is-jimmy-stewart-the-bad-guy-here/

そんなヒッチコックの最大の功績として語り継がれているのが、当時としては革新的な映像表現をいくつも生み出したことである。

代表的なのが『めまい』にて使用された「めまいショット」(ドリーズームとも呼ぶ)である。台車を使ってカメラを被写体に近づけながら(または遠ざけながら)カメラのレンズをズームアウト/ズームインすることで、被写体はそのままに背景だけが遠のいていく、または近づいてくるという異質なシーンを撮影することが可能となる。

他にもサスペンスの金字塔として名高い『サイコ』では、直接的なシーンを使用せず断片的なシーンを短い間に何度も繋ぎ合わせることで観客の脳内で「何が起こったか」を補完させ、恐怖心を煽るなどトリッキーな手法が用いられた。

こうした今までにない斬新な表現を独自に生み出したことで、彼はサスペンス・スリラーの神様として語り継がれることになったのである。


《代表作》

『めまい』("Vertigo")

先述した「めまいショット」をはじめ、高所恐怖症の焦燥感を描いたスリラー映画。ヒッチコックの卓越した映像技術はここから誕生した。


『サイコ』("Psycho")

会社の資金を横領してしまった女性が行方不明になり、彼女の痕跡を追う恋人と探偵が事件の解決に立ち向かうスリラー・ホラー映画。ヒロインの女性がシャワー室で何者かに刺殺されるシーンは、スリラー映画屈指の名シーンとされている。


『鳥』("The Birds")

我々の日常に何気なく溶け込む「鳥」という生物たちが凶暴化し、人間を襲い始めるパニック・スリラー映画。有象無象の鳥たちが、徐々に人間の生活を脅かし始める様は多くの人々に恐怖を与えた。

スタンリー・キューブリック (Stanley Kubrick)

https://faroutmagazine.co.uk/stanley-kubrick-film-woody-allen-called-sensational/

スタンリー・キューブリック (Stanley Kubrick)

ハリウッド随一の「完璧主義者」として知られる映画監督。1928年7月26日生まれ、1999年3月7日没。

父親からカメラを貰ったことで幼少期からカメラに没頭し、写真雑誌『ルック』の見習いカメラマンとして在籍した後に、短編ドキュメンタリー映画を制作するにあたって退社。以後映画監督としてのキャリアを歩み始める。

初の長編映画『恐怖と欲望』でデビューし、『現金に体を張れ』『突撃』で徐々に名を上げていった。1960年には降板した監督の代役として『スパルタカス』を監督し、これが批評家たちの間で高い評価を得た。

だがこの時キューブリックはハリウッドでの体制に嫌気がさしており、やがてイギリスに移住。1962年にはイギリスにて初めて制作した映画である『ロリータ』を公開し、大ヒットを記録した。

その後キューブリックにおける「SF三部作」と銘打たれる『博士の異常な愛情』『2001年宇宙の旅』『時計じかけのオレンジ』を制作。やがてキューブリックは優れた作家性を持つ監督として広く知られるようになり、上記3作もキューブリックの代表作として今も高い人気を誇っている。

1975年に『バリー・リンドン』を公開した後、スティーヴン・キング原作の『シャイニング』を監督。ホラー映画の金字塔として語り継がれる作品だが、一方で原作と全く異なる内容にキューブリックが改変したためキングとは対立を深める結果となった。

その後アメリカ軍とベトナム戦争の狂気を描いた『フルメタル・ジャケット』や、トム・クルーズとコニー・ニールセン主演『アイズ・ワイド・シャット』を監督するも、公開を目前にして心臓発作で死亡。この時彼が温めていたとされる映画の原案はスティーヴン・スピルバーグのもとで制作され、2001年に『A.I.』というタイトルで公開された。

https://eiga.com/person/42837/gallery/0603437/

先述したように、キューブリックは極度の完璧主義者であると知られている。キャリア初期の頃から映画製作の全般を自身の管轄内にないと気が済まなく、また撮影も自分の納得するカットが撮れるまで何度もリテイクを繰り返した。

またキューブリックは左右対称シンメトリーの構図を好むことでも知られている。こうした構図は一点透視図法ワンポイント・パースペクティブとも言われ、観客の視点を画面の中央に集中させることで人工的な美しさと不気味さを演出している。元カメラマンであるキューブリックだからこそのこだわりと言えるだろう。

それだけでなく、キューブリックは「キューブリック・スタア」と呼ばれる特徴的なカメラワークを生み出した。登場人物が俯いて見えるように俯瞰で撮影し、演者の視線を上目遣いにしこちらに向かせることで、その登場人物の狂気性を演出した。

他にもクラシック音楽を流すことで予想外の相乗効果を生み出したり、最先端技術をそのまま撮影に導入するなど、斬れ味抜群のセンスで数々の名作を生み出すに至ったのである。


《代表作》

『2001年宇宙の旅』("2001: A Space Odyssey")

アーサー・C・クラークの小説を原作とした、SF映画の金字塔と呼ばれる作品。まるで未来を予見しているかのような小道具・美術、当時としては破格な「宇宙」の表現、そして難解なストーリー構成は古今東西の映画監督たちに衝撃を与え、今も尚考察が飛び交うなど根強い人気を誇っている。


『時計じかけのオレンジ』("A Clockwork Orange")

近未来の世界を舞台に、暴力とセックスをこよなく愛する少年を描く衝撃作。先述したシンメトリー構図に加えて奇抜ながらも芸術的な装飾や狂気に満ち溢れた演出が高い評価を得ている一方、過激な暴力描写により映画館での上映が規制されるなどキューブリック随一の鬼作として周知されている。


『シャイニング』("The Shining")

呪いのホテルに足を踏み入れた家族が、ホテルの「狂気」に徐々に蝕まれていく姿を描いたホラー映画。先述したように大幅な原作改変がなされており、元となった小説は超能力を持つ少年が主体となった作品である一方、今作はジャック・ニコルソン扮する一家の父親が狂気に陥っていく過程を描いている。どのホラー映画にもない斬新な演出により、多くの観客を恐怖に陥れた。

フランシス・フォード・コッポラ (Francis Ford Coppola)

https://www.latimes.com/espanol/entretenimiento/articulo/2024-05-21/en-cannes-francis-ford-coppola-de-la-politica-de-eeuu

70年代を代表する映画監督。1939年4月7日生まれ。映画制作のためなら巨額の私財を投げ打つことも厭わない、生粋の表現者として知られる。

低予算映画の監督としてキャリアを築き始め、60年代後半〜70年代初頭では数多くの映画で脚本を執筆。そのうち『パットン大戦車軍団』ではアカデミー脚本賞を受賞した。

1969年には自身が手がける映画制作会社「アメリカン・ゾエトロープ」を設立し、『スター・ウォーズ』のジョージ・ルーカスを監督に迎え『THX 1138』を制作。しかしながらこれがワーナーブラザーズ・スタジオに酷評され、契約破棄及び編集作業を勝手に行われた上に興行成績は盛大に爆死。自身と会社が一気に窮地に追い込まれてしまう。

だが1972年、自身の代表作となる『ゴッドファーザー』を公開。これが凄まじいヒットを記録し、全世界興行収入で1位を獲得。アカデミー賞においても作品賞主演男優賞を受賞し、自身の会社とキャリア、及び主演のマーロン・ブランドの大々的な復活を遂げた。

この時、『ゴッドファーザー』の成功により経済的余裕が生まれたコッポラは、『THX 1138』の失敗を巻き返す形でルーカスが監督した『アメリカン・グラフィティ』の製作を担当。しかしながらこの時ルーカスは『スター・ウォーズ』の企画を温めている最中であり、コッポラの介入を危惧してベトナム戦争を題材とした映画の企画をコッポラに譲渡した。

1974年には『ゴッドファーザー』の続編である『ゴッドファーザー PARTⅡ』、及び『カンバーセーション…盗聴…』を監督。どちらも興行的に成功し、前者は続編モノの映画としては史上初のアカデミー作品賞を受賞、後者はカンヌ映画祭のパルム・ドールを受賞した。

そして1979年、ルーカスから譲渡された企画案を基に『地獄の黙示録』を公開。ベトナム戦争の狂気を描いた作品であるが制作は未だかつてないほどに難航(嵐による撮影機材の破損、キャストとの衝突、撮影スタッフ間でのドラッグの蔓延、しまいには相次ぐトラブルによりコッポラがストレスで倒れるなど)。

最終的にコッポラが私財を注ぎ込み作品は完成、2度目のパルム・ドール受賞及び興行的にも成功し巨額の制作費を回収することに成功した。今では『ゴッドファーザー』シリーズに次ぐコッポラの代表作として知られている。

https://eiga.com/news/20201211/19/

その後、1983年には青春映画ブームの火付け役となった『アウトサイダー』を、1990年にはシリーズ最終章『ゴッドファーザー PARTⅢ』を監督。後者には娘であるソフィア・コッポラが出演している。

1992年、ゲイリー・オールドマンを主演に迎えた『ドラキュラ』以降は自身が監督を務める作品は減っていったが、ソフィア・コッポラの監督作品にプロデューサーとして参加するなど意欲的に映画制作に取り組み続けた。

そして2024年、自身のワイナリーの一部を売却するなどして巨額の制作費を調達し、アダム・ドライバーシャイア・ラブーフローレンス・フィッシュバーンダスティン・ホフマンといった豪華俳優陣が集結したSF超大作『メガロポリス』を公開。

しかしながら1億ドル超えという巨額の資金を投げ打ったのにも関わらず、興行収入はわずか1000万ドルのみ。ゴールデンラズベリー賞にも受賞されるなど近年稀に見る大爆死を遂げた。

https://eiga.com/movie/44529/gallery/

そんな壮絶な映画監督人生を送ってきたコッポラだが、どの作品にも共通しているのが重厚な人間ドラマである。特に代表作こと『ゴッドファーザー』はマフィアの物語であるのと同時に家族の物語でもあり、その様はまるでオペラのようであると称されている。

また先述したように、コッポラは作品制作が難航した際に(あるいはそうでない時も)私財を何の惜しみもなく製作費に充てる。時には自分の持ち家土地をも担保にして資金を補填しており、さながらギャンブラーのような作品制作を行う。

ちなみにこれもまた有名な話だが、コッポラの家族はいわゆる「映画家系」とされており、例えば先述したように父のカーマイン・コッポラは劇中音楽を主に手がける作曲家であり、娘のソフィアは今や父に並ぶ名監督として名を馳せている。

その他にも、息子ロマン・コッポラウェス・アンダーソン作品原案及び製作総指揮を担当、妹は『ロッキー』シリーズヒロイン・エイドリアン役で有名なタリア・シャイア、そして甥はかの有名なニコラス・ケイジジェイソン・シュワルツマンであったりと、ハリウッドスターが集結した絵に描いたような映画人家系なのである。

映画監督として類い稀なる手腕を持ち、芸術表現のためならば身を削ることも厭わない。もしかすると、彼こそが世界で最も純粋な映画監督と言える………のかもしれない。


《代表作》

『ゴッドファーザー』("The Godfather")

クライム映画の常識を覆した、コッポラ最大の代表作。一見するとフィルム・ノワールを基調とした犯罪映画のように見えるが、その実血の繋がりやそれに伴うマフィアの権力争いを題材とした「家族」の映画であり、そんなテーマからなる重厚な人間ドラマは多くの観客を魅了した。


『ゴッドファーザー PARTⅡ』("The Godfather Part Ⅱ")

1作目と同等、あるいはそれ以上の傑作と称される『ゴッドファーザー』の続編。父ヴィトー・コルレオーネがボスに成り上がった過去と、息子マイケル・コルレオーネがボスとなった現在を交互に描くことで、コルレオーネ家の光と闇を描いている。


『地獄の黙示録』("Apocalypse Now")

ベトナム戦争の狂気に満ちた戦場と兵士たちを描いた戦争映画の傑作。泥沼化した戦場によって狂っていく様をロードムービーのように描写しており、特に『ワルキューレの騎行』をバックに大量のヘリが行進する戦闘シーンはまさしく圧巻の一言。

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